世界が認めたスポーツカー・・・まだ行ったこともない地域のネット動画に、GT-Rやランエボと並んでたくさん出てくるので、もっともポピュラーな「ストリート・スポーツカー」として君臨していることがわかります。あまり比較すること自体に意味はないですけど、ポルシェやロータスよりもより「身近な」スポーツカーとして愛されている様子が伝わってきます。
そんなスバルのスポーツカー文化の直系に当たる「WRX STI / S4」の現行モデルはどうもパッとしないですね・・・。「クルマ自体の素晴らしさ」云々よりも、「即日完売」でヘンな熱狂ぶりを見せる限定モデルばかりにマニア(スバリスト)の関心はに向けられるようになって久しいです。まあ歴代の限定モデルは中古車価格がプレミアですから600万円でも損は無いという判断するのも無理はないですけど・・・。あれこれと弄りたい人にはカタログモデルの「STI」を買ってもらい、弄る時間&労力が無い人(損もしたくない人)向けが「限定モデル」という見事な棲み分けが成立している。良くも悪くも日本らしいクルマ文化なのかも。
ランエボが廃止される一方で、インプレッサ後継の「WRX」の開発が継続されています。この両者を隔てたものが「アメリカ市場」だと言われています。別にアメリカ人がスバルを好んで三菱を嫌ったということではないです。幾つかの統計データと、アメリカ人ライターによる三菱やスバルへの評価を見ると、三菱もスバル以上の「高品質」(壊れにくい!)な日本メーカーとして十分に認知されているのがわかります。2000年代前半くらいまでは、トヨタ、ホンダ、日産といったメガメーカーよりも一歩先にいく「三菱ブランド」の高い信頼性を誇っていました。そしてアメリカ人に広く親しまれた「エクリプス」など北米専用モデルなどを率先して投入してきたのも三菱です。
単純に言ってしまうと、2000年代にアメリカでヒット車を出したスバルはアメリカ市場で躍進し、三菱のシェアはそれに喰われてしまったということです。パジェロの成功により「RV=ラダーフレーム」という古いカテゴリーに囚われていた三菱に対して、レガシィ・アウトバックという「SUV」の代表格といえるモデルを輩出したスバルは、この10年でアメリカで一番躍進したメーカーになりました。
そんなアメリカ至上主義に転向しつつあるスバルが、MTに乗らないアメリカ人にも楽しめるWRXとして先代に追加したのが、CVTを装備した「Aライン」(アメリカ・ライン?)でした。日本でも発売されましたが、AWDの常識を越えた回頭性が絶賛される「操縦感」が命のスポーツカーを、いきなり2ペダルにしてしまったら・・・カローラのボデーにクラウンのエンジンとミッションを組み込んだクルマ(ブレビス、プログレ)と乗った印象がかぶります。スバルに求めていたモノとは違うかな・・・スバルだと駄作だけどトヨタだったら名車になるパターンですね。
スバルとしてはアメリカ向けにせっかく2ペダルを作ったのだから、日本でも売ろうとしただけでしょうが、当時はGT-Rもランエボも2クラッチのDCTを装備していましたから、これはちょっと具合が悪かったですね。燃費重視の量販車は日本製(ジャトコ)のCVTを、ニュルでラップを刻むならばドイツ製(ゲトラグ)のDCTを、という「国際分業」が成り立っている中で、なんでスバルのスポーツカーがジャトコ(と共同開発)のミッションなんだ?・・・そんな有り難くないイメージが付いてしまいました。
実際にブレビス、プログレからの乗り換えがどれだけあったのかはわかりませんが、ハッキリ言って現行のWRX・S4に関してはこれをターゲットにしないと成立しないクルマだと思います。このクルマを「WRX」で売ることに躊躇いは絶対にあったと思います。「STI」とはエンジンから違っていて、こちらは最新の電子デバイスがガッツリ盛り込める新型エンジンです。ただしこのFA20型(86/BRZと同じ)はターボ化すると重心が高くなる欠点があるそうで、確かにS4乗ってもボクサーの低重心はあまり感じないです。踏んでモッサリ、曲ってもアレレ・・・これではブレビス/プログレと言われても仕方ない。
誰もなかなか言わないので書いてみたいと思いますが、スバルの販売を押し上げている「アイサイト」・・・S4に搭載されているこの機能は残念ながら高性能ユニットとの相性が最悪です。スバルはひた隠しにしているようですが、アイサイトを装着すると0-100km/hの加速は2秒以上遅くなると思われます。あくまで乗った感覚ですが、おそらくS4はAラインの「6秒」よりもさらにずっと遅いです。8秒くらいかな? 原因は乗ってみれば誰の感覚でも明らかでしょうが、CVTの制御による介入の手数が多くてやたらと「モタモタ」するんです。(スバルの特別プログラムによる裏技発進術があるようですが試したことはないです)
実際のところ0-100km/hで8秒ならば加速性能としては何ら不満はないです。CVTでここまでの高性能モデルが作れてしまうのは、世界中でもおそらくスバルだけです(そんなことをやろうとするのがスバルだけ)。だからこそ思うのですが、現行のWRXになかなか世間の注目が集まらないのは、スバルのやや暴走気味な「頑固」さの根拠/ビジョンが不明確で伝わらないのに、メーカーは「スバルは完全に未来を見据えている」かのような実感の伴わないスローガンを連発する・・・。ユーザー側の受ける印象と、メーカーの意識がここまで乖離したクルマは非常に珍しいのではないか? 当然にこんな製品開発&展開にユーザー側が完全に付いて行けていないわけです。
2007年にGT-Rが発売されました。AWDスポーツカーとしての絶対的な加速性能において、スバルや三菱に引導を渡した・・・と見るクルマ好きは多いと思います。ランエボの販売は大打撃のあと全く復活の気配を見せずに終焉しました。そんな日産に対してスバルがやけくそ気味に仕掛けた「自爆テロ」が・・・「アイサイト」だったと思います。スバルとしては「もうWRXだけではブランドを意地できないから新たなイメージリーダーを!」という意図だったのでしょうけど、このアイサイトを発表することで、これまでひたすらに(赤字でも)こだわってきた「スポーツカー文化」の根源を破壊する可能性を持った「パンドラの箱」だという危惧をスバルも当然に持っていたはずです。
もちろん「自動ブレーキ」は非常に画期的で有益な機能であることは間違いなく、当然に他のメーカーを巻き込んで急拡大しましたが、現在では「エコユニット」(ハイブリッド、直2~4ターボ)と「エコミッション」(CVT、多段AT)が当たり前になった乗用車全般にさらに「自動ブレーキ」が追加されることで、さらなる乗り味の低下を招いてしまっています。
果たして次期GT-Rの開発が大詰めを迎えている日産は自動ブレーキを積むのか?(積むわけないだろ!)。「積む派」のBMWと「積まない派」のポルシェの各モデルを見ていると、そのタイム差がどんどん開いていますが・・・。BMWの多くは既に「普通のクルマ」ですが、ポルシェのスポーツカー(911など)はあくまでサーキットのクルマにこだわっていて、かつてのライバル関係はスバルが仕掛けた「核弾頭」によって完全に袂を分つことになったようです。GT-Rのターゲットはポルシェ、スカイラインのターゲットはBMW・・・。スバルも同様の作り分けを意識しているとは思いますが、絶対的性能でGT-Rや911ターボに太刀打ちができない「STI」はやや日陰な存在です。
それではスカイラインやBMW3シリーズをライバルにした「S4」はどうか? これも先代で「4WS」を現行で「ステアバイワイア」を持ち込み、常に特別な乗用車であろうとするスカイラインの気高さに比べて、まだまだ志が低いような気がしてなりません。「自動ブレーキ」「直4ターボ」「CVT」「AWD」「ESC(横滑り防止)」といった十字架を全部背負って「スペクタクル」なクルマを作ろう!という幻想を追いかけて道半ば・・・。気が付けば「自然吸気」「6MT/6AT」で原点回帰を志向するマツダ車にすら負けられないはずの「ドライバビリティ」で圧倒されているのでは?
