2014年12月26日金曜日

「マツダ革命」はまだ続くのか? 「マツダとは何か」を考えてみました!

  自動車評論家によるマツダの強烈な支持が続いています。「カッコ良くて」「質感が高くて」「走りがまとも」と見事に三拍子揃った「総合力」で高価格な輸入車にも十分に対抗できるといった評価が主流のようです。今までは「輸入車>日本車」という大前提をもって誌面を構成して来た自動車メディアですが、この「マツダショック」は少なからず波紋を呼んでいるようで、他ブランドとの兼ね合いに苦慮した誌面作りがチラホラと見られます。アテンザを同クラスの輸入車セダンと単純に比較して良いのか?とか、もはや比較相手は完全に輸入車になってしまったアクセラとデミオをどのポジションで扱うか?などあれこれと迷いが見られます。これまでアルファロメオが!プジョーが!BMWが!スゴい!と散々に煽ってきたところで、気がついたらマツダのクルマ作りがスゴかった!ではとても笑えないですから、まあこの対応も仕方のないことかもしれません。

  最も一般的な評論家の「マツダ対応」で見られるのが、帳尻合わせのように「スカイアクティブ」車に対する徹底した「粗探し」をすることです。特に日本COTYを受賞したデミオに対する下世話すぎるほどの「引っ掻きまわし」が少々気になります。別の意見の人もいるかもしれないですが、デミオの売れ線グレードとなった「XD」は、ディーゼルにもかかわらずポロTSIとルーテシアGTの2台を上回る見事な静粛性を確保しているとんでもない傑物です。ちなみにガソリンモデルならばさらに静かです。XDの実質燃費はルーテシアやポロを軽く上回っていて、某雑誌のデータによるとデミオXD(24.6km/L)ポロTSI(18.4km/L) ルーテシアGT(13.3km/L)という数値が出ています。もちろん加速性能もタイム面では断然にデミオXDが優れています。VWとルノー(日産)は決して実力が無いメーカーではなく、むしろ技術力で世界のトップに君臨する「2大ジャイアント」といっていい存在です。そこに圧勝するマツダの実力は「革命」的といっていいほどです。

  それでもそんなデミオXDにもやはり突っ込みどころが散見されます。まず乗ってすぐに気になるのが、座面調節のレバーの剛性が明らかに足りない点です。現在同じようなマツダの手動レバーのクルマに乗っていますが、そんな不満は感じたことはなく、デミオのものはどうやら材質が違うようです。もう一つ決定的に気になる点がブレーキ性能の低さです。マツダ車(OEMを除く)はデミオとベリーサといった小型車以外では「後輪マルチリンク」「後輪ディスクブレーキ」を装備していることもあり、一般的に制動力は高い水準にあります。しかしこのデミオXDは「後輪ドラムブレーキ」に加え、マツダの「XD」全車に言えることですが、ディーゼルの加速特性に合わせたような緩やかな効きのブレーキになっているので、予想以上に伸びる制動距離には不安が付きまといます。ポロ、ルーテシアとの比較でも大きく負けています。

  多くのベテラン評論家はこの2点「シートレバーの剛性」と「ブレーキング」についてチクリと指摘することが多いです。確かにいざオーナーの立場ならばどちらも看過出来ない過誤であり、その指摘は非常に的を得ているわけですが、同じような事象はメルセデス、BMW、レクサスでもかなり多く見られることなので、本体価格100万円台のデミオにばかり目くじらを立てるのはちょっと腑に落ちません。メルセデス、BMW、レクサスについて重大な指摘をすることは確かに評論家として表舞台で活躍するにあたっては難しいことなのかもしれません。売れっ子と言われる人ほど、「やぶ蛇」な指摘はしないようです。

