2016年9月6日火曜日

レクサスに対してカーメディアが冷ややかな理由

  2005年にレクサスが日本での展開をはじめてから、まだ10年そこそこしか経っていません。導入当初は当たり前ではありますが、新参高級ブランドに対するある種の懐疑の眼に晒されて様子見が続き、その後間もなくリーマンショックが起こり、さらに追い打ちをかけるように東日本大震災がありました。それから未曾有の円高が続き・・・とこれだけ想定外のことが連続して起こってはさすがのトヨタも赤字転落やむなしですね。日本生産にこだわっていたトヨタ、マツダ、スバルの状況は悲惨で、既にグローバル生産率が高かったホンダ、スズキ、日産はなんとか逃げきったようですが・・・。

  そんな「三重苦」がトヨタ、レクサス、マツダ、スバルの強靱な成長に貢献したようです。そんな中でレクサスはトヨタ全体の利益を押し上げる「切り込み隊長」ですから、トヨタも本体ブランドを差し置いて次々と手を打ってきました。GS/IS/RC向けの新型シャシーはその限界性能においてトヨタブランドと一線を画したスペックが世界中のメディアで認知され(日本は微妙?)、SUVラインナップの拡充により北米市場で大ブレイクを果たしました。2005年の段階では本国での実績はほとんど無しの状況から見れば日本市場でも大きく躍進しました。レクサスの日本登場後に、廉価モデルを一気に充実させたメルセデスとBMWもトヨタから顧客を奪うなど巧みな戦略をとってはいますけども。

  日本でのブランド開始当初は、セルシオ、ソアラ、アリスト、アルテッツァをトヨタから移管した形だったために、「単なる値上げ」ととらえられた部分がありました。しかしいずれのモデルも、元々は1989年のレクサス開始以来に北米レクサス向けに新たに開発されたモデルであり、メルセデスやBMWの同クラス車を想定して作られていたわけですから、「安売り」が終了しただけとも言えます。それとは別に日本でのプレミアムブランドの価格はちょっとやり過ぎな感もありますが・・・。

  しばしば日本でのラウンチ時のイメージの悪さをネタにして、レクサスに冷淡な姿勢をみせる「時間の止まった」ライターを今も多数見かけます。10年前と同じこと言ってるのはK沢M宏氏だけでなく、初老のライターはだいたいそんなもんですね。ジャガーを語るときは必ず「Xタイプ」を挙げたり・・・(ライターとして本質的にダサい)。「レクサスwジャガーwマツダw」なジジイはさっさとくたばれ!!!そんなクソが溢れていてウンザリなんですけども、どうやら良識的なライターはレクサスの別の部分にネガティブさを感じているようです。

  その一つがやはり「開発姿勢が受け身過ぎる」でしょうか。トヨタグループの最大の強みは「営業力」で、どっかで聞いた話によると三菱アウトランダーPHEVやマツダアクセラをトヨタ系列ディーラーで売れば月に2万台売れるとか販売部門は豪語するくらい自信を持っているらしいです。それゆえによっぽどの失敗作を作らない限りは後でどうにでもなる。これまでもホンダの革新的なクルマを「後出しジャンケン」で追い落としてきた自信があるんでしょうね。そのためか他のプレミアムブランドに先駆けて新しいモデルを作ろうという姿勢が薄いようです。

  BMWやメルセデスの経営母体よりも一回り以上の圧倒的な規模を持つトヨタグループですから、もっともっとプレミアムブランドの可能性を広げるモデルに着手できるだろうに。だけど作られるクルマは「石橋を叩いて渡る」ような定番のモデルばかりです。同じように巨大なVWグループをバックに持つアウディだと、ランボルギーニを傘下に収めてV10をミッドシップに収めるモデルをプロパー(LFAのように限定ではない)で売っていたり、VWの小型車をベースにハイパワーユニットとアウディの代名詞クワトロを組み合わせ、MTで走る楽しみを演出した「アウディS1」など日本でも個性的なクルマを販売しています。R8やS1が新機軸か?っていわれると確かに微妙ですし、一部のマニア向けではありますが・・・。

  レクサスにもGS-FやRC-Fといった「独自路線」のモデルがありますが、カーメディアではその「独自性」を積極的に評価する空気がなかなか無いです。ちょっと前のドイツ車のパクリだと断罪しています。V8自然吸気を全身全霊で愉しむスポーティなグランドツアラーは欧州車では確実に絶滅の方向に向かっていて、新しいアウディRS5がターボ化されればドイツ車では全滅。フェラーリ・カリフォルニアもすでにターボ化され、マセラティ・グランツーリズモやアストンマーティンV8ヴァンテージなど型式の古いモデルが残るだけになっています。そんな昔日の欧州V8NAグランツアラーに想いを馳せるレクサスの「Fシリーズ」なんですけども、意地悪い日本のカーメディアがその美点を持ち上げることはしないですね・・・。レクサスFやホンダNSXが欧州の自動車文化をリスペクトし、欧州陣営も日本のランエボやスカGをリスペクトするようなモデル(ゴルフR、M4)作っていて、とても健全な関係なのになー。

  アウディの「R8」や「S1」あるいはレクサスの「F」はあくまでスペシャルモデルであって、プレミアムブランドであるならばベースになるモデルで「キラリ」と光る飛び道具があって欲しいものです。トヨタブランドではランクルを除いてV8は廃止されているので、FとLS用のV8はレクサスのエンジンと位置づけられますが、それ以外のモデルはトヨタと共通のユニットという辺りが、カーメディアやクルマ好きの温度を下げているのは確かです(V8以外は買いたいという気が起こらない)。

  メルセデスやBMWと横並び感が強い2L直4ターボ。ミッションがCVTになってしまう2.5L直4ハイブリッド。そして経年でそろそろ環境性能的に限界な3.5LのV6自然吸気。さらにその上にGS/RXには3.5Lハイブリッドが用意されていますが、やはりCVTになる。どれもクルマにこだわる人にはイマイチな印象を与えますし、さらにライバルとの比較を考えると、ポルシェの2L直4ターボ(水平4ターボ)、BMWの直6ターボ、日産の3.5Lハイブリッド&7ATがそれぞれ600万円台で売られていて、レクサスにアドバンテージは無いように思います。それでも何となく売れている現状から、ユーザー層のクルマ偏差値が伺い知れてしまうことで・・・そんなこんなで結局はカーメディアはレクサスに対してしょっぱい対応なんだろうなー。

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↓このような「血統書」が付けられているモデルはいいんですけどねー。