日産ディーラーの前を通る度に、「V37スカイライン」と「F30BMW3シリーズ」はやっぱり何度見ても「どうしようもないほど」に似ているなあ・・・と思います。500万円クラスのクルマ同士が縁もゆかりもないブランドのクルマと似てしまうというのは、かつても何度となく起こってきましたが、日本とドイツを代表するモデル同士が個々まで被ってしまうとは・・・。もう少しどうにかならなかったのでしょうか。
事の起こりというか、スカイラインのデザインを見て最初に感じたのは、予想通りの進化でありつつも、かなり根本的なところで予想を裏切られた!というなんがか複雑想いでした。2014年に登場するプライベートサルーンにしてはあまりにも素っ惚けていて、名前に似合わず「なんて真面目なデザインなんだ!」と・・・。今考えるとV36スカイラインのデザインってのは不真面目そのもので、ひたすらに「モテたい」オッサンの欲望を叶えるようなギラギラでゴージャスなデザインに特徴がありました。別の表現をするとハゲでデブという日本のオッサンが抱えるコンプレックスさえも「セクシー」に変えてしまうような「猥雑さ」が備わっていました。
V37でも当然に先代に引き続いての「セクシー路線」が踏襲されるものと思っていました。バブル期のトヨタソアラが最強の「ナンパ車」として名を馳せたそうですが、そのニーズをちゃっかりと取込んでいたのが、V36の特にクーペだったと思います。トヨタもソアラの栄光を奪還するために、大胆にグリルデザインを変更したクラウンアスリートで新たな「ナンパ車」を目指したようです。実際にトヨタの狙いはかなり上手くいっていて、LEDを配して豪華にヘッドライトを輝かせるクラウンは夜の街ではその存在感を数倍に増しているように感じます。
日産としてはクラウンアスリートと「ナンパ車」の覇権を争うモデルにフーガを任命したようで、スカイラインには「硬派」というか「コンサバ」というべきか、それとも「童貞的」というべきか・・・まあそういう趣向を好む人々の為の「理性的なクルマ」としての成長を選んだようです。「ナンパ車」のようなデザインに特別な機能性を持たせることを嫌う「ピュアなクルマ好き」にウケるようなデザインは、大抵はスバル的なデザインに収束していったり、または世界一の真面目ブランドのBMWのデザインにどんどんと接近していきます。「世界3大マジメブランド」であるスバル・ホンダ・BMW (次点:ボルボ)を混ぜたようなデザインがV37スカイラインに見えませんか?
「マジメブランド群」のデザインはピュアな愛好家達の間で高い評価を受けているかもしれませんが、その一方で3BOX車のトレンドは変化していて、アテンザやメルセデスCLAといった比較的廉価なモデルがサイドをうねらせて「魅せる」時代に突入しています。街中で見かけるBMW(E90、F30)の「ぺったんこ」な側面はなんとも古めかしくて、BMWの先進的なブランドイメージとの乖離を感じます。E90の成功に気を良くしてプラットフォームを変えた以外に、特にデザイン面での革新性を打ち出せなかったF30BMW3シリーズが時代に呑まれたといえばそれまでなのかもしれません。
しかしV37スカイラインはそんな孤立無縁のF30を思い起こさせる、古めかしいサイドデザインを「あえて」かどうか分りませんが、それなりの「意図」で持ち込んできました。スカイラインと3シリーズのデザイン・・・「ダサい」と切り捨てればそれまでなのですが、そう断定できるほどにセダンデザインに力強い決定的なトレンドが作られているわけでもなく、各ブランドが散発的にFMCやフェイスリフトを行っているに過ぎない「過疎」化したセダンの現実では「流行廃り」とかドヤ顔で言ってもいくらか虚しいのも確かです。アテンザやレクサスISが必死に「ネクストデザイン」を模索していますが、伝統でコンサバこそがセダンデザインという解釈だってあるでしょう。
V37スカイラインはなぜ?BMWの「クラシカル」なセダンデザインに接近したのか?これは開発者にしか分らないことですが、高級感あるシルバーのボディカラーを前面に打ち出して、V6エンジンを積んだスカイラインやフーガが発売されるようになって10年ほどが経ちました。総括すると、やはり売れなきゃいけないというプレッシャーもあったでしょうが、「V35、V36スカイライン」そして「初代、2代目フーガ」の合計4台はいずれも「ユーザーを掴まえにいった」デザインになりました。
デザイン素人の私が言うのも恐縮ですが、日産のこの4台のセダンに比べて、メルセデスやBMWのライバルセダンは、やや「ぶっきらぼう」に見えます。日本車と輸入車のテイストの違いもあるでしょうが、それ以上に日産のデザインは日本のサラリーマンの野心に火をつけることを意図していて、上手くいったとは言い難いですが「セレブ」や「権力の象徴」のようなイメージをレクサスよりも上手く掴んでいる節があります。日産によって掻き立てられた視点を持ってメルセデスSやBMW7を振り返ってみると、「あれ、こんなに大人しかったっけ?」と拍子抜けするくらいです。
しかし日産のような「バブリー」なイメージに寄り添ったデザインは残念ながら普遍性に乏しく、「風化」が早いように思います。かつて「丸目のEクラス」は多くの人から高級車の代名詞として認識されましたが、今見ると当時の面影はなく、このメルセデスのデザインを「傑作」と賞する人もほとんどいないでしょう。日産のデザイナーもこういった先例に多くを学び、日産単独の設計/製造としては最後になるかもしれないスカイラインが「有終の美」を飾るのに相応しいデザインを模索したのだろうと思います。「過剰な演出」や「機能性を失った華美」を徹底的に排除するという手法を突き詰めて辿り着いた結論が・・・予想外に「BMW」のデザインに近似するものだったのだと思います(いままでBMWデザインの美点に気がつかなくて恐縮です)。
いよいよターボも設定されて、184psの「320i」、211psの「200GT-t」、245psの「328i」と見事に3グレードが並んで、「だからなんだ?」という気もしないでもないですが、いざ2Lターボが出てみると、スカイラインと3シリーズの関係がなんだか、かつての「スカイラインvsマークⅡ」のような一般人からしてみたら何のことだか分らない、「接近戦」が再び始まったようですね。
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