  蛇足ですが、「メルセデスAクラス」はアクセルペダルが柔らか過ぎて動き出した瞬間にNGでした。車内は狭さこそ感じにくいですが、音響はかなり酷い水準でスバルやマツダの方が圧倒的にいいです(ドイツ車のオーディオは基本はDIYしないとクソです・・・)。「BMW3シリーズ(F30)」はドアを開けた瞬間にNGでした。ドアが軽過ぎます!BMWに抱いていた憧れが、このクルマのせいで一瞬で崩れ去りました。まだまだBMWに夢見ている人はとろあえず6シリーズ以外は無視した方がいいかも・・・。「レクサスIS」はトヨタグループがあらゆる面で高い水準を追求したクルマですが、悪く言うと3シリーズの安っぽいドアの質感と、マークX的な(あまり感動的でない)操縦性が詰め込まれた「デジャブ感」がハンドルやペダルから伝わってきてシラケます。もっともこの3台にもデミオXDが持っているような「美点」もいくらでもありますが・・・。

  500〜600万円するプレミアムカーには目をつぶっているのに、200万円程度のデミオにはあれこれと痛い所を突いてきます。勝手な判断と言われるかもしれないですが、評論家がそれだけマツダに対して過敏になってきているのだと思います。マツダのクルマ作りへのスタンスは、それこそ「スカイアクティブ」の遥か前から変わっていないですし、2012年のCX5そして2014年のデミオと短いスパンで日本COTYを獲り、同時期にワールドCOTYでもノミネートの常連になりましたが、実は2004年頃からマツダはすでに欧州COTYの有力メーカーとして頭角を現しており、欧州ではその実力を十分に知られた「スポーツメーカー」でした。1990年代から熱心にアルファロメオやBMWを研究・熟成してきた成果が、現在のマツダ車のベースにはあります。

  マツダファンの私が言うと手前勝手に聞こえるかもしれませんが、マツダ車の素晴らしさにおいてもっとも感銘的なのは、クルマ作りにおいて「マツダの主体性」を強く感じるところです。最近では自動車メーカーがイニシアチブを取れない新車開発なるものが、世界中の巨大化したメーカーグループで起きていると言われています。トヨタだろうがVWだろうがヒュンダイだろうが、供給される部品の製造元は同じというケースも多々あります、部品メーカーが自社製品のシェアを上げる為に、メーカーの自動車開発に先立ちいろいろな提案を行い、メーカー側はそれを採用するかどうかの机上計算を行う「商社的」な仕事になってきている部分もあるようです。業界紙からの情報を鵜呑みにするのも考えものですが、大手メーカーの新型車に乗ってみるとそれを裏付けるような乗り味がすることが多いのも事実です(先入観でしょうか・・・)。

  スバルWRX・S4や日産スカイライン350GTといった各メーカーの「顔」的存在のモデルにおいても、どこか帳尻を合わせたような仕上がりに感じてしまいます。スペック面で欧州車に負けないものを揃えてこそいますが、その中身は万人ウケを目指した「上質さへの固執」とも受け取れるマイルドさが支配しています。そして同じように万人ウケの為のハイスペックだと言えます。この2台が悪いクルマとは決して思いませんが、「ハイスペックは諸刃の剣」なのだという現実を見せつけられるのは確かです。設計の最初から300psそして350psありきの設計をしてしまっては、ミッションに軽やかさを求めることは難しいですし、ハンドリングやサス&ダンパーの設定にも大きな制約が出てくるのではないかと思います。

  マツダ車はスペックに制約されていないから素晴らしい!という判断は安易かもしれませんが、アテンザに乗ってもデミオに乗ってもごくごく自然に「これいいな!」と感じる要素の多くは、適正なバランスに則った設計にあるように思います。これはマツダ車に限った話ではなく、スズキのスイフトスポーツに乗っても全く同じ美点を感じます。過不足なく立ち上がりどの速度域からもしなやかなハンドリングが炸裂し、多少無理な操作をしても電制装置が作動するのではなく(もちろんマツダもスズキもいろいろ使ってますが)、クルマそのもののバランスの良さを下敷きにしたシャシーの実力で補ってくれる走りを随所に感じます。

