2014年6月26日木曜日

レヴォーグ を誤解してました・・・

  なんだかんだでやっと納車が始まったらしいスバル・レヴォーグですが、予定日のズレ込みが深刻で、車検切れでクルマが無くなってしまう人とか結構いるみたいですね。ハスラーもヴェゼルも新型車種として発売してみたら、ドカーンとオーダーが殺到してしまったようで、いくらなんでも計画生産が基本の量販車ですから、とても捌ききれないのはよく分ります。しかしレヴォーグは正月開けから予約を獲っているわけです。試乗もせずにオーダーした人々のスバルへの絶対的な信頼にあぐらをかいて、半年も準備期間があっても平気で遅れるなんて許されんのか?という気がしますが。納車待ち期間が長期化することが「人気のバロメーター」とか考えてるといずれ足元すくわれますよ。

  「スバルの新型車」というだけで自動車メディアというのは、とても寛容で例えそのデザインが言語道断レベルであっても表立って批判することは業界のタブーらしい。「スバル」「BMW」「メルセデス」この3大ブランドだけには、自動車ライターは絶対に逆らってはいけない。なぜならこれらのブランドを愛する人の割合が自動車雑誌を支える愛読者に多いから。特にヤバいのがスバルで、もしスバル車をボロクソに批判しようものなら、「スバリスト」のネットワーク内で瞬く間に広まって、編集部には抗議が殺到し、担当ライターは最悪の場合「引退」を余儀なくされます。

  なので、昨年末から大々的に取り上げられてきたレヴォーグの批評はどれも「?」なものばかりで、サーキットで試乗したジャーナリストの皆様のコメントも全く参考になりません。「基本がしっかりしていて、全速度域でまんべんなくパワーが出せる」とか言われても、スバルの300万円もするクルマなんだからそれくらい当たり前だろ!とツッコミたくなる。知りたいのは燃費が伸びないことが分り切っている、レギュラー仕様の1.6Lターボの仕上がりはどうなのか?という1点です。2Lターボはもうスポーツカーそのものだから、細かいことは気にしないけど、1.6LターボがBMWやメルセデスのような「しょっぱくて貧乏くさい」エンジンとは一線を画した存在になっているのか?が最大の焦点です。

  そもそもスバルが国内専用車に1.6Lターボを載せてくるという、やや「いかがわしい」行為に不信感がありました。一体何がしたいのか?実用性を高めるならば自社開発のHVを使えばいいのではないか? 統計などは特にないですが、かなりの数のレビューを見た限りでは、「ユーザー満足度」がやや低いのではないかと思われるのが、ブランドを問わずこの「1.6Lターボ」というタイプのエンジンのようです。もちろん文句を言っているユーザーの多くはエンジンの絶対的性能を過信して購入しているタイプの人が多いのだと思います。2.4L直4NAよりも燃費が良いわけでもなく、気持ちがよいわけでもなく、軽いわけでもない・・・ただうるさいだけ。

  なんでこんなエンジンをメーカーは使うんでしょうか?それはターボの有無で中型車と小型車の両方に使い回しができるからです。あとはちょっとスポーティな印象をユーザーが勝手に持つために、売りやすいというのもあるのでしょうか。スバルもそんなトレンドでレヴォーグのベースグレードを作ってしまった?という穿った見方をしていました。これを皮切りにレガシィB4もインプレッサもこのエンジンで済ませてしまうんじゃないだろうか? 新型Cクラスが日本での最底辺グレードにいよいよAクラス用の1.6Lターボを使うみたいですが、こんなエンジンで400万円以上も払う人が本当にいるのでしょうか・・・。

  しかし先日、コンビニの前から出て行くトラックが車線に入って流れに乗る様子を見かけて、スバルがレヴォーグに込めた真の狙いが少し分りました。ワゴン専用車のレヴォーグにとって、重要なポイントは荷室の積載量だったりするわけですが、もしこのクルマをHVにしてしまったら、このスペースが大きく制限されてしまうわけです。よって荷室の容量を確保するためにも、ガソリンエンジンの選択は妥当です。そしてその広い荷室に重量のある積載物を載せたときに、トラクションが確保しやすいAWDを全グレードに採用しつつ、重くなったクルマでも初動時に低速トルクを確保できることで、動きがスムーズになるガソリンターボを全グレードに使うのもまた理に適っているわけです。

  さらにCVTがクロスミッションといって、加速重視のギア配分がされているので、重いクルマでもスムーズに流れに乗るための工夫が見られます。スバルが設定したコンセプトはとても整合性があり、全ての機能が同じ方向を向いていることに気がついて、これまで散々にディスって「すみません」という気分になりました。自動車雑誌のせいにするわけではないですが、なぜメディアは「スポーティ」だとか「ダウンサイジング」だとか本質からズレたことばかりを宣伝しているのでしょうか? これではメディアによって勘違いをして、レヴォーグを買う人が続出し、「気持ちよく走れない」とか「燃費が良くない」とか、まるでBMW116i/120iやメルセデスA180/CLA180のような不満が噴出するのは目に見えてますが・・・。1.6Lターボエンジンの本質は「トラック/ワゴン用」の商用車向けエンジン!とは口が裂けても言えないことではありますが。

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2014年6月1日日曜日

スカイライン・クロスオーバー 今の日産を体現しているかも・・・

  特に不祥事があったわけでもないのに日産への嵐のような批判が渦巻いています。折しも日産はスカイライン、ティアナ、エクストレイルの3車種を立て続けに日本市場に投入したタイミングで、しかも3車種ともに世界中のメディアで大絶賛されているというのに、本国であるはずの日本でなぜバッシングを受けるのか? プロのライターの評論から素人のつぶやきまで、さまざまな形での「ブーイング」が聞こえてきますが、とりあえず読んでみると、その中の90%以上は日本市場で売られているクルマの現在地点がよく解っていないという「誤解」が原因という印象です。