S4が発売した頃に「1位スカイライン 2位アテンザ 3位S4」という順位付けをしたことがありました。何に重きを置いたか?・・・まあ素人の目線で恐縮ですが、完成度の高さです。「ここをこうすればもっといいはず!」という点が一番少ないのがスカイラインで、最も多かったのがS4だったというだけの話です。どのクルマもパワーは申し分ないですし、長時間ドライブする上でどれも優れた実力を持っているのは確かです(いずれもゴルフ、Cクラス、3シリーズより優!!!)。しかしその水準において、S4には「ずっと乗っていたい」と思わせてくれる「イデア」的な魅力がまだ積上っていないと感じたのです。
しかしウラを返せば、現行のS4のパッケージにもっとも可能性を感じたとも言えます。スカイラインやアテンザはこれ以上の改良の余地が見出せないですし、「スポーツカー」ではなく「スポーツサルーン」をHVやディーゼルのパワーで駆動させるという次元のクルマでの完成形だと言えます。一方でS4のCVTペダルフィールは、メルセデスやBMWの直4ターボ&エコATと比べてしまえばそこまで酷くはないです。むしろ300psを振り回すことの限界値の高さを考えれば、大健闘の力作と評してもいいくらいです。けれどもスカイラインやアテンザより小振りなボディとAWDによる出足の良さを期待して踏むと・・・あれれ なんですね。プログレ/ブレビスの乗り換え用ならばこれでも十分に納得できますけどね。
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↓沢村慎太朗氏の「GT-R」評
ゴーン嫌いの「スカG派」を黙らせる迫力で痛快!
日本車の良さをなかなか報じてくれないメディアにいらいらしてます・・・。これからも日本メーカーに素晴らしいクルマを作ってもらいたいので、率直な想いを発信してます。
2016年1月30日土曜日
2016年1月22日金曜日
北米COTY受賞のシビックセダン なぜ日本で売らないの?
とりあえず見てもらった方がてっとり早いですね。
⇒ホンダのサイトより「シビックセダン」
日本でも販売されているアコードの顔に準じたものなのでしょうが、ホンダ車らしからぬサイドラインの美しさに思わず目が釘付けです。歴代のアコード、インスパイア、インテグラ、オデッセイはクルマ全体から「スポーティさ」を印象づけるような「スリム=ガリガリ」なボディでしたが、それらとは一線を画したような「高級感」を放つグラマラスなデザインになっています。
初代NSX以来の衝撃!!!はちょっと言い過ぎかもしれないですけど、一目で欲しくなるようないい雰囲気です。バブル期の日本のスポーツカーで、デザインの最高傑作と言われているのがマツダRX-7FD3S(1989年)ですが、初代NSX(1990年)もそれに劣らない傑作デザインでした!というかオーラは完全にこちらが上だと思いますし、なんといってもリアに盛り上がるフェンダー回りの巧みな曲線美には、今でも見かけるとため息でますね(FD3Sはちょっと古臭い)。のちにリトラクタブルヘッドライトが廃止されましたが、それでもそのスタイリングは変わらずにカッコいいですし、リアデザインなどは後期モデルの方がアップデートにより、さらに洗練されたものになりました。
すっかりNSXの話になってしまいました。さて11月に北米で発売されたばかりの新型シビックセダンは、いよいよホンダの美しいセダンが復活した!ということを強く印象付ける、非常に完成度の高いデザインです。一時的に日本での販売が停止されていたレジェンドですがそれほど間をおかずに新型となって復活しました、しかしそこにはホンダらしさ(他のブランドの先を行く活性化したデザイン力)はなく・・・やや失望したホンダファンは多かったのでは?。北米のアキュラ・デザインはリンカーンなどと並んで日本ではあまり好まれないいわゆる「鉄仮面」デザインなのですが、それを日本向けにフェイスリフトしたレジェンドは、どうもデザイン全体の煮詰めが甘くてチグハグな印象が拭えません(700万円もするのに!)。
日本で発売されていたホンダ車で、最後のホンダらしいセダンデザインといえば・・・最終型のインスパイアでしょうか。日本のアコードは先代までは欧州仕様が充当され、その前の世代までは限定グレードで「ユーロR」が設定されていたわけですが、当時は北米仕様の一回り大きいアコードを、日本向けの顔にして「インスパイア」としてアコードの上位モデルとして販売していました。そのインスパイアの最終型のデザインは、非常にダイナミックかつ保守的な機能美も兼ね備えたドイツ車にも決して負けない非常に「美しいセダン」でした。日本では印象が薄いですけど、北米ではBMWやアウディよりもホンダのセダンがクールだともて囃された時代は21世紀に入ってからもしばらく続いたようです。しかし2013年の北米アコードのFMCによって、これまで築き上げてきたホンダらしい3BOX車デザインがかなり迷走し始めました。
高級セダンのレジェンド(アキュラブランド)は販売不振に陥り、ミドルセダンのアコードはライバルであるカムリばかりか新興勢力のアルティマ(ティアナ)、フュージョンにまでまさかの遅れをとることもありました。歴代モデルが受賞してきた北米COTYを逃すなど、ホンダの不調は明らかでした(決して赤字転落ということはないのですけど)。迷走の理由を探ると、レクサスの成功を意識するあまり高級志向の内外装へと舵を切るなかで、何かブランドのイメージを変えるようなターニングポイントになる画期的なデザインのモデルもなく、2000年代初頭から使い続けるやや武骨なセダンデザインをそのまま使って高級車を仕立てたことに原因がありそうです。
「若さ・溌剌」が取り柄だったホンダセダンに、プレミアムブランド調の重厚なフロントマスクや内装パネルなどをあれこれ押し込んでしまった結果、どうもアコードとクラウンを足して二で割ったような、やや中途半端なアコードの現行モデルが誕生してしまったように思います。ホンダは失速する中でトヨタは堅調でした。ホンダ、トヨタの2強だった北米のミドルセダン市場には、日産アルティマ(ティアナ)が殴り込みをかけ、さらにフォードとマツダがそれぞれにデザインを重視して、ホンダのお株を奪うような「若さ・溌剌」をイメージさせるセダンを成功させました(フュージョン20000台/月をクリアしてアコード、カムリに匹敵、アテンザは10000台/月の手前で足踏み)。
日本と同じようにアメリカでもSUVがブームになっているようですが、やはりアメリカ人はセダンが好きで、日本では月に200~300台しか売れないアコードやティアナが、アメリカでは月にそれぞれ20000〜30000台は売れます(単純に100倍!)。そんなアメリカ市場での販売を念頭に置いて、アコードもアテンザもレガシィもフュージョンもパサートも4800mm程度まで大型化しています。さらにその下には4700mmクラス、4500mmクラスのセダン市場があります。
日本ではレクサスIS、3シリーズ、Cクラス、A4などプレミアムセダンばかりになった4700mmクラス(マークXはまだありますけど)は、北米ではクライスラー200Cやダッジ・ダート、VWジェッタ、そしてこのシビックセダンが投入されています。プレミアムDセグと拡大されたCセグセダンで構成されるこのクラスは、日本を走るにはベストのサイズでは?と思うのですが、廉価な拡大Cセグはなかなか日本での発売が始まらないです。ここはぜひホンダに先陣を切ってもらい、やる気満々のフィアット=クライスラー勢(200Cとダート)があとに続く!なんて展開を期待したいです。ちなみにこれらのモデルの北米での価格は17000ドル~19000ドル程度ですから、日本でも200万円台のボリュームゾーンで展開が出来るとは思うのですが・・・。NSXやtypeRもいいですけどシビック・セダンも日本上陸を!(北米製造車ですので「国産車ブログ」で扱うべきではないかも)
