2015年5月27日水曜日

S660 と ロードスター に潜む日本車の闇

  S660とロードスターのレビューを読んでやや違和感が・・・。ホンダやマツダに対しての配慮なんですかね。あまり強いことが言えないカーメディアなんてもはやジャーナリズムではないし、それどころかカーメディアから仕事を頂くライターみんなで示し合わせて絶賛に回っている節すら感じられます(とりあえず福野礼一郎氏は叛旗を翻したが・・・)。とりあえずこの2台に関しては、ちょっとでも購入を検討する人の数は、911やFタイプと比べて桁違いに多いであろうことは予想できます。よって発行部数を多くしたいカーメディアは出来るだけ大切にこの「コンテンツ」を扱ってシーンを温めたい腹の内がなんだか透けて見えます。もちろんブログ書いている立場としても、この2台に関してはできるだけ独自の視点で大げさなまでに褒め称えて、読者にも気分良く共感される記事にしたいなと思うわけですが・・・。

  しかしどうも「違う」気がしてしまうのは、私が少々へそ曲がりだからでしょうか? 「納得できないスポーツカーにお金を払うなんてバカバカしい!」という思いがどうも最初から頭を離れません。もちろんS660コンセプトが発表された東京MSでの注目度の高さも目の当たりにしていますし、歴代のマツダ・ロードスターが世界に日本車の実力を知らしめてきた、偉大なスポーツカーの金字塔だということを重々承知した上です。そしてこの2台のクルマに十分に納得されて、真っ先に予約を入れた人々のお気持ちもよくわかります。

  何が気に入らないのか?というと、この2台の新型スポーツカーはこのご時世に「専用設計した!」ということで納得してしまって、それ以外の部分はややメーカー都合による帳尻合わせだと感じられるところで、どうも気分が冷めてしまうのです。ホンダもマツダも乗用車部門では、常に世界の頂点を視野に入れた「経済性」「パッケージング」「エンジン」などなど、会社の根底には「絶対的なまでの自社技術への信頼」があることを確信したクルマ作りをしています。そんな作り手の想いを汲んでいるので、スポーツカーに限らずホンダやマツダのユーザーはやたらと熱いです。そのフィットやデミオに注がれている情熱と比べたときに、スポーツカーでありスペシャルティカーであるはずの「S660」と「NDロードスター」はこんなものなのか?という疑念が頭から離れないのです。

  あまりの旨味の少なさに日本市場からの撤退すらチラつくホンダとマツダ。そんな2社がわざわざスポーツカーを新造して日本市場にも投入したのだからこれは素直に喜ぶべきだ!といった腫れ物に触るような評論をしばしば見かけますが、それはもはやクルマ評論ではなく、「社交辞令」的なオトナの対応に過ぎないと思います。クルマに関して徹底してオトナな対応ができる人は、スポーツカーよりも断然にプリウスやリーフの方が似合うんじゃないですかね、いっそのこと「新幹線&タクシー」という日本的エクゼクティブな移動手段をノビノビと使った方がいいと思います。それでもクルマ所有に拘った結果、わざわざ珍しいモデルをメーカーが作ってくれたのだから!なんて良い人過ぎるクルマ選びの果てに、7人乗りMPVはBMW製にスポーツカーにはダイハツ製に乗っていたりしてそうです(バイエルン発動機&大阪発動機イェーイ!)。

  S660やロードスターに限った話ではないですけど、近頃はなんだか出てくる新型車を見て嬉しさよりも、なんだかストレスが溜まることの方が多いです(多くないですか?)。いちいち挙げてられないですけど、スバルWRX・S4とレヴォーグ(なぜCVTだけ?)、ジープ・コンパス(このブランドにFFは不要)、トヨタ・オーリス120T(ターボ&CVTというだけで笑える)、ホンダ・オディッセイ(この全高ならもう車名を変えた方が)などなど・・・。クルマ好きに好き勝手な先入観であれこれ文句を言われると自動車メーカーも辛いでしょうけど、それがどういう事情であれ、やっぱり納得できなければこのメーカーはやる気あんの?という疑念が出てきてしまいます。挙げた4車ともにそれなりの値段がするクルマばかりですし。

  S660は正直なところもっと強気な価格設定をしてくると思いました。ミッドシップというレイアウトが日本車で復活するというだけで話題性は十分ですし、200万円が250万円になろうとも売れるだけのポテンシャルは秘めていると思います。一時期話題になりましたが、ケータハムがスズキからエンジンを調達し、軽自動車規格における日本の自主規制を超える80psに仕立てたこともあり、S660にも軽自動車エンジンの枠を超えた出力が期待されました。おそらく64psが200万円に対して、80~90psで250万円〜のグレードが設置されたならば、後者の方にたくさん注文が集まると思うのです。わずか20psに過ぎないパワーアップですが、出力3割増しは決して少ない数字ではないですし、何より日本中に溢れている軽ターボ64psとは一線を画したエンジンを載せることで、スペシャリティカーとしての商品力は桁違いに上がります。まともな発想なら絶対にやると思ったのですが・・・。それをやらないところにホンダ内部ではこのクルマへの評価が決して高くないことを表している気がします。