  日産の国内販売台数は、かつての「指定席」2位から現在では5位へと後退しています。これを根拠に「日産のクルマ作りは間違っている!」と断じる専門家もいますが、クルマへの需要が予想以上の早さで軽自動車へシフトしている「構造の変化」が大きいように思います。日産を追い越していったメーカーが普通車に専従するスバルやマツダならば日産のクルマ作りに問題があるでしょうけど、実際はホンダ、ダイハツ、スズキの「軽自動車3強」が市場動向の追い風を受けて伸びた結果、日産の上に出たに過ぎません。そして現在では日産は三菱と提携して軽自動車ラインナップを増やし始めて軌道にのりつつあるので、このまま順調に伸びれば、最終的には2位へと戻っていくのも時間の問題でしょう。

  日産がこのまま軽自動車などのラインナップを増やし、国内2位へ返り咲いたところで、他のメーカーの経営がその分苦しくなるだけじゃないかと思います。日産が軽に力を入れれば、スズキ、ダイハツ、ホンダが圧迫され、かつての「シルビア」のような小型スペシャルティカーを作れば、マツダやスバルの息の根を止めてしまうかもしれません。もちろん適度の競争原理が働いてこと、良いクルマ作りが維持されるわけですが、高齢化と都市部偏住によりクルマユーザーの減少に歯止めがかからない国内市場向けに、日産が本気を出してしまったら、他社にとっては目も当てられない地獄へと堕ちていくしかないでしょう。

  日本の自動車業界は、マツダやスバルといったグローバルでも10番手以下の中堅メーカーが、世界最先端の技術を持つという「競争力」の高さが特徴です。各メーカーが抱える系列のサプライヤーは国際的な活躍を見せ、ボルボが久々に作った自前のエンジンの開発を請け負ったりしています。ジャガーのオリジナルのパワーユニットに採用されている「スーパーチャージャー」も日本メーカーが手掛けています。そんな「日本ギルド」を束ねる日産の技術がひとたび動員されれば、それこそポルシェやBMWといった超一流のスポーツブランドだって楽々と撃破することができてしまいます。ホンダ、スバル、マツダの3社でも超一流の仕事はできますが、日産ならば「確実に仕留める」仕事ができます。

  一般に日産がドイツ2社(ポルシェ・BMW)に牙をむいたクルマと言えば、GT-Rやスカイラインセダン/クーペが有名ですが、スカイラインにはSUVモデルの「スカイライン・クロスオーバー」というモデルがあって、これもまた「打倒!ポルシェ!BMW!」をハッキリと意識して設計されています。残念ながら日本ではとてもマイナーな存在で、「カイエン」や「BMW X5/6」に対抗するモデルを日産が発売しているということをそもそも知らない人も多いです。そもそもカイエンの3.6Lを超える3.7LのV6を開発した上で作ったクルマで、日産がドイツ車を超えるボディ剛性を与えた、スカイラインのプラットフォームを使っているわけですから、仕上がりも素晴らしくアメリカでは非常に人気があります。

  ジュークやキャッシュカイ(デュアリス)で欧州のSUVシーンを先導した日産のクオリティは、日本以外では広く知れ渡っていて、ポルシェやBMWごときが小手先の見よう見まねで作ったSUVがいくら高価でも、日産を大きく突き放す品質に達するなんて誰も思っていません。日産が2000年代後半に完成させたSUVライン「ジューク」「キャッシュカイ・エクストレイル」「スカイラインクロスオーバー」が世界市場で残した実績を考えると、このメーカーは独自の「ブルー・オーシャン」を見つけ出し、他社が羨むような成功を手にしています。

  日本の日産ファンが「神格化」している第二世代のスカイラインGT-R(R32〜34)は、なんだかんだいっても国内専用車でいた期間が非常に長いクルマでした。1989年の段階で600psに耐えるという量販車としては異次元の性能にはもちろん敬意を払いますが、その伝説をもとに現在のV35以降からの新しい設計のスカイラインを批判するのには賛同しかねます。V35以降のスカイラインは常に「敵」を求めて世界を彷徨い、狙ったライバルを確実に撃破するための「戦略車」となりました。日産の「技術」「バランス感覚」「適応力」の全てが世界最高水準であることを示す「広告塔」の役割は十二分に発揮してきたと言えます。

  そんな現行世代のスカイラインの活躍を伝えることを一切放棄して、ライバルのドイツ車ばかりを必死で祭り上げてきた日本の自動車ジャーナリズムが、実は「空虚」で「形骸化」したものだったということが、ネットメディアによって明らかにされつつあります。日本のジャーナリズムの常識では、エクストレイルが「9」点(10点満点)でメルセデスの新型Cクラスが「6」点なんていう評価は絶対にあり得ないことですが、イギリス最大手のメディアが公表している結果です。欧州ではとっくに「ガソリンターボは時代遅れ」と報じているのに、日本では「日本メーカーは早くターボ化すべき」といった愚かなコメントをするジャーナリストが多数派だったりするのです・・・。もう「雑誌」や「本」の評価なんてまったく信用できないですから、日産ディーラーでスカイライン・ティアナ・エクストレイルを乗り比べて気に入ったものを買うのが一番賢い「クルマ選び」だと思うんですよね。


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