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⇒ホンダのサイトより「シビックセダン」
日本でも販売されているアコードの顔に準じたものなのでしょうが、ホンダ車らしからぬサイドラインの美しさに思わず目が釘付けです。歴代のアコード、インスパイア、インテグラ、オデッセイはクルマ全体から「スポーティさ」を印象づけるような「スリム=ガリガリ」なボディでしたが、それらとは一線を画したような「高級感」を放つグラマラスなデザインになっています。
初代NSX以来の衝撃!!!はちょっと言い過ぎかもしれないですけど、一目で欲しくなるようないい雰囲気です。バブル期の日本のスポーツカーで、デザインの最高傑作と言われているのがマツダRX-7FD3S(1989年)ですが、初代NSX(1990年)もそれに劣らない傑作デザインでした!というかオーラは完全にこちらが上だと思いますし、なんといってもリアに盛り上がるフェンダー回りの巧みな曲線美には、今でも見かけるとため息でますね(FD3Sはちょっと古臭い)。のちにリトラクタブルヘッドライトが廃止されましたが、それでもそのスタイリングは変わらずにカッコいいですし、リアデザインなどは後期モデルの方がアップデートにより、さらに洗練されたものになりました。
すっかりNSXの話になってしまいました。さて11月に北米で発売されたばかりの新型シビックセダンは、いよいよホンダの美しいセダンが復活した!ということを強く印象付ける、非常に完成度の高いデザインです。一時的に日本での販売が停止されていたレジェンドですがそれほど間をおかずに新型となって復活しました、しかしそこにはホンダらしさ(他のブランドの先を行く活性化したデザイン力)はなく・・・やや失望したホンダファンは多かったのでは?。北米のアキュラ・デザインはリンカーンなどと並んで日本ではあまり好まれないいわゆる「鉄仮面」デザインなのですが、それを日本向けにフェイスリフトしたレジェンドは、どうもデザイン全体の煮詰めが甘くてチグハグな印象が拭えません(700万円もするのに!)。
日本で発売されていたホンダ車で、最後のホンダらしいセダンデザインといえば・・・最終型のインスパイアでしょうか。日本のアコードは先代までは欧州仕様が充当され、その前の世代までは限定グレードで「ユーロR」が設定されていたわけですが、当時は北米仕様の一回り大きいアコードを、日本向けの顔にして「インスパイア」としてアコードの上位モデルとして販売していました。そのインスパイアの最終型のデザインは、非常にダイナミックかつ保守的な機能美も兼ね備えたドイツ車にも決して負けない非常に「美しいセダン」でした。日本では印象が薄いですけど、北米ではBMWやアウディよりもホンダのセダンがクールだともて囃された時代は21世紀に入ってからもしばらく続いたようです。しかし2013年の北米アコードのFMCによって、これまで築き上げてきたホンダらしい3BOX車デザインがかなり迷走し始めました。
高級セダンのレジェンド(アキュラブランド)は販売不振に陥り、ミドルセダンのアコードはライバルであるカムリばかりか新興勢力のアルティマ(ティアナ)、フュージョンにまでまさかの遅れをとることもありました。歴代モデルが受賞してきた北米COTYを逃すなど、ホンダの不調は明らかでした(決して赤字転落ということはないのですけど)。迷走の理由を探ると、レクサスの成功を意識するあまり高級志向の内外装へと舵を切るなかで、何かブランドのイメージを変えるようなターニングポイントになる画期的なデザインのモデルもなく、2000年代初頭から使い続けるやや武骨なセダンデザインをそのまま使って高級車を仕立てたことに原因がありそうです。
「若さ・溌剌」が取り柄だったホンダセダンに、プレミアムブランド調の重厚なフロントマスクや内装パネルなどをあれこれ押し込んでしまった結果、どうもアコードとクラウンを足して二で割ったような、やや中途半端なアコードの現行モデルが誕生してしまったように思います。ホンダは失速する中でトヨタは堅調でした。ホンダ、トヨタの2強だった北米のミドルセダン市場には、日産アルティマ(ティアナ)が殴り込みをかけ、さらにフォードとマツダがそれぞれにデザインを重視して、ホンダのお株を奪うような「若さ・溌剌」をイメージさせるセダンを成功させました(フュージョン20000台/月をクリアしてアコード、カムリに匹敵、アテンザは10000台/月の手前で足踏み)。
日本と同じようにアメリカでもSUVがブームになっているようですが、やはりアメリカ人はセダンが好きで、日本では月に200~300台しか売れないアコードやティアナが、アメリカでは月にそれぞれ20000〜30000台は売れます(単純に100倍!)。そんなアメリカ市場での販売を念頭に置いて、アコードもアテンザもレガシィもフュージョンもパサートも4800mm程度まで大型化しています。さらにその下には4700mmクラス、4500mmクラスのセダン市場があります。
日本ではレクサスIS、3シリーズ、Cクラス、A4などプレミアムセダンばかりになった4700mmクラス(マークXはまだありますけど)は、北米ではクライスラー200Cやダッジ・ダート、VWジェッタ、そしてこのシビックセダンが投入されています。プレミアムDセグと拡大されたCセグセダンで構成されるこのクラスは、日本を走るにはベストのサイズでは?と思うのですが、廉価な拡大Cセグはなかなか日本での発売が始まらないです。ここはぜひホンダに先陣を切ってもらい、やる気満々のフィアット=クライスラー勢(200Cとダート)があとに続く!なんて展開を期待したいです。ちなみにこれらのモデルの北米での価格は17000ドル~19000ドル程度ですから、日本でも200万円台のボリュームゾーンで展開が出来るとは思うのですが・・・。NSXやtypeRもいいですけどシビック・セダンも日本上陸を!(北米製造車ですので「国産車ブログ」で扱うべきではないかも)
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2016年1月20日水曜日
スカイラインとフーガに「クール・エクシクルージブ」登場
どうやらスカイラインを買いにきたお客から「内装が地味過ぎ」というご意見があったみたいですね。発売当初から「プレミアムを騒がす!」と強気に宣言していたにも関わらず、集まったお客に軽く欠点を指摘されて、あわてて「ピュアホワイト」が眩しいスペシャルな内装モデルを用意した・・・なんともコミカルな日産のドタバタ劇が想像できます。日産が得意としているスペック重視は、もはや高級車マーケットでは時代錯誤なのか? 硬派な日産がポリシーを曲げた・・・と笑う気はさらさらないですけど、今や1000万台に届こうとしているルノー日産グループですから、その看板ともいえるスカイラインの新型モデル投入時に今後のトレンドをしっかり読んで、需要を先回りしておくくらいできなかったのか? 150万台規模のマツダにだって出来ているのに・・・(失礼)。
イメチェンを狙ったマツダが、ブランド内の「プレミアム相当グレード」として新たに設定した「Lパッケージ」は、実質的にはレザーシート&レザートリムにBOSEサウンドシステムをまとめた「セット・オプション」です。その中でも一番のこだわりはやや奇をてらった感がある「ピュア・ホワイト」全開のキラキラ内装のようで、やたらと目にするいろいろなマツダの宣伝媒体では、しばしば自慢のエクステリアと並んで「白い」内装の写真が掲示されています。マツダ=大衆ブランドというイメージを根本的に断ち切るための「破壊力」という意味では、アウディやメルセデスに準じたようなエクステリアよりもさらにインパクトがあったような気がします。