  一部の評論家によるとそういうクルマの作りは「古臭い」と表現されるようですが、レクサスIS350Fスポを操っている時にふと感じるハンドル・アクセル・ブレーキから発する「雑味」を「新しい」「良い」ものとして評価する気にはどうしてもなれません。これこそが肥大化した部品メーカーによる弊害だと思います。新機能を次々と開発し続けることが彼らの使命ですから、彼らにも言い分はあるのでしょうが、そんな「弊害」の影響が最小限に留まっていると思われる、マツダやスズキの「変わらないクルマ作り」が俄に評論家からも高い評価を受け出した・・・これこそが現在の「マツダ革命」の骨子なのだと思います。(スバルや日産への考察について少々適当なところがありますが、後日再び検証したいと思いますので、ご容赦ください。)


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2014年12月9日火曜日

レガシィB4とアテンザはレクサスを圧迫するか?

  近所を歩いていたら年配の女性が運転するプジョーRCZが目の前を通っていきました。アンバランスといったら失礼になりますが、ド派手なエクステリアとどこにでもいるような「おばあさん」の組み合わせには反射的に違和感を受けました。しかしこのプジョーRCZは日本の若者には全くと言っていいほど人気がありません。割高な車両価格はもちろんですが、その他にも若者がイメージするクルマ観とはいろいろな面で大きく乖離したクルマです。

  RCZは先代のプジョー308をベースに開発されたスペシャルティ・クーペですが、開発時期が欧州経済の低迷期と重なったせいか、エクステリア以外のほとんどの部分はベース車からの流用品で間に合わせています。バブル期以降のクルマしか見ていない若者の多くは、ブランドの上級モデルの内装は洗練されていて当たり前だと思っていますから、プジョーの先代までの慎ましい内装を見ると、「安っぽい」という印象すら受けかねないでしょう。カーメディアがさかんに煽る「高級感」とやらからは取り残されているのがRCZの立ち位置と言えます。しかし高度経済成長期から日本経済の発展を見て来た年配の方からしてみたら、クルマの進化の段階を懐かしく思える「いい感じ」のモデルになるのかもしれません。

  プレミアムブランドしか受け入れられなくなった「バブル世代」(60年代生まれ)と、プレミアムブランドにすら大して興味を持てなくなった「ジェネレーションY」(70年代後半〜80年代生まれ)と呼ばれる世代は、なんというかどちらもあまりクルマを楽しめていません。バブル世代は「メルセデス・BMW・アウディ」を購入することに疲れを感じ、Y世代はクルマを所有するハードルすら超えようとしなくなりました。一応Y世代の私もやはり「クルマはオワコン!」という同世代が持つ感情をヒシヒシと感じます。私の狭い了見で恐縮ですが、そんな鬱屈した日本市場でプジョーRCZのようなクルマを喜んでくれるのは、やはり高齢者だけなのかな?という気がします。

  先日スバルから新型レガシィB4が発売されました。このクルマはここ数年であれよあれよという間に北米で大人気のファミリーセダンになりました。いわゆるカムリやアコード路線のクルマです。この手の売れ方をすると本国・日本ではなぜか冷遇されるケースが多かったりするのですが、このレガシィB4も例に漏れないようで、早くも評論家のレビューから「文句言いたいけど自重」の空気をプンプン感じます。一体このクルマに何を期待しているんでしょうか!?まあいろいろ意見はあるとは思いますが・・・例えばスバルのトレードマークだった「ボクサーターボ」が廃止されたことに対する憤りなどがあるようです。