  ロードスターに関しても最大の懸案はエンジンです。もちろんまだ試乗してません(笑)。ちょっと前までMSアクセラというモデルで、FF最速を狙える超絶スペック(264ps)ながらも1ps=1万円というナイスな価格設定をしていたマツダが、あれよあれよと1.5Lエンジンが乗ったスペシャルティカーを乗り出しが300万円〜ですか・・・。さぞかし磨きぬかれた1.5L直4なんだろうと思いきや、何の躊躇いもなくロングストロークのスカイアクティブGを転用しております。そしてそれの帳尻合わせのように、全長を詰めて車重を低減させて無理矢理にスポーティに仕上げています。それでも車重1000kgのFRスポーツは素晴らしいって? いまやマツダの盟友となったフィアット傘下のアルファロメオからは1100kgでNDロードスターの2倍近くの240psを誇る「4C」が発売されていて、このクルマには伝統の名機1750cc直4ターボのショートストロークエンジンが拘って採用されています。

  以前のマツダだったら、相手がBMWであってもポルシェであっても持てる技術の全てを注ぎ込んで対抗モデルを作ったんじゃないですか? それがいとも簡単にアルファロメオに「ライトウエイトスポーツ」の究極型を宣言されても平気な顔して見て見ぬ振りをしている腑抜けスポーツメーカーになってしまったようです。かつてのマツダだったら「世界最良」を目指して手段を選ばずにライバルを狙って突き進んだはずです。倒産の危機に瀕しているのに、まだまだ本気で「2ドアのロータリースポーツ」を新開発しようとするくらいの「イカれた」メーカーだったわけですから。当時のような情熱が今も社内に燻っているのなら、このロードスターのシャシーに新型ロータリーを実用化したり、旧型MZRを加工するなどして、アルファロメオを叩き潰すような超絶モデルを作ったはずです。それがいつのまにか、「スカイアクティブ」のエンジン製造コストばかりを誇るメーカーへと変貌してしまいました。スポーツエンジンが無くなったマツダなんて・・・。

  今回この2台にゴーサインを出したホンダとマツダの幹部の腹の内はよくわかりません。しかし決定権を持っている役員クラスのオッサンが考えてそうなことを想像すると・・・「これを買うヤツらにとってエンジンは重要ではない」「どうせクラッチ一つ満足に踏めないカッコ付け野郎と勘違いババアだけだ」「バカ相手の商売をしないとスポーツカーは成立しない」くらいのエゲツナイまでの「ユーザー不信」が読み取れてしまうのは、ちょっとやり過ぎでしょうか?

  こんなことをクルマ好きがブログで好き勝手に書いていると、「売れないクルマにカネかけてもしかたないんだよ!」みたいな、想像力が欠如した腐れコンサルタントが言ってそうなことをドヤ顔でコメントしてくる人がいます。本田宗一郎のような常人ばなれした情熱家が一代で築いた自動車資本を、効率的にカネに変えるのがコンサルタントの役割だとは思いますが、彼らの仕事から再びクリエイティブなイノベーションが生まれることなんてないです。畑違いのコンサルが乗り込んでメチャクチャにされ衰退したのが三菱で、敏腕コンサルのような顔をしているけど一流のエンジニアであるピエヒに率いられ成長を続けるのがVW。これが現在の自動車業界で揺るぎない事実ではないかと思うのです。

  先日のトヨタとマツダの提携強化の発表をした席で並んだ豊田章男トヨタ社長と小飼雅道マツダ社長のどっちがクルマ好きに見えましたか? 両者の背負っているものがトヨタとマツダであるという事実を頭に入れても章男社長の方がオーラがあったんじゃないですか?マツダは本当に大丈夫か?なんてことに気を揉んでしまいました。


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2015年5月13日水曜日

トヨタ・マツダ連合で マジェスタ・ディーゼル と アテンザ・次世代スカイPHV が登場?

  GWを挟んでやたらとクルマ関連のニュースが一般メディアを駆け巡っていました。「EV限定の1000円高速制度に応募が集まりません!」なんてニュースはクルマに特に興味がない人々にとってはホントにどうでもいい話題だと思います。まあこのニュースをきっかけにEVの「給電」は実際にどれくらい費用がかかるのかが、少しでも広まったことは良かったです。どっかのライターが悪のりして、EVは安くない!4200円の毎月の充電施設利用料を払い、さらに充電時間に応じて課金が行われ、月額で10000円を超える!などと書いていましたが、大手石油元売りがGS設備を使って手掛ける民間サービスでも月額3000円で無制限!というこれまでの定額サービスが相次いで終了し、今後はかなりシビアな「実費」が請求されることになりそうです。