「マツダのパクリです!」と言ってしまうのはやや失礼かもしれないですが、このタイミングでスカイライン&フーガのテコ入れとして「白」を行ってしまったのでは、そう受け取られても仕方ないですかね。もちろんスカイラインのFMCの段階からこの構想があらかじめ準備されていて、2013年の発売から3年経ったタイミング(つまり車検ですね)で、「スカイラインからスカイライン」への乗り換え需要を狙った戦略なのかもしれません。「後だしジャンケン」でこんなに清々しい内装になったスカイラインを見せられたら、発売直後に買った人はちょっと口惜しいはずです。
今回スカイラインとフーガにそれぞれ「クール・エクシクルージブ」として設定されたのですが、キャビンの広さからしてだいぶ内装の方向性が違う2台ですから、白いシートを取り巻くインテリアの雰囲気も違っています。白いシートがよく似合っているのは、明らかにタイトな空間をサイバーデザインでまとめているスカイラインの方ですね。フーガはどうも無理矢理・チグハグです・・・なんでシートがホワイトなんだ〜って感じがします。
フーガとスカイラインではフロントシートのサイズ・機能が大きく違っていて、最上級セダン・フーガの売りといえば、やはり助手席に備わるオットマンシートです。もちろんフットレストまでホワイトレザーで覆われています。また最上級車らしい装備としてBOSEのスピーカーがフロントシートの肩口にまで付いています。そこから耳へダイレクトに音が届くようになっていて、最新設備の映画館みたいです。もちろんクルマですから、そこまでしなくても音響空間は作れるとは思うのですが、こういう手数のかかったギミックによる差別化こそが高級車を所有したいと思わせてくれる演出ですね。シアターシステムを備えた「モダンリビング」をイメージしてクルマをつくるとこういう設計になってしまうようです。
フーガやスカイラインと価格帯で競合するドイツブランドの内装は、ブラック、ブラウン、ベージュといった「自然色」が多く、現行スカイラインの発売当初もこの3色設定でした。しかしスカイラインのクラスで先代よりも販売を伸ばしていて好調なのが、アテンザ!しかもLパッケージがかなりの割合で売れているらしい!輸入車からの乗り換えもたくさん呑み込んでいる!・・・ということでスカイラインの軌道修正だったんじゃないかと思います。
このクール・エクスクルージブで約20万円の値上げになっていますが、とりあえずクルマの魅力は狙い通りに上がっていて、スカイラインを買うならばコレかな・・・というくらいの出来映えです。ただし日産のホームページをよく読むと、「シートの中心部以外は人工皮革を使用してます」と書いてある・・・。この辺が上質さを好んで高級車を選ぶ人々にどういう印象を与えるのでしょうか? 日産はやっぱりツメが甘いのでしょうか・・・。
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イメチェンを狙ったマツダが、ブランド内の「プレミアム相当グレード」として新たに設定した「Lパッケージ」は、実質的にはレザーシート&レザートリムにBOSEサウンドシステムをまとめた「セット・オプション」です。その中でも一番のこだわりはやや奇をてらった感がある「ピュア・ホワイト」全開のキラキラ内装のようで、やたらと目にするいろいろなマツダの宣伝媒体では、しばしば自慢のエクステリアと並んで「白い」内装の写真が掲示されています。マツダ=大衆ブランドというイメージを根本的に断ち切るための「破壊力」という意味では、アウディやメルセデスに準じたようなエクステリアよりもさらにインパクトがあったような気がします。
「マツダのパクリです!」と言ってしまうのはやや失礼かもしれないですが、このタイミングでスカイライン&フーガのテコ入れとして「白」を行ってしまったのでは、そう受け取られても仕方ないですかね。もちろんスカイラインのFMCの段階からこの構想があらかじめ準備されていて、2013年の発売から3年経ったタイミング(つまり車検ですね)で、「スカイラインからスカイライン」への乗り換え需要を狙った戦略なのかもしれません。「後だしジャンケン」でこんなに清々しい内装になったスカイラインを見せられたら、発売直後に買った人はちょっと口惜しいはずです。
今回スカイラインとフーガにそれぞれ「クール・エクシクルージブ」として設定されたのですが、キャビンの広さからしてだいぶ内装の方向性が違う2台ですから、白いシートを取り巻くインテリアの雰囲気も違っています。白いシートがよく似合っているのは、明らかにタイトな空間をサイバーデザインでまとめているスカイラインの方ですね。フーガはどうも無理矢理・チグハグです・・・なんでシートがホワイトなんだ〜って感じがします。
フーガとスカイラインではフロントシートのサイズ・機能が大きく違っていて、最上級セダン・フーガの売りといえば、やはり助手席に備わるオットマンシートです。もちろんフットレストまでホワイトレザーで覆われています。また最上級車らしい装備としてBOSEのスピーカーがフロントシートの肩口にまで付いています。そこから耳へダイレクトに音が届くようになっていて、最新設備の映画館みたいです。もちろんクルマですから、そこまでしなくても音響空間は作れるとは思うのですが、こういう手数のかかったギミックによる差別化こそが高級車を所有したいと思わせてくれる演出ですね。シアターシステムを備えた「モダンリビング」をイメージしてクルマをつくるとこういう設計になってしまうようです。
フーガやスカイラインと価格帯で競合するドイツブランドの内装は、ブラック、ブラウン、ベージュといった「自然色」が多く、現行スカイラインの発売当初もこの3色設定でした。しかしスカイラインのクラスで先代よりも販売を伸ばしていて好調なのが、アテンザ!しかもLパッケージがかなりの割合で売れているらしい!輸入車からの乗り換えもたくさん呑み込んでいる!・・・ということでスカイラインの軌道修正だったんじゃないかと思います。
このクール・エクスクルージブで約20万円の値上げになっていますが、とりあえずクルマの魅力は狙い通りに上がっていて、スカイラインを買うならばコレかな・・・というくらいの出来映えです。ただし日産のホームページをよく読むと、「シートの中心部以外は人工皮革を使用してます」と書いてある・・・。この辺が上質さを好んで高級車を選ぶ人々にどういう印象を与えるのでしょうか? 日産はやっぱりツメが甘いのでしょうか・・・。
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2016年1月13日水曜日
レクサスLC500 世界はこのジャンルの日本車を待っていた(と思うよ)
1500万円以上はするであろうクルマに対して、「世界は待っていた!」とか書くと・・・高級車なんかに期待しているのはほんの一握りの地域だけだぞ!とツっこまれるでしょうけど。言いたいことはもっと単純なことで、アストンマーティンやマセラティが作ってきた、限りなくスーパーカーに近い「ラグジュアリーGTカー」なら無理してでも乗ってみたい! けれどもアストンやマセラティのディーラー網の貧弱さゆえに、「すぐに壊れたらどうしよう・・・」みたいな悩みを簡単に払拭できないので、貯金すらしようと思わないよ!なんて冗談半分に言っている人なんかもいます。けれども(もしその人に余裕があって)レクサスが作ってくれるなら話は別なんだろうなということです。
デトロイトMSでレクサスの新型クーペ「LC500」が発表されました。2017年初頭の発売予定で、ほぼ市販モデルの状態なんだとか。確かにトヨタの章男社長が熱くなりそうないい表情したクルマです。さすがにこれほどのデザインをみせられてもまだ「マツダの方がかっこいい!」と言い張る人はいないだろうと思っていたら、まあネット記事のコメントなんて・・・ですけど、ボチボチ居ますね。マツダもリッチな顧客が欲しかったら、中古車が二束三文で溢れているライトウエイトスポーツなんかにこだわらずに、先代ロードスターで見せたリトラクタブルハードトップの機構をガッツリと組み込んで、成金仕様の「ラグジュアリー2シーター」のボディに新開発の直4ターボ載せてみてはどうでしょうか?