  しかしですね・・・、この新型レガシィB4の日本仕様はなかなかの意欲作ですよ!まずデザインを「やや地味だな・・・」という辺りに落とし込んでいるのがいいですね。今回のスバルは肩の力がしっかり抜けていることが伺えます。それでもしっかり押える所は押えています。目を引くのが全車パワーシートと前後シートヒーター標準装備です。もはや「レクサスISや3シリーズはハナから相手にしてません!狙うはEクラス・GS・フーガです!」と高らかに宣言しています。フーガは来年1月のマイナーチェンジで全車標準になりそうですが、レクサスGSではversionLにしか設定がないリアシートヒーターですよ!ISや3シリーズに至ってはオプションにすら設定がありません(DIY派は3シリに自ら施行するらしいですが・・・)。レガシィB4が狙う北米市場で、アメリカンラグジュアリーの雄として君臨するキャデラックCTSだって最上級グレードだけの特別装備です。ファミリーセダンにカテゴライズされるレガシィB4がしたたかに下剋上を仕掛けているわけです。

  このレガシィの動きにマツダは直ちに反応したようで、アテンザが1月にMCを迎えてLパケにオプションながらもリアシートヒーターを付けてくると報じられました。これはMCを待つことを選んだアテンザ購入予備軍の方々にはなかなかの朗報だと思います。レクサスISも来年のMC(大規模な年次改良)で追従してくるとは思いますが、現状ではIS350Fスポにフルエアロで総額760万円もするのに、ペラペラのドア、足踏みサイドブレーキ、リアシートヒーター不可と買う気が失せるポイントが出てきます。レガシィやアテンザ(MC後予定)の400万円そこそこの2台にあれこれと下剋上されてしまい、発売当初はかなり興奮しましたが今ではあまり良いイメージが持てなくなってしまいました。まだ発売してから1年半しか経っていないことを考えると、トヨタとレクサスがどれだけ慌てて作ったのかがなんとなく見えてしまいます。まあMCで追加してしまえばいいわけですが・・・。

  レクサスはRCみたいな派手なクルマで評論家に愛想振りまくのもいいですが、主力のISの総合力をもっともっと上げてほしいものです。結局クルマを買ってくれるのは高齢者だから、彼らが喜ぶような2ドアでスポーティで、内装はISのものを流用というトヨタの「鉄壁のマーケティング」に反論の余地は無いかもしれないですが、RC-Fなんて誰が900台も買ったんだろう?とふと気になったりします(もちろんイイ車ですけど!)。まさかトヨタグループのスバルの新型車によってレクサスの恥部が見えるようになるとは思いもよりませんでした。レガシィもアテンザもフーガも各メーカーの重役が使うクルマということで、自然とまともな装備が備わってくるようです。一方トヨタのエクゼクティブはISではなくGSに乗るのでしょうね・・・きっと。


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2014年11月18日火曜日

86とレクサスRC・・・トヨタにとって2ドアクーペとは一体なんなの?

  「珍車」というとちょっと小馬鹿にしたニュアンスがあるかもしれませんが、多くのメーカーが作ろうとは考えないタイプのクルマを「あえて」作るメーカーは素晴らしいと思います。最近のように自動車技術の画一化による自動車魅力の低下→クルマ離れが叫ばれる時代には、「珍車」をラインナップすることがそのメーカーの存在価値につながることもあるでしょう。トヨタが短いスパンで2ドア車を2つ出してきました。カーメディアの反応も割と好意的なようで、国産車ではかなり少なくなった2ドアクーペを「日本のユーザーのためにモリゾー社長がトップダウンで作った!」みたいな捉え方をされています。

  しかし・・・アルテッツァみたいな万能なセダンを求めていたはずの日本のユーザーの目先を巧妙に変えつつ、海外市場をがっつりと見据えて作っているんですよね。さすがはトヨタのマーケティング部門ですね。アメリカ市場で斜陽気味のマツダ・ロードスターやフェアレディZ、そしてメジャー路線に乗れていないCR-Zといったライバル車の弱点を徹底的にリサーチして、見事に「勝てるパッケージ」を見出したようです。2005年から北米で販売していたカローラサイズのFF2ドアクーペのサイオンtC(日本未発売)が2011年にFMCを行って2代目となり、新たに中国や中東へと販路を拡大しました。この時点ですでにトヨタは「86」や「レクサスRC」の開発を含む包括的な「グローバル2ドアクーペ基本戦略」が策定していたはずです。そして北米・中国・中東のラインナップ強化を狙って増やしたクルマにもかかわらず、「日本のユーザーのために」という小狡い演出をして日本でのイメージアップを図っているかのような印象を受けます。

