2016年2月26日金曜日

マツダ・ロードスターの「失速」が示したこと・・・

  「ほーら!やっぱり売れなかったね〜・・・」とあえて憎まれ口を吐いてみましょう。「NA(初代ロードスター)への原点回帰」これが発売の遥か1年前からマツダがリークしてきたコンセプトでした。いつもの通りで日本のカーメディアは「何も考えずに」賛同・絶賛の嵐でした(マツダの広告費は上昇中)。もうこの段階でちょっといや、かなり嘘くさい。そんなにNAロードスターがいいですか? 確かに「花の1989年組」を代表する名車ですけども・・・、それはあくまでトヨタのAE86と同じように、バブルより上の世代による「懐古趣味」でありだいぶ下駄を履いた評価に過ぎません(そう感じます)。

  最初に言っておくと、2012年に発売された「86/BRZ」が予想以上のヒットを飛ばしてからまだ3年・・・そしてホンダS660と発売が重なるなど、NDロードスターの販売が伸び悩むであろうことは十分に予測されたことでした。そもそもマツダとしてもブランドの存亡を賭けた勝負の1台というわけではなく、マツダ内では異例といえる「ロングテール」でボチボチ売れるビジネスモデルでしょうから、とりたてて痛手ということはないはずです。アクセラやデミオがコケるのとはぜんぜん意味が違います。

  しかし別の意味でマツダにショックを与えたことは確かのようです。トヨタやホンダといった「ジャイアント」を相手にして、「身動きのしやすい事業規模」であることがマツダの強みであり、「スカイアクティブ」と命名された改革をスピーディに遂行して、日本勢をリードしていたのがマツダ車だったはずです。当然に「マツダこそが次世代の自動車メーカーの手本」だという自負もあったでしょう。

  またマツダが従来から掲げる「広島モデル」の素晴らしい点は、地方都市から雇用とトレンドを生むという「地方創生」を標榜するアベノミクスと、非常に親和性が高いことです。当然に一般のマスコミにも受けがいいですからNHKからテレ東まで!読売から朝日に至るまで!諸手を上げて賞賛します。「日本の為にマツダを買ってあげよう!」という「イケメン国士」を上手く取り込んできました。

  「年商2兆円のベンチャー企業」と自らを位置づけて、さらなる躍進への決意が幹部からも伝わっていたマツダにとって、ふと沸き起こった「躓き」がNDロードスターの初期受注の低迷だったようです。ベンチャーなのに・・・トヨタやホンダにマーケティングで完全に遅れをとった!!!しかも得意中の得意なスポーツカーの分野で!!!

  しかしまだまだ傷は浅いでしょうし、マツダには今後のスペシャリティカー戦略(ロータリを含む)において抜かりないマーケティングで、再び市場をビックリさせるようなクルマを完成させてほしいものです。もしMSアクセラみたいな猛烈に加速するハッチバックを出しとけばとりあえずOK!なんて考えているならちょっとヤバいかもしれませんが・・・。

  「ロードスター」シリーズのマツダ社内での位置づけってどんなものなんでしょうか。マツダの年表を紐解くと、1989年デビューですから、現在の主力であるCX5やCX3よりは歴史がありますけども、1960年代に登場しているカペラ(アテンザの前身)、ファミリア(アクセラの前身)、キャロル(デミオの前身)あるいは、コスモスポーツ以降のロータリースポーツカーの系統に比べれば、かなり歴史は浅い後発のシリーズだと言えます。

  今さら言うまでもないですが、初代ロードスターはデビュー直後から世界各地で大絶賛され、マツダの予想を大きく越えるセールスを記録しました。マツダとしては「5チャンネル」体制を構築するにあたり、従来からあるRX7を「アンフィニ」(プレミアムスポーツブランド)に、もっと廉価な欧州向けモデルを展開する「ユーノス」の旗揚げに合わせて100万円台で楽しめるモデルとしてロードスターを作ったわけですが、世紀の大失敗と言われる「5チャンネル」化が無ければ生まれなかったクルマかもしれません。