レクサスISとスカイラインが現行モデルになった時に、どれほどのものか?と思ってそれぞれ乗りに行ったんですよ。どちらも購入時をリアルに想像して見積もりまで取りました。「IS350Fスポ」がおよそ700万円。「スカイライン350GT(AWD)」がおよそ550万円。スペック上で有利なのはスカイライン、そして乗ってみて良くできているのもスカイライン。日産が「プレミアムを騒がせる」と豪語するだけのことはあります。実際に乗っていてどっちが見栄えがするか?というと、どっちも「大した事は無い」です。ちょっと豪華な「普段仕様」・・・それ以上でもそれ以下でもない。
つまり「スカイライン」だから「IS」だからというこだわりは無くて、見栄えだけだったら「アテンザ」でも「レガシィ」でもあまり変わらないくらいです。「普段仕様」のクルマならば、4気筒だから6気筒だからという固定観念も不要です。もちろん1.5L以下の排気量となると高速走行時に相当にウルサイので困りますけど、アテンザはディーゼルですし、レガシィも2.5Lなのでその辺は気になりません。「レガシィ」のトップグレードはおそらく乗り出しで400万円を下回るはずで、「IS」のおよそ半額です。さらに「レガシィ」は全車AWD&全席シートヒーター付きなのに対して、「IS350」にはAWDの設定もなければ、オプションでも後席シートヒーターは付きません。
なんで最も高価な「IS350Fスポ」にこだわっているのか? それはレクサスが先代ISの弱点(車体と足回り)を真摯に受け止めて、300psオーバーのユニットに負けないクルマを目指した情熱が結実している唯一のグレードだからです。たしかに先代IS350とは全く印象が違います。あまりに足回りがしっかりしているので、パワーがもっとあってもいいのでは?くらいに錯覚します。300psを越える大排気量自然吸気ユニットなのに「パンチ不足」なんてそんなバカな・・・と思ったら本当にそうでした(CGの大谷さんはやっぱり正しい)。アクセルを踏み込んでいけば、グワ〜っとパワーが盛り上がる感覚がありますが、かといってタイヤからの入力が「錯乱する」といったことはなく、低速域ではややフワフワするハンドリングも、一定速度を越えると突如として日産やマツダに負けない「豪傑」へと変貌します。
ちょっと褒めてみましたが、スカイライン、アテンザ、レガシィでは全てのグレードでブランドが表現する「GTツアラー」としての「いいクルマ」感は得られますが、「IS」に関しては「IS350Fスポ」しか認めないです。それ以外のグレードは、「クラウンを取り回しの良いサイズにしてレクサス化したクルマ」に過ぎないと思うからです(お年寄り向け?)。しばしばレクサスが批判される「他では400~500万円で買えるくらいのクルマを700万円で売るブランド」という評価はとりあえず間違っていないです。それではなぜレクサスに顧客が集まるのか・・・それは決してレクサスに強烈な「憧れ」を抱くセレブ志向な人々(主に女性)が群がるからというわけではないと思います。
冒頭にも書きましたが、レクサスにはとりあえずマセラティやアストンマーティンには無い「安心感」があります。そしてそれと同時に、日産・ホンダ・スバル・マツダにも無い「信頼感」を兼ね備えている!これこそが「あえてレクサスでクルマを買う理由」だと思うのです。レクサスのディーラー設備が整っていて、美味しいコーヒーや、ただ試乗にいっただけで同伴していた連れにテディベアをくれる、「おもてなし」の精神もいいですけど、そんなことよりも「いいなあ!」と思ったのは別のことです。
日産に「普段仕様」のスカイラインを見に行きました。日産の販売店は「普段仕様」として見られているとは思ってないのかもしれません。もちろん本体価で500万円ですから、走行性能も抜群で内装も申し分ないです。いちいち重箱の隅をつつくような「足踏み式サイドブレーキが・・・」という自分の意識を逆に恥ずかしく思ったくらいです。そんな至れり尽くせりの現行スカイラインに何が問題か?というと、タイヤがランフラット化されたことです。
乗り心地がどうか?韓国製のハンコックでは?・・・といったカーメディア特有の関心事には興味がないです。「普段仕様」ですから、もちろん「スタッドレスタイヤ」はどうするの?ってことです。天下の日産だから当然に納得できる方法を用意していると思いきや、なんと!某ドイツプレミアムメーカーと全く同じ次元(不満足)の対応でした。「パンク修理キットと合わせたもので間に合わせます」って、じゃあそのキットはどこに収納されるのか〜?トランク内でガタゴトするのか〜!!!「プレミアムを騒がす」とか言っておいて、なんてザマだ・・・。
もちろん同じ部分でレクサスではそんな不始末はありませんでした。すでにオプションの段階で「パンク修理キット」か「スペアタイヤ」かを選べるようになっています。全てをメルセデスやBMW基準で行ってしまえ!という安易過ぎる日産と、独自のサービスノウハウをきちんと確立させているレクサス。もちろんクルマの出来不出来も大事ですけども、いくらいいクルマでも「安心して乗れない」というのはダメじゃないかと思うのです。もちろんパンクしても通常の速度で100km程度は走れるランフラットタイヤを装着する合理性もわからないでもないですけどね。ランフラットを実車配備するにしてもレクサスだったら杞憂すら無くしてしまうくらいの「安心感」とともに提供してくれるのではという期待は間違いなくあります。
バブルの頃には手付金を払ったスーパーカーのディーラーが夜逃げする!なんてこともリアルにあったとか。店の前の屋外展示スペースにズラッと並べられた高級車に200~300万円!!!なんて値札が付いていたら「メーター巻き戻し」だなと直感してしまうものです。そんなくだらないトラブルによって必死で溜めたお金が消えたら悲し過ぎますよね。だからこそ「生きたお金」を「生きたまま」使えるような気持ちのいい消費サイクルの中に、「自動車」がどうやって入りこむのか?を考えることが「クルマの性能」なんかよりもずっと大事だと思うのです(そういえばGT-Rの水野さんもこんなことおっしゃってました)。日本に高級車の売り方を心得た専門のディーラーができて良かった!安心してお金を注ぎ込むことができそう!・・・そこから「貯金」が始まるのでは?
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デトロイトMSでレクサスの新型クーペ「LC500」が発表されました。2017年初頭の発売予定で、ほぼ市販モデルの状態なんだとか。確かにトヨタの章男社長が熱くなりそうないい表情したクルマです。さすがにこれほどのデザインをみせられてもまだ「マツダの方がかっこいい!」と言い張る人はいないだろうと思っていたら、まあネット記事のコメントなんて・・・ですけど、ボチボチ居ますね。マツダもリッチな顧客が欲しかったら、中古車が二束三文で溢れているライトウエイトスポーツなんかにこだわらずに、先代ロードスターで見せたリトラクタブルハードトップの機構をガッツリと組み込んで、成金仕様の「ラグジュアリー2シーター」のボディに新開発の直4ターボ載せてみてはどうでしょうか?