  このトヨタの戦略に付き合わされたスバルは、「愛知のやり方はなんかズルいな・・・」と少々辟易したのかもしれません。単独で開発したレヴォーグはわざわざ本物の「国内専用モデル」であることに拘ったのかも・・・というのは考え過ぎでしょうか? それにしても86のデザインに宿る、日本のライトウエイトスポーツの文脈とは血縁関係に無いかのような一種独特の雰囲気はどうも気になります。従来の日本のスポーツカーはというと、ホンダS2000がマツダロードスターを意識し、ホンダCR-ZがS2000のフロントマスクを模していたりと、偉大なる先輩モデルに多かれ少なかれ敬意を持ってたりするものです。名前こそトヨタのかつての一般車のスポーツモデルをオマージュしていても、その影響はデザインには直接みられず、やはり「86」はトヨタの中の闇に閉ざされた計画から創り出されたモデルであることを物語っている気がします。

  ディーラーの営業マンはカタログの写真を使って、「トヨタ2000GT」と「トヨタ800(ヨタハチ)」をベースにしたという、86のデザインに関する経緯を盛んに仰ります。しかし日本車スポーツカーとはもっと柔和な表情で、みていてカワイイと思うものが多いですが、86のキャラクターはどうも「日本的」ではないです。デザインなんて人それぞれ受け取り方が違うのだから・・・という意見もあると思いますが、このクルマに関しては乗り味も今年の春に行われたMCを経てさらに日本車らしい繊細さが影を潜めている気がします。それほどパワフルなエンジンを積んでいるわけではないですが、アクセルを踏む度に後輪が豪快に地面を蹴り、ハンドリングは回頭性にこそ優れますが、かなり重めのステアリングとあって、全体的にとても大雑把なフィールです。まるでアメリカの荒野を自由に駆け回る!が当初からのコンセプトだったかのようです。ブラインドコーナー連発の日本の山岳林道では・・・どうもハマらない気がするのですが。

  「日本のクルマの実力を世界に知らしめる!」という意味でトヨタとスバルが共闘して、世界のマーケットに撃って出たことはもちろん大絶賛したいですし、見事に結果を残したことにも拍手したいです。同じ右ハンドルの国オーストラリアでは86は見事にスマッシュヒットしました。フェラーリやポルシェのような専用設計のスポーツカーを300万円程度で発売してしまうなんて、「日本車はやっぱり異次元にスゴい!」と大いに尊敬を集めたそうですが、そりゃオーストラリアの大平原を突っ走るには最高!といった乗り味のクルマですから大反響も当然の結果です。

  世界一なんでも器用にクルマ作りができるトヨタですから、アメリカ人やオーストリラリア人が小躍りして喜ぶクルマを作ることなんて朝飯前と言えます。もちろん日本人だって、アルファード/ヴェルファイアやハリアーなどのモデルに熱狂させられています。そんな器用な"総合メーカー"という名の「なんでも屋」にとって、「トヨタらしいクルマって何?」という個性の喪失に絶えず直面させられます。日本では「クラウン」かもしれませんが、世界では「ランクルのトヨタ」、多くの日本人にはそんなイメージはないと思います。カローラやカムリなどアメリカではいくつか尊敬を受けるモデルがありますが、メルセデスやBMWのようにグローバルカーとして欧州と北米にその存在を知らしめるモデルが無いことは、巨大メーカー・トヨタの最大のコンプレックスになっているようです。