  欧州向けに作ったロードスターがまさかの米国で大ヒット・・・。これが米国に足掛かりを作ろうともがいていたドイツブランドの眼に留まったようで、BMW「Z4」、メルセデス「SLK」、ポルシェ「ボクスター」など続々とフォロワーが湧いてきます。もっともBMW、メルセデス、ポルシェのファンはそれぞれ「Z4」「SLK」「ボクスター」をブランドの恥(ドイツ車失格!)として軽蔑しているようですが・・・。それでもイギリスのロータスにとっては、ロードスターの存在があったからこそ、2016年現在までブランドが存続した!と言っていいくらいに大きな影響を与えました(1995年エリーゼ発売)。

  マツダにとってツライのは、マツダの込めた想いとは全く違う解釈がメディアやユーザーによってされ、ロードスターの「虚像」が一人歩きするくらいに有名になったことでしょうか。多くの評論家は口々に「マツダはこういうクルマを作って偉いね!」といいつつも、「輸入ブランドに比べれば安っぽいな・・・」という本音も隠しません。

  1989年にマツダ、日産、トヨタ、ホンダ、三菱などが成し遂げてしまった偉大な仕事・・・それは自動車の頂点は日本車だ!ということを世界が認めた事実です。しかしこれを密かに抹殺したい・・・という意識がカーメディアにはプンプンしています。日本で売られている輸入車なんて、スカイラインGT-R、ロードスター、セルシオ、シビック、ランエボ、ハリアー・・・のどれかの影響下にあるモデルがほとんどです(BMWなんて、スカG、ロードスター、セルシオ、ハリアーの集まりに過ぎない・・・)。

  「ロードスター = マツダの代表」というイメージは、個人的には理解し難いのですけど、RX8を廃止してしまった以上はそう受け止められても仕方ないことかもしれません。しかしこのクルマの出発点は100万円台で誰でも気軽に買えるスポーツカーであり、4代目になった現行モデルは乗り出しで300万円に達しますが、基本的にはそのスタンスは崩してないようです。しかしプロのライターの記事を読んでいると、どうやらマツダのイメージをこの「廉価なスポーツカー」へと矮小化させる意図(悪意)を感じることが非常に多いです。「広島」を心の奥底ではバカにしている・・・だけなのかもしれませんが。

  某評論家(K沢M宏)がロードスターの苦戦についての自説を、面白がって自分のブログに書いていました。まあ内容はいつも通りにゴミでしたけども・・・。先ほども日本市場では非常に悪いタイミングだったと書きましたが、そもそも100万円台の手軽に買えるモデルが25年以上に渡ってヒットし続けるなんてことはまずあり得ないことです(カローラだって不振に陥りました)。まあジムニー程度に売れ続けたら・・・それで十分に素晴らしいことだと思います。

  ロードスターの売れ行きは妥当かな・・・。評論家にはいちいち呆れます。今回はマツダにとっては「有益」な失敗となってくれたらいいですね。トヨタが手薄な市場で「ホンダVSマツダ」が激突を繰り返していますが、SUVでもスポーツカーでも「ホンダ優勢」、期待のデミオはフィットのシェアを切り崩すまではいかずに息切れ気味(価格がな〜)、CX3もヴェゼルに歯が立ちません(ディーゼルのみは苦しいけど)。マツダが優勢なのはアテンザだけ・・・。そしてホンダがいよいよシビックの「日本帰還」をリークしはじめました(アクセラはピンチか!?)。

  日本でもアメリカでもマツダの前に立ちはだかるホンダ。「NSX」に続いて、新たに「S2000後継モデル」の発売が噂されています。マツダにもぜひ再び全世界のユーザーの「魂」を「動」かすような、そして「ポルシェ944」「フェラーリ348」と真っ向から立ち向かったような本気モードのスポーツカーを期待したいです。1989年当時のマツダはポルシェやフェラーリに匹敵するトップレベルのスポーツカーを作るメーカーだと認知されていたからこそ、初代NAロードスターは爆発的なヒットを遂げました。ロードスターだけをラインナップしたところで魅力はないと思うのですよ・・・。


リンク
最新投稿まとめブログ

  

  