レクサスISとスカイラインが現行モデルになった時に、どれほどのものか?と思ってそれぞれ乗りに行ったんですよ。どちらも購入時をリアルに想像して見積もりまで取りました。「IS350Fスポ」がおよそ700万円。「スカイライン350GT(AWD)」がおよそ550万円。スペック上で有利なのはスカイライン、そして乗ってみて良くできているのもスカイライン。日産が「プレミアムを騒がせる」と豪語するだけのことはあります。実際に乗っていてどっちが見栄えがするか?というと、どっちも「大した事は無い」です。ちょっと豪華な「普段仕様」・・・それ以上でもそれ以下でもない。
つまり「スカイライン」だから「IS」だからというこだわりは無くて、見栄えだけだったら「アテンザ」でも「レガシィ」でもあまり変わらないくらいです。「普段仕様」のクルマならば、4気筒だから6気筒だからという固定観念も不要です。もちろん1.5L以下の排気量となると高速走行時に相当にウルサイので困りますけど、アテンザはディーゼルですし、レガシィも2.5Lなのでその辺は気になりません。「レガシィ」のトップグレードはおそらく乗り出しで400万円を下回るはずで、「IS」のおよそ半額です。さらに「レガシィ」は全車AWD&全席シートヒーター付きなのに対して、「IS350」にはAWDの設定もなければ、オプションでも後席シートヒーターは付きません。
なんで最も高価な「IS350Fスポ」にこだわっているのか? それはレクサスが先代ISの弱点(車体と足回り)を真摯に受け止めて、300psオーバーのユニットに負けないクルマを目指した情熱が結実している唯一のグレードだからです。たしかに先代IS350とは全く印象が違います。あまりに足回りがしっかりしているので、パワーがもっとあってもいいのでは?くらいに錯覚します。300psを越える大排気量自然吸気ユニットなのに「パンチ不足」なんてそんなバカな・・・と思ったら本当にそうでした(CGの大谷さんはやっぱり正しい)。アクセルを踏み込んでいけば、グワ〜っとパワーが盛り上がる感覚がありますが、かといってタイヤからの入力が「錯乱する」といったことはなく、低速域ではややフワフワするハンドリングも、一定速度を越えると突如として日産やマツダに負けない「豪傑」へと変貌します。
ちょっと褒めてみましたが、スカイライン、アテンザ、レガシィでは全てのグレードでブランドが表現する「GTツアラー」としての「いいクルマ」感は得られますが、「IS」に関しては「IS350Fスポ」しか認めないです。それ以外のグレードは、「クラウンを取り回しの良いサイズにしてレクサス化したクルマ」に過ぎないと思うからです(お年寄り向け?)。しばしばレクサスが批判される「他では400~500万円で買えるくらいのクルマを700万円で売るブランド」という評価はとりあえず間違っていないです。それではなぜレクサスに顧客が集まるのか・・・それは決してレクサスに強烈な「憧れ」を抱くセレブ志向な人々(主に女性)が群がるからというわけではないと思います。
冒頭にも書きましたが、レクサスにはとりあえずマセラティやアストンマーティンには無い「安心感」があります。そしてそれと同時に、日産・ホンダ・スバル・マツダにも無い「信頼感」を兼ね備えている!これこそが「あえてレクサスでクルマを買う理由」だと思うのです。レクサスのディーラー設備が整っていて、美味しいコーヒーや、ただ試乗にいっただけで同伴していた連れにテディベアをくれる、「おもてなし」の精神もいいですけど、そんなことよりも「いいなあ!」と思ったのは別のことです。
日産に「普段仕様」のスカイラインを見に行きました。日産の販売店は「普段仕様」として見られているとは思ってないのかもしれません。もちろん本体価で500万円ですから、走行性能も抜群で内装も申し分ないです。いちいち重箱の隅をつつくような「足踏み式サイドブレーキが・・・」という自分の意識を逆に恥ずかしく思ったくらいです。そんな至れり尽くせりの現行スカイラインに何が問題か?というと、タイヤがランフラット化されたことです。
乗り心地がどうか?韓国製のハンコックでは?・・・といったカーメディア特有の関心事には興味がないです。「普段仕様」ですから、もちろん「スタッドレスタイヤ」はどうするの?ってことです。天下の日産だから当然に納得できる方法を用意していると思いきや、なんと!某ドイツプレミアムメーカーと全く同じ次元(不満足)の対応でした。「パンク修理キットと合わせたもので間に合わせます」って、じゃあそのキットはどこに収納されるのか〜?トランク内でガタゴトするのか〜!!!「プレミアムを騒がす」とか言っておいて、なんてザマだ・・・。
もちろん同じ部分でレクサスではそんな不始末はありませんでした。すでにオプションの段階で「パンク修理キット」か「スペアタイヤ」かを選べるようになっています。全てをメルセデスやBMW基準で行ってしまえ!という安易過ぎる日産と、独自のサービスノウハウをきちんと確立させているレクサス。もちろんクルマの出来不出来も大事ですけども、いくらいいクルマでも「安心して乗れない」というのはダメじゃないかと思うのです。もちろんパンクしても通常の速度で100km程度は走れるランフラットタイヤを装着する合理性もわからないでもないですけどね。ランフラットを実車配備するにしてもレクサスだったら杞憂すら無くしてしまうくらいの「安心感」とともに提供してくれるのではという期待は間違いなくあります。
バブルの頃には手付金を払ったスーパーカーのディーラーが夜逃げする!なんてこともリアルにあったとか。店の前の屋外展示スペースにズラッと並べられた高級車に200~300万円!!!なんて値札が付いていたら「メーター巻き戻し」だなと直感してしまうものです。そんなくだらないトラブルによって必死で溜めたお金が消えたら悲し過ぎますよね。だからこそ「生きたお金」を「生きたまま」使えるような気持ちのいい消費サイクルの中に、「自動車」がどうやって入りこむのか?を考えることが「クルマの性能」なんかよりもずっと大事だと思うのです(そういえばGT-Rの水野さんもこんなことおっしゃってました)。日本に高級車の売り方を心得た専門のディーラーができて良かった!安心してお金を注ぎ込むことができそう!・・・そこから「貯金」が始まるのでは?
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2016年1月7日木曜日
「脱トヨタ」 自己否定のブランディングに熱狂出来ますか?
「初代セルシオ」が発売されてからかれこれ四半世紀が経ちました。街中ではまだまだこの型のも良く見かけますが、見かける度に新しい発見というか、当時のデザイナーが意図したことがあれこれ感じ取れる気がして、改めてとても趣き深いデザインだなと思います。80年代の日本車がもて囃される風潮に多少は影響されているかもしれませんが、このクルマは王道VIPカーとしてどこか好奇の目にさらされた数年前と比べて、新型デザインが増え行く道路上でますます存在感が増しているように感じます。やはり多くの愛好家が口を揃えるように、初代、2代目のセルシオは「普遍的・極上デザイン」に数えられる稀代の名車です。
1989年当時にトヨタから発売されたセダンは他にクラウンやコロナがあります。どちらもセルシオに似ている部分こそありますが、プロポーションにおいて決定的な差をつけられていました。「国民車」(カローラ)よりもワンクラス上の「ハイソカー」になるコロナやクラウン(この2台にも幾分の差はありますけど)から見ても、さらにそれを大きく越える図抜けた存在だったのがセルシオでした。この「構図」から見ると、セルシオの後継に当たる現在のレクサスLSにはそれだけのステータスがあるのかな?と街でLSを見かける度にふと疑問に思ったりします。セルシオの良さが引き継がれていない!とは言い切れませんけども、「なぜトヨタは稀代の名車が誇った伝統を侮るのか?」というやり場のない苛立ちがふと沸きおこります。
日本にレクサスが展開された2005年にトヨタの副社長に就任し、2009年から社長を務める豊田章男氏は株主総会などでしばしば「魅力あるクルマ作り」「クルマ好きが好きになるクルマ」について言及しています。従来のトヨタが歩んできた路線の変更・多様化を打ち出していて、実際にトヨタやレクサスから発売される新型車には社長が掲げるスローガンがしっかりと息づいていると思います。「ファミリー向けワンボックス」「団塊世代向けスポーツカー」「富裕層向けSUV」などなど確かなマーケットリサーチ能力を発揮しつつ、台数が見込めるジャンルに次々と「バリュー」なクルマを投下し続けています。
多くのビジネス書では一般的にトヨタが圧倒的に強くなったのは3代目の奥田碩社長が就任した1995年からだとされています。その改革自体はエコカー戦略を中心とした「圧倒的な強さ」と趣味性の高いクルマの切り捨てによる「クルマ好きからの批判」が改革の裏表になっていたなどと、ややシニカルに描かれることが多いようです。1995年当時はというと、冷戦終結によるバブル崩壊に巻き込まれた日本メーカーは突如として苦境に陥り、どこまでも現実的な改革を即座に打ち出したトヨタとホンダ以外は奈落の底へと落ちていくしかなかったわけですから、トヨタにおける「奥田改革」は自動車産業の歴史に燦々と輝く偉業であることは間違いないです。
この改革から20年が経過して、自動車ユーザーの高齢化・富裕化による嗜好の変化を織り込んだマーケティングによって現在のラインナップが形成されています。これらを「豊田章男改革のクルマ」と称するとしましょう。初代セルシオを生んだ「バブル期トヨタ」、ハイブリッドの最前線を歩んだ「奥田改革」、そしてクルマ好きへの訴求をさかんにアピールする「豊田章男改革」の3世代のトヨタ車が日本中で見られますが、どの世代のクルマに一番感情移入できますか?(アツくなれますか?)