  そんなトヨタにとって待望といえる「欧州・北米同時ブレイク」のモデルになったのが、この86といっていいかもしれません。メルセデスやBMWが商品性を意識してオープンや4ドアクーペといったモデルを乱発する中で、脇目もふらずに2ドアクーペに固執するストイックさにも、これまでのトヨタ車とは考え方が違うクルマだという意識を感じます。そして86発表から僅か2年という短いスパンで、今度はレクサスから「RC」という2ドアモデルが発表されました。このクルマにはまだ乗ったことがないのですが、「レクサスのイメージを変える!」というキャッチーなフレーズとともにカーメディアを賑わせています。簡単に普及する価格ではなく、大きな反響は起きないかもしれませんが、トヨタとレクサスの新たなクルマ文化と築いて行こうという決意が見られる一台のようです。

  経営感覚に優れるトヨタは、クラウンのようなマーケティングがしっかり確立したモデル以外は、「継続して作る」ということが無意味であり、全く会社の為にならないとばかりにあっさり切り捨てる勇気を持っています。そんなトヨタが正義とされて多くの日本車メーカーの間でもドイツメーカーのように「コンセプトを煮詰めて最上のクルマを作る」という発想は希薄になりました。クルマ好きにとってはトヨタのやり方は、必ずしも歓迎すべきものではなく、トヨタや日本メーカーのクルマ作りへの批判が、堂々と叫ばれるようになりました。そんなカーメディアの挑発にノったというわけではないでしょうが、86とRCの2台を立て続けに発表して見事に業界地図を塗り替えることに成功したようです。さてトヨタはこの2台を育て、どのブランドにも負けない「コンセプトの純化」をひたすらに追求するクルマ作りを継続できるのか?が注目です。


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↓レクサスは究極が好きですね。今後も期待!

 

2014年10月31日金曜日

ホンダ車の魅力・・・フィットとヴェゼル

  ホンダはほんの10年くらい前までは、誰もが認める万能型自動車メーカーで、ワクワクさせるクルマをたくさん作ってくれました。しかしNSX、S2000、シビックtypeRの生産が終了すると、いつしか自動車専門誌では突如として軽んじられる存在になり、フィットやヴェゼルが予想外に健闘してもカーメディアはホンダに対しては完全にシラケている様子です。ホンダはそれなりに売れてるけど、それは日本車ユーザーは一般的にセンスがないのでつまらないクルマを喜ぶからだ!・・・とでも言いたそうな「勘違いレビュー」が結構多いです。

  アコードやオデッセイでクルマのコンセプトを大きく変えるようなFMCがありましたが、トヨタのカムリHVやアルファード/ヴェルファイアの成功をコピーしたようなコンセプトに対し「ドイツメーカーではありえない浅ましい商業主義」と平気で言い放つライターもいるほどで、案の定どちらも人気はイマイチでした。フィット・ヴェゼルの相次ぐリコール騒ぎに加えて、先日も国交省による自動ブレーキの格付けで国内最低レベルと評価されたりするなど、なかなかブランドイメージを好転させるきっかけが見えてきません。

  確かに日本メーカーで随一の「高収益」体質であることから、コスト低減の行き過ぎが目に付いてユーザー側から難癖がつけられて仕方がない部分も確かにあります。しかしホンダの好業績は、「地産地消」をポリシーにしたストイックな現地生産主義に支えられているのであって、コスパそのものは日本市場で売られているクルマの中でもかなり高い部類に入ります。フィット、ヴェゼルといった小型車を中心に展開している姿勢がブランドイメージを多少歪める要素かもしれませんが、ユーザーが楽しく使えるクルマというホンダらしさは多くのクルマで完遂されています。それでもホンダのクルマに難癖をつけるユーザーは根本的にクルマのコンセプトが分っていないまま購入したケースが多いのではないかと思います。

