自動車雑誌の記事なんてデタラメだらけ。そんなことはよくわかっているのだけど、2/26発売の某雑誌の記事を見て「あらまー」とぶったまげてしまった。井元康一郎というライターが「日本市場にもダウンサイジング過給の時代が!」という記事を書いていた。そんなわけないだろとか思いつつもとりあえず読んだ。なんだかいろいろ嘘くさい部分がありつつもそこまでメチャクチャではなかった。けど根本的に記事のスタート地点が間違っているように思った。
そもそも日本車の主流であるHVが自然吸気(NA)より効率的であることは、中学生でも理解できる話だけども、欧州に多いターボが同様に確実に効率的であるなんて専門家でも実証できない。日本車に多いCVTはエンジンの熱効率が一番良いところに自動的に回転数を合わせる機能が内蔵されている。よって同じエンジンをいくら過給したところで、これを超える効率を生み出すことは簡単ではないはずだ。「常識」という言葉は好きではないが、ある程度の「前提」と思われていたことがまるで逆のものとして語るのが、日本の腐ったモータージャーナリスト達だ。
地球上の大気が2気圧だったらエンジンの効率が上がるのは事実だが、1気圧の世界の中にエネルギーを使って無理矢理2気圧の空間を作って、それで従来よりも効率の良いものが造れるという説明を意図的にするジャーナリストやディーラーがいるようだ。しかし現状のターボエンジンはそういう理想的な環境で駆動してはおらず、最大トルクを低回転で発生するようにしているに過ぎない。そしてここが肝だけども、低回転で最大トルクを発生する状況は、実は一般的なエンジンの熱効率における理想的な場所とはかなりのズレがあるのだ。よってこれらの機構が燃費にとって好影響はもたらさない。
VWゴルフの1.4Lターボの実測燃費は相当に良好だ。しかし良好すぎて1.2Lターボを超えてしまっていることが、ターボエンジンへの懐疑を逆に増幅させてくれる。なぜ逆転現象が起きてしまったのか?それは1.4Lターボに新たに追加された気筒休止システムの恩恵が大きいからだ。つまり1.4Lターボのゴルフはトヨタ・プリウスに対抗する為の非常手段として、日本の軽自動車並みの0.7Lターボで航続することで燃費を無理矢理伸ばしている。
ちなみにVWの1.2Lターボについてはその構造に疑問がある。このエンジンは欧州車らしく4気筒を保持したままダウンサイジングされている。1気筒あたりの理想的な排気量は400~600ccと言われているので、4気筒に固執するならば1.6Lターボこそが正しい判断だと言える。4気筒で1.2Lターボというのは、シリンダーを極限まで小さくすることで、ターボラグを減らす効果が見込めるのは確かだが、過給による効果も限定的になってしまう。
日本車に比べ車重のかさむ欧州車は、1.6LのNAを積む日本車と同等の性能を発揮するために1.6Lターボという選択はあり得ると思う。しかしそれでも現実問題として、欧州の1.6Lターボが日本の2.0LのNA+CVTを組み合わせたユニットに燃費面で優勢になるという認識はとうていできない。そして2.0LのNA+トルコンATを積んだ日本車よりもエンジンそのもののおかげで運転が楽しくなるということはない。
この井元というライターは何を血迷ったか、今後は「ターボ後進国」日本でもどんどん普及していくだろうという意味不明な所見を述べている。果たして本気でこんなポンコツターボが日本のHVを押しのけて普及するとでも思っているのか? そもそも日本は「ターボ後進国」ではない。ターボチャージャーの世界シェアは80%が三菱とIHIのものだし、スーパーチャージャーに関しても日系部品メーカーの独壇場だ。ジャガーだって日本製を使っている。
もし彼の主張が正しいとしたら、日本のユーザーのほとんどがひと昔前まで悪評があったトヨタTHSⅡのプリウスの乗り味を完全にボイコットするならという条件付きだ。しかし日本市場で販売上位を占める車種は軽自動車ではなくHV車ばかりなのだ。輸入車ユーザーはこの状況を揶揄するようだが、VWゴルフも中期的なビジョンとしてPHVでの展開を第一に考えていると発表している。プリウスの乗り味と高速燃費に閉口したと言われる欧州市場もHVの研究が進み、乗り味や高速燃費の改善は容易だと判断したわけだ。
さてこの井元さんのようなジャーナリストを黙らせるのが、今年の末に発売が噂される新型プリウスの役目だ。燃費を追求するクルマとしてアクアとカローラを下のグレードに持つようになって、プリウスへの要求は大きく変わりつつある。より高級感ある内外装と乗り味の両面をトヨタは発表のギリギリまで追求するのだろう。レクサスCTやアクセラHVの実績ですでにTHSⅡの乗り味は相当まで改良が可能だということは証明されている。あとは革新的と言わせるだけの新デザインか?
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