開発費が青天井だった「バブル期トヨタ」ではセルシオだけでなくソアラ、スープラなど「スペシャルティ」という言葉がそのまま似合うクルマがいくつもありました。しかし2016年にもなってわざわざこれら昔の排ガス基準のクルマを走らせるのには、かなりの後ろめたさがありますから、どれだけ中古車価格がお手頃であっても手を出そうとは思わないです。この時代のトヨタが当たり前のように極めていた「スペシャルティ」な装いをそのまま受け継ぐようなクルマが新しく出てきてほしいとは思いますが・・・。
「バブル期」の日本メーカーは、「フェラーリを越えた日本のスーパーカー」「ポルシェより速い日本のGTカー」「メルセデスより優れた日本の高級車」といった感じで、輸入車ブランドを完全に下に見るくらいの不遜な態度がプンプンしていましたし、実際にNSXもスカイラインGT-Rもセルシオもそんな尊大な言い分に相応しい実力がありました。「もうバブルではないからそんなクルマは簡単には作れない!」とは言われていますが、その頃の日本車は着実に海外市場に楔を打ち込み、高い評価を得てきたおかげで、「2代目NSX」も「R35GT-R」も「レクサスLS」も世界水準のハイエンドカーとして開発が続いています。
1989年に550万円だったセルシオは、周囲のクルマが小さかったこともあって所有による満足度は価格設定も含めて非常に高かったと思います。一方で900万円する現行のレクサスLSは大きくなった周囲のクルマ(GS、クラウン、フーガ、レジェンド)と、明確な線引きができない「上級セダン」に落ち着いてしまいました。確かにトヨタ伝統の世界一静かなV8エンジンはさらに洗練され、内装はさらに200万円出せばオーダーメイドも可能です1500万円?くらいで、ザガート(ミラノの名門カスタマイザー)に3億円くらい払って手に入れる特注のラピードやクワトロポルテに引けをとらないワンオフの高級セダンが作れるのは素晴らしいと思います。
しかしですよ・・・なんだかな。例外無く全ての欧州ハイエンド車を越えて行こうとした、「バブル期」の強烈にふてぶてしい日本車が放ったアイデンティティと比べると、現在の「レクサスLS」は欧州車と同等の快適性をいくらかリーズナブルな価格で提供するといった「夢の無い」戦略に支配されています。メルセデスやマセラティがやっていることはしっかり押えるけど、やっていないことはレクサスもやりません。「じゃあレクサスLSの個性って何? ・・・それは信頼性です」と言うしかない残念なスタンスです。もちろんこれがトヨタの強みですからそれを否定するつもりはないですけど、セルシオが当時に体現した「究極」で「ブレイクスルー」なスピリッツをこのクルマから直接感じとることはできません。
トヨタの高級車作りが今なお進化を遂げているのは間違いないのでしょうけども、そのステージとなっている「レクサス」が目指しているものって一体何なのでしょうか? 豊田章男社長がどれだけ「クルマの魅力を発信する!」とアピールしたところで、言葉が悪いですけど、レクサスの最新のクルマ作りに納得しているのは彼らがターゲットにしている50歳から上の世代だけなのでは・・・。ブランド全体を見渡しても、とりあえず「ドイツ車らしく」作ってひたすらに媚びる。じじいばかりの評論家連中は一定の評価をしてくれるでしょうし、短期的にはアベノミクスでウハウハなオッサン世代に受け入れられて結果は出るでしょう。しかしそれより下の世代にはピンと来ない・・・。
セルシオが築いた遺産の上にあぐらをかいてきたレクサス。セルシオには全てを納得させるだけの「説得力」がありましたから、そこに注ぎ込まれた技術力がそのままレクサスのブランド基盤になりました。しかし豊田章男社長の旗振りで改革されている現行のレクサスラインナップは、これからのブランド力をさらに高めていくだけの発信力・推進力は「ない」のではないかと思います。レクサスは新たに「GS-F」という高性能セダンを発表しましたが、メルセデスAMGのコンセプトを取り入れることが、レクサスのブランド作りにどれだけ貢献するか?は未知数ですし、AMGではなくレクサスFを選ぶ必然性も乏しいです。
レクサスにはもっと望まれるべきモデルがあるように思います。ひと昔前の瀕死の状態にあったフェラーリブランドを復活させた大ヒット車「カリフォルニア」のコンセプトの元となったのは、間違いなく電動ハードトップを備えた「レクサスSC」ですが、なぜこのクルマを廃止してしまったのでしょうか? このクルマを開発し続けていれば、レクサスのブランドイメージは今とはひと味違ったものになっていたはずです(レクサスIS-Cも廃止)。いまや着脱可能なハードトップを備えた「スペシャルティ」「スポーツカー」は、911のハイエンドボディタイプとなる「タルガ」や、C7コルベットなどなど「趣味のクルマ」にとって大きな魅力になっています。
セルシオからレクサスSC(ソアラ)へと話が流れましたが、トヨタ&レクサスはなぜ自らの輝かしい歴史を築いてきたモデルに背を向けて、ドイツブランドの亜流のようなクルマを作るのでしょうか? 「Fスポ」というグレード設定がどこから来ているのか言うまでもないですが、このグレードを試してみると、なんだか良くわからない気分になります。ハンドル切ってもアクセル踏んでもなんか「遠い」・・・静音性が高いせいかバーチャルなコクピットでゲームしている感覚に襲われます。
レクサスの意図としては、インフォメーション過多でいわゆる「アクティブなドライビングフィール」ではなく、衝撃吸収素材にキャビン全体が包まれたようなマットな乗り味に、フラットな走りがそつなく出来るくらいの減衰感を加味したサスを備えた「高性能GTカー」が到達目標なんだと思います。しかし新設計シャシーを使っているはずのISやGSでも80km/hくらいではやくもバタバタとしはじめて、あっさりとトヨタの素性が見えてしまいます(揺すられ感に幻滅・・・)。そもそも今やレクサスが目指すような気の利いたGTカーをマジメに作ろうとするドイツブランドは存在しません。
セルシオもレクサスSCも「ドイツ車的でない」から日本では絶対に成功しない。・・・だからレクサスにはロールスロイス・ファントムのような強烈な存在感も、フェラーリ・カルフォルニアTのような見栄え重視な設計も不要なのだと、経営陣が割り切っているのだとしたら、もはやそうなっているかもしれませんが、レクサスはSUV頼みの「ジリ貧プレミアム」として消費されていくことになるんじゃないですか?