2016年2月19日金曜日

ヴェゼル・RS 「近頃はやりの『全方向』型?」

  「NEW ヴェゼル COMING SOON  走りを磨いたRS、まもなく誕生。」

  2013年のデビュー直後から空前絶後の大ヒット!!! しかもハリアー、エクストレイル、CX5、ハスラーなど力作がずらりと顔を揃えてボルテージ最高潮だった国内SUV市場を楽々制覇したわけですから素晴らしいです。いよいよホンダの「顔」的存在に登り詰めたヴェゼルに今度は「本気グレード」が登場するようです。

  発売から丸々2年が経過し、デビュー直後に買ったユーザーがそろそろ車検前の乗り換えを考える頃ですね・・・とまあこのタイミングよく有りがちな新グレード追加、もしくは限定モデル発売ならばどのメーカーでもやることですけど、これほどのセンセーションを巻き起こしたあとということで、新興車種であるヴェゼルは「ブランド確立」に向けて真価が問われますね。この先どれだけの人を巻き込んでいけるのか!?(別にヴェゼルユーザーはミーハーだ!なんて言ってないですよ!) ホンダのとっては「S660」や「typeR」よりも圧倒的に重要な「勝負の時」が訪れているはずです。

  ヴェゼルがこれからの1年(2016年)で、国内市場でどう推移するか・・・といっても3年前はほぼゼロだったですし、発売直後に比べれば中古車も多く出回るようになるので、ひたすらに右肩下がりになるのは避けられないはずですが・・・。そんな中でヴェゼルがせっかく奪ったシェアを、今後は相当に喰い散らかすのではないか?と思われる新型モデルがホンダの「仇敵」のトヨタから発売されました。もちろん「あの」リッター40km走ってしまうクルマです。先代から30万円ほど!決して小さくない値上げを堂々と行って、本体250万円〜に設定するなど、ヴェゼルHVに完全に照準を合わせてきました。

  思い返せば2013年の東京モーターショーのホンダブーズは・・・「S660のプロトモデル」の前には圧倒的な「人の壁」。一方で「NSX」は割と見やすかったのを覚えています。その2台と同じタイミングだったとはいえ、ヴェゼル・プロトは全く存在感がなく、本当にまったく印象にないです。・・・しかしそのクルマがあれよあれよという間に、日本COTYを獲ったCX-5を軽く追い越して、RJCを獲ったハスラー(100万円台)よりも販売台数で上回るとは誰も予想しなかったと思います。同時期に発売されたトヨタ・ハリアーも稀に見る力作と言われましたが、HVモデルが輸入車とガチで競合する300万円台に設定されたのがやや仇となったようです。

  フィット(130万円〜)をベースにしたヴェゼル(HV)が250万円〜で、RAV4(230万円〜)をベースにしたハリアー(HV)が370万円〜。ヴェゼルとハリアーの内装を比べれば、価格が表すように決して少なくない差(ハリアーが上)が存在しましたが、HVは全てAWDとしたトヨタの設定にややミスがあったのかもしれません。多くの日本のユーザーにとってAWDなんてどうでもいい機能だと思います(30~50万円高は納得できない!)。どうせ「なんちゃってSUV(モノコック構造)」でしょ!本格クロカンを気取るつもりはない!ってのが本音で、そこをしっかり理解していた(?)ホンダはHVをFWDにして、価格を抑える方向に持って行った!・・・ホンダの読み勝ち!

  先代までのハリアーはミドルセダンのカムリベースの高品質が好評でしたが、現行はRAV4のボディを300mmほど伸ばして使って全長4720mm(平均よりデカい!)として使っています。「大きいクルマ」「威勢がいいクルマ」を好む層へのアピールなんでしょうけども、価格設定からして完全にそっち系の「アルファード/ヴェルファイア」に準じたものになっています。しかしなぜかそっち系の人々が買わない!乗っているのは年配が多い!?すっかりハリアーの悪口になってしまいましたが・・・何だかんだで、ホンダに足元を掬われるポイントはあったと思います。

  まあいつの時代のホンダが成功すると、トヨタが相当に本気になるようです。「ハリアーのリベンジ」というわけではないでしょうが、当初は2014年中には出ると言われていた新型プリウスの情報が、発売直前の2015年12月になるまで、限られた情報(「40km/L超え」)以外は全く出てこなかったですね。おそらくトヨタはヴェゼルの大成功を見てプリウスの販売戦略を練り直したのではないかと・・・、ハッチバックとSUVで別のクラスながらも、ヴェゼルからユーザーを奪えるモデルに仕上げるために、新型プリウス「やり直し」をしたのではないかと思われます(トヨタはヴェゼルユーザーはミーハーだと見てる!?)。