  これでは「ピュアEV」(エンジン無しのEVで充電しか補給方法無し)を慌てて買った人々にとっては、いろいろと不満が噴出しそうな状況なのかなという気がします。自宅に給電設備を整えていて、近隣を周回するためのクルマならば特に困ることはないのかもしれないですが、都市部のマンション住民にとっては「ふざけんな!」って感じかも。そんな中でかなり「先見の明」があったと思われるのが、PHVつまり「プリウスPHV」や「アウトランダーPHEV」を買った人々なのかもしれません。もちろん「1000円高速」を謳歌するには、月額4200円の充電施設利用会員にならなければいけないみたいですが、それを負担した上でも東京から関西圏までETC割引でも往復で15000円ほどかかるところを、たったの2000円でOKなのは十分に魅力です。リーフなどのピュアEVでは航続距離の問題があり、高速で1時間ほど走ったら30分の充電が必要というトンデモな利用環境なので、「1000円高速」なんて全く意味がありません。

  今やアメリカでは「ノーマルのHV」ではPHV/EV/FCVと区別されて「環境対応車」とは見做してもらえずに、様々な「グリーンカー特権」が享受できないみたいです。トヨタとホンダの奮闘により早くからHV先進国として名を馳せたわけですが、インフラを必要とするPHVの将来性についてはやや懐疑的なメーカーが多かったようで、未だに300万円台の良心的な価格で発売しているメーカーがトヨタと三菱だけなのは少々意外な気がします。さらにトヨタと三菱が開発して商品化へと移した直接的なインセンティブも、自動車メーカーに対してやたらと高圧的で知られるアメリカの連邦政府の「無茶振り」がきっかけだったりするようです。今後継続してアメリカで自動車を一定規模以上販売するメーカーには、そのラインナップに「グリーンカー」を組み入れることを義務づけることが決まっています。

  トヨタは「プリウスPHV」日産は「リーフ」ホンダは「アコードPHV」「フィットEV」 を既に発売済みです。三菱はアウトランダーPHVではなく「iミーブ」を展開しています。残るスズキは北米からの撤退を決めていて、スバルとマツダはアメリカでの商売が生命線ですから開発・製品化を急いでいるようです。スバルは自社開発の3モーター式PHVのコンセプトモデルを既に発表済みです。一方のマツダは水素ロータリーもしくはロータリーをレンジエクステンダーとしたEVをデミオに設定する方針だったようですが、ここに来てトヨタからPHVもしくはFCV技術を移植する方向で交渉に入ったと伝えられました。もちろん好調とはいってもトヨタを下請けにできるほどキャッシュに余裕があるわけでもなく、トヨタに対してクリーンディーゼルを比較的リーズナブルな価格で引き渡すことの見返りとなるようです。

  現行アクセラにトヨタのHVが積まれる契約が締結されたときにも、マツダからトヨタへクリーンディーゼルの供給が一旦決まりかけたそうですが、なんとトヨタはBMWから契約を白紙としてBMWと供給契約を締結しました。この段階では、欧州市場にしっかりとした足場を築くために、VWゴルフを徹底的にマークしたオーリスに複数のバージョンのディーゼルを積むための判断だったようです。3シリーズだけで7種類のディーゼルを取り揃えるBMWのバリエーションの多さに対し、エンジンの製造工程を見直して集約化を図ったばかりのマツダはディーゼルのバリエーションを減らして1.5Lと2.2Lの2系統しか用意しておらず、2.2Lではオーリスに載せるにはオーバースペックと判断したトヨタの苦渋の決断だったと思います。

  しかしその後になって日本国内でマツダのディーゼルが快進撃を続け、さらにレクサスを脅かすように日本向けにメルセデス、ジャガー、マセラティがディーゼルを追加・新導入に踏み切ることが相次いで発表されると、アベノミクスによる高級車市場の活性化をも視野に入れて、トヨタもこれらを迎え撃つ「臨戦態勢」を採る必要が生じたようです。今やトヨタの高級車には全てHVのグレードが設定されていますが、国内販売は思ったほどに良好ではなく、さらに高い商品力を獲得できるユニットとして、静音・制振において非常に優れていて、高級車用ディーゼルとして屈指の実力を持つマツダのディーゼルを採用しよう!という目論見があるように思います。

  アクアやプリウスの販売は好調を維持していて、このクラスにディーゼルを入れるメリットは薄く、レクサスGS/ISとトヨタブランドのマジェスタ/クラウン/マークXへのディーゼル投入こそが、トヨタがマツダに接近する理由のはずです。トヨタとしては、デミオ/CX3用の1.5Lディーゼルではなくて、アテンザ/CX5/アクセラ用の2.2Lディーゼルが欲しい?のだろうと思いますが、一方でマツダのメリットは米国販売継続のためのFCV/PHVに限定されてしまうのか、あるいはトヨタから得るものを応用して、想像を超えるような素晴らしい経済性とドライブフィールを兼ね備えたクルマを開発してトヨタとホンダを驚愕させるのでしょうか。カムリHVに使われている横置きエンジンと組み合わせるHVシステムに、強烈なまでの燃焼効率を実現して実用化の目処も付いているという「次世代スカイアクティブG」を組み合わせることで、マツダの技術者が言うような「究極の高級車用HVユニット」が生まれる可能性も・・・。


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