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↓V8自然吸気は確かにAMGとはひと味違うはずですけど・・・馬力にこだわることでドイツ車好きなオッサン連中に媚びてますね。
1989年当時にトヨタから発売されたセダンは他にクラウンやコロナがあります。どちらもセルシオに似ている部分こそありますが、プロポーションにおいて決定的な差をつけられていました。「国民車」(カローラ)よりもワンクラス上の「ハイソカー」になるコロナやクラウン(この2台にも幾分の差はありますけど)から見ても、さらにそれを大きく越える図抜けた存在だったのがセルシオでした。この「構図」から見ると、セルシオの後継に当たる現在のレクサスLSにはそれだけのステータスがあるのかな?と街でLSを見かける度にふと疑問に思ったりします。セルシオの良さが引き継がれていない!とは言い切れませんけども、「なぜトヨタは稀代の名車が誇った伝統を侮るのか?」というやり場のない苛立ちがふと沸きおこります。
日本にレクサスが展開された2005年にトヨタの副社長に就任し、2009年から社長を務める豊田章男氏は株主総会などでしばしば「魅力あるクルマ作り」「クルマ好きが好きになるクルマ」について言及しています。従来のトヨタが歩んできた路線の変更・多様化を打ち出していて、実際にトヨタやレクサスから発売される新型車には社長が掲げるスローガンがしっかりと息づいていると思います。「ファミリー向けワンボックス」「団塊世代向けスポーツカー」「富裕層向けSUV」などなど確かなマーケットリサーチ能力を発揮しつつ、台数が見込めるジャンルに次々と「バリュー」なクルマを投下し続けています。
多くのビジネス書では一般的にトヨタが圧倒的に強くなったのは3代目の奥田碩社長が就任した1995年からだとされています。その改革自体はエコカー戦略を中心とした「圧倒的な強さ」と趣味性の高いクルマの切り捨てによる「クルマ好きからの批判」が改革の裏表になっていたなどと、ややシニカルに描かれることが多いようです。1995年当時はというと、冷戦終結によるバブル崩壊に巻き込まれた日本メーカーは突如として苦境に陥り、どこまでも現実的な改革を即座に打ち出したトヨタとホンダ以外は奈落の底へと落ちていくしかなかったわけですから、トヨタにおける「奥田改革」は自動車産業の歴史に燦々と輝く偉業であることは間違いないです。
この改革から20年が経過して、自動車ユーザーの高齢化・富裕化による嗜好の変化を織り込んだマーケティングによって現在のラインナップが形成されています。これらを「豊田章男改革のクルマ」と称するとしましょう。初代セルシオを生んだ「バブル期トヨタ」、ハイブリッドの最前線を歩んだ「奥田改革」、そしてクルマ好きへの訴求をさかんにアピールする「豊田章男改革」の3世代のトヨタ車が日本中で見られますが、どの世代のクルマに一番感情移入できますか?(アツくなれますか?)
開発費が青天井だった「バブル期トヨタ」ではセルシオだけでなくソアラ、スープラなど「スペシャルティ」という言葉がそのまま似合うクルマがいくつもありました。しかし2016年にもなってわざわざこれら昔の排ガス基準のクルマを走らせるのには、かなりの後ろめたさがありますから、どれだけ中古車価格がお手頃であっても手を出そうとは思わないです。この時代のトヨタが当たり前のように極めていた「スペシャルティ」な装いをそのまま受け継ぐようなクルマが新しく出てきてほしいとは思いますが・・・。
「バブル期」の日本メーカーは、「フェラーリを越えた日本のスーパーカー」「ポルシェより速い日本のGTカー」「メルセデスより優れた日本の高級車」といった感じで、輸入車ブランドを完全に下に見るくらいの不遜な態度がプンプンしていましたし、実際にNSXもスカイラインGT-Rもセルシオもそんな尊大な言い分に相応しい実力がありました。「もうバブルではないからそんなクルマは簡単には作れない!」とは言われていますが、その頃の日本車は着実に海外市場に楔を打ち込み、高い評価を得てきたおかげで、「2代目NSX」も「R35GT-R」も「レクサスLS」も世界水準のハイエンドカーとして開発が続いています。
1989年に550万円だったセルシオは、周囲のクルマが小さかったこともあって所有による満足度は価格設定も含めて非常に高かったと思います。一方で900万円する現行のレクサスLSは大きくなった周囲のクルマ(GS、クラウン、フーガ、レジェンド)と、明確な線引きができない「上級セダン」に落ち着いてしまいました。確かにトヨタ伝統の世界一静かなV8エンジンはさらに洗練され、内装はさらに200万円出せばオーダーメイドも可能です1500万円?くらいで、ザガート(ミラノの名門カスタマイザー)に3億円くらい払って手に入れる特注のラピードやクワトロポルテに引けをとらないワンオフの高級セダンが作れるのは素晴らしいと思います。
しかしですよ・・・なんだかな。例外無く全ての欧州ハイエンド車を越えて行こうとした、「バブル期」の強烈にふてぶてしい日本車が放ったアイデンティティと比べると、現在の「レクサスLS」は欧州車と同等の快適性をいくらかリーズナブルな価格で提供するといった「夢の無い」戦略に支配されています。メルセデスやマセラティがやっていることはしっかり押えるけど、やっていないことはレクサスもやりません。「じゃあレクサスLSの個性って何? ・・・それは信頼性です」と言うしかない残念なスタンスです。もちろんこれがトヨタの強みですからそれを否定するつもりはないですけど、セルシオが当時に体現した「究極」で「ブレイクスルー」なスピリッツをこのクルマから直接感じとることはできません。
トヨタの高級車作りが今なお進化を遂げているのは間違いないのでしょうけども、そのステージとなっている「レクサス」が目指しているものって一体何なのでしょうか? 豊田章男社長がどれだけ「クルマの魅力を発信する!」とアピールしたところで、言葉が悪いですけど、レクサスの最新のクルマ作りに納得しているのは彼らがターゲットにしている50歳から上の世代だけなのでは・・・。ブランド全体を見渡しても、とりあえず「ドイツ車らしく」作ってひたすらに媚びる。じじいばかりの評論家連中は一定の評価をしてくれるでしょうし、短期的にはアベノミクスでウハウハなオッサン世代に受け入れられて結果は出るでしょう。しかしそれより下の世代にはピンと来ない・・・。
セルシオが築いた遺産の上にあぐらをかいてきたレクサス。セルシオには全てを納得させるだけの「説得力」がありましたから、そこに注ぎ込まれた技術力がそのままレクサスのブランド基盤になりました。しかし豊田章男社長の旗振りで改革されている現行のレクサスラインナップは、これからのブランド力をさらに高めていくだけの発信力・推進力は「ない」のではないかと思います。レクサスは新たに「GS-F」という高性能セダンを発表しましたが、メルセデスAMGのコンセプトを取り入れることが、レクサスのブランド作りにどれだけ貢献するか?は未知数ですし、AMGではなくレクサスFを選ぶ必然性も乏しいです。
レクサスにはもっと望まれるべきモデルがあるように思います。ひと昔前の瀕死の状態にあったフェラーリブランドを復活させた大ヒット車「カリフォルニア」のコンセプトの元となったのは、間違いなく電動ハードトップを備えた「レクサスSC」ですが、なぜこのクルマを廃止してしまったのでしょうか? このクルマを開発し続けていれば、レクサスのブランドイメージは今とはひと味違ったものになっていたはずです(レクサスIS-Cも廃止)。いまや着脱可能なハードトップを備えた「スペシャルティ」「スポーツカー」は、911のハイエンドボディタイプとなる「タルガ」や、C7コルベットなどなど「趣味のクルマ」にとって大きな魅力になっています。
セルシオからレクサスSC(ソアラ)へと話が流れましたが、トヨタ&レクサスはなぜ自らの輝かしい歴史を築いてきたモデルに背を向けて、ドイツブランドの亜流のようなクルマを作るのでしょうか? 「Fスポ」というグレード設定がどこから来ているのか言うまでもないですが、このグレードを試してみると、なんだか良くわからない気分になります。ハンドル切ってもアクセル踏んでもなんか「遠い」・・・静音性が高いせいかバーチャルなコクピットでゲームしている感覚に襲われます。
レクサスの意図としては、インフォメーション過多でいわゆる「アクティブなドライビングフィール」ではなく、衝撃吸収素材にキャビン全体が包まれたようなマットな乗り味に、フラットな走りがそつなく出来るくらいの減衰感を加味したサスを備えた「高性能GTカー」が到達目標なんだと思います。しかし新設計シャシーを使っているはずのISやGSでも80km/hくらいではやくもバタバタとしはじめて、あっさりとトヨタの素性が見えてしまいます(揺すられ感に幻滅・・・)。そもそも今やレクサスが目指すような気の利いたGTカーをマジメに作ろうとするドイツブランドは存在しません。
セルシオもレクサスSCも「ドイツ車的でない」から日本では絶対に成功しない。・・・だからレクサスにはロールスロイス・ファントムのような強烈な存在感も、フェラーリ・カルフォルニアTのような見栄え重視な設計も不要なのだと、経営陣が割り切っているのだとしたら、もはやそうなっているかもしれませんが、レクサスはSUV頼みの「ジリ貧プレミアム」として消費されていくことになるんじゃないですか?
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