  新型プリウスは確かにヴェゼルとは攻めるアプローチがいくらか違うのですが、「総合力」で満足させるという意味で、「高い」と言われつつも売れたヴェゼルを上回る水準まで商品力を磨いてきました。プラットフォームから変更なので「磨く」ではなくて「再構築」なんでしょうけど、見事に300~400万円で十分に結果を出せるパッケージになっていると思います。

  ヴェゼルに初めて乗ったときの印象は、適度にタイトなコクピット(運転席)が非常に居心地が良くて、ずっと座っていてもいいな!と思わせる質感が素晴らしかったです。コンパクトカーの運転席ってあまりしっくりこないことが多いですけど、そこの部分がよく集中して作り込まれています。それに対して新型プリウスのここの部分で大きなレベルアップを遂げました。「喧噪の街がウインドーにサイレント映画のように映る」・・・そういったレベルに到達したような静かな車内は満足感高いです。わざわざレクサスISとか買わなくていい!

  ヴェゼルHVはスポーツモードにすると、1.5Lのエンジンが賑やかになるなど、まだまだクルマとしての完成度には追求の余地がありました。やっぱり1.5Lでは使い方が限られてしまうのは仕方ないです。BMWやアウディでもこのクラスの排気量だと、高速巡航では相当に苦しいですから、割り切ってこれらのモデルを割安で互換するという意味でヴェゼルが売れたのかな?という気がします。ただしBMWやゴルフの設計を使うA3ですから、フットワークに関する評価(安心感・フィール・段差など)では、SUVのヴェゼルではちょっと差をつけられていたのも事実です。ホンダにそんな声がどれだけ寄せられたかわかりませんが、今回の「RS」というグレードは足回りを中心に改良して、さらに「互換機」としての性能を高めたモデルなんだと思います。

  なんとなく「ドイツ車」に乗っていたい・・・クルマにあまり興味がない人ほど、漠然とそんなことを思うようです。ブランド品を身につけたいという感覚と同じです。「コクピットに座って気分が良い」「デザインを大切にしている」「長時間気持ちよく走れる」といったドイツ車を彷彿させる要素を真剣に取り入れて、納得できる「互換機」を作れば日本市場での成長も可能!これを見事に示した好例が、ヴェゼル、レヴォーグ、アテンザ、スカイラインといった近年のヒット車ですね・・・。

  確かに口に出して「ドイツ車に乗りたい!」と言うのは、かなりカッコ悪いですけど、ユーザーの潜在意識(サブリミナル)に働きかけるようなクルマ作りが、これからの中型車市場で日本車が生き残る術だと思います。・・・「ヴェゼルRS」・・・ホンダもなかなかやるな〜! 

  くどいですけど・・・「BMW・X1」はコスパを考えれば、完全に「見送り」のクルマです(値引きスゴいみたいですけど)。けれども300万円以下で手軽に買えるならば「ちょうどいい」感じです。そこにハマったのが「ヴェゼル」。
「BMW・5シリーズ」は乗り出しで600~700万円くらい、まともな金銭感覚では手が出ません。そもそもカンパニーカー(エクゼクティブに支給)ですから「法人向け」の割高な価格設定です(ぼったくり!とは言いませんけど)。それが400万円以下で乗れるならば「ちょうどいい」けどなぁ・・・そこで「アテンザ」ですね。
「BMW・4シリーズ」も乗り出しで500~600万円します!これが350万円くらいならば買ってもいいかな・・・「86/BRZ」?

こんな「ハイエナ市場」ではとても輸入車ブランドは生きていけない(5年以内に全滅?)でしょうから、余裕のある人は輸入車買ってあげましょう!


リンク
最新投稿まとめブログ
↓完全に風向き変わったようで、輸入車ブランドに風当たりが強い特集です。
こんなことやってると第2第3のフォードが出てくるのが心配です。