  現在の日本市場におけるホンダの登録車で2枚看板となっているのが、フィットとヴェゼルです。この2台のどちらが自分に合っているか? 自動車雑誌が真面目クサく書いているような、「ハッチバック」と「SUV」という四角四面な判断基準では実際のところ納得できない人も多いのではないでしょうか。フィットと同クラスにプジョー208というフランス車があります。この208のミニマムで低重心なキャビンに納得できないという、主に女性ユーザーの為に開発されたのが、プジョー2008というクロスオーバーで、208と比べてだいぶキャビンが広く、運転時の視野も高く運転し易いという明確なコンセプトがウケて本国フランスでは大ヒットしているようです。このコンセプトを最初に成功させたと言われているのが日産でジュークで、この大ヒットに対抗するためにプジョーも2008を慌てて作ったようですが・・・。

  そんなライバルメーカーんの流れに乗り遅れずにホンダが作ったフィットのクロスオーバーがヴェゼルです。しかしベース車のフィットは、プジョー208のような欧州コンパクトカーとは一線を画す設計で、「高重心」「ショートノーズ」で「居住性に配慮されたキャビン」が持ち味の、MPV的なコンセプト(メルセデスBクラスなど)で世界中で存在感を示しています。ゆえにクロスオーバー化したところで、居住性にそれほど大きな変化は無いですし、乗り降りの容易さならばむしろフィットに分があるくらいです。どちらを選んでも使い勝手が良いので、どちらも良く売れているのですが、さてホンダはフィットとヴェゼルの”境目”として一体何を意図したのでしょうか?

  フィットに対してあれこれ不満を言う人がたまにいます。「なぜこのクルマが売れるのか良くわからない」などと言っている人の多くは、フィットの本当の魅力が見えていないのだと思います。フィットに特に満足しているユーザーの多くは、DIYのベース車としてのなかなか理想的なシェイプを評価しています。コンパクトカーでありながら、どこか1BOX車のようなスタイルで、ミニバンのDIYテイストも使える類希な汎用性を持っていて、自分だけのオリジナルな1台を作り上げるのにとても都合がよいベース車と言えます。DIYしない人にはフィットは向かないと言うつもりはありませんが、例えば新型デミオのように細部までマツダが作り込んでしまっているクルマとは、全く違った魅力があります。そして何よりヴィッツやデミオのような車高の低いコンパクトカーよりもファミリーカーとしての適正は高いです。

  このベース車フィットに対して、派生車のヴェゼルは・・・DIYの部分をホンダが代わりにやっておきましたよ!という企画なんだと思います。全面的に改めたエクステリアから、内装まで特にインパネ回りのデザインまですっかり変えてあります。グレードにもよりますが、フィットのマイルドなテイストのコクピットに納得できない層を黙らせるかのように、カーボン調のパネルやメッキパーツをふんだんに使い、まるでメルセデスかアウディを思わせる上質な色彩に仕上がっています。さらにカラーバリエーションもあってカスタマイズにも幅を持たせています。

  マツダ、日産、レクサスなどはメーカーのセンスをそのままユーザーに押し付けるスタイルですが、ホンダそしてスバルは、購入時にインテリアオプションとしてパネルパーツを多数用意して「個性的」なクルマを提案する姿勢を強めているようです。プレミアムブランドとは違って、パーツの価格もかなり手頃ですし、もちろん自作の方が安く上がりますが、手間を考えるとディーラーオプションで徹底的にやってもらうのも悪くないなと思います。フィットやヴェゼルは狙い通りの大ヒットになり、今後もさらにパーツの展開がし易い状況だと思うので、ホンダにはこのスタンスをさらに徹底したものにしてほしいです。そして自動車メディアにももっとフィットやヴェゼルの美点をしっかりと理解した上でこれを広くアピールできる記事を書け!と言いたいです。


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2014年10月24日金曜日

日本でもレクサスRC-Fを630万円で売ってほしい・・・

  レクサスが日本に上陸してまもなく10年です。ちょっと失礼な言い分かもしれませんが、当初のやたらと敷居の高いブランドコンセプトは次第に影を潜めてきたようで、必ずしもレクサスで買う必然性のないモデルもどんどんと増えてきた気がします。今ではスバルやマツダなんかよりもラインナップが豊富に揃っていて、とても左手団扇で客を選んではいられない台所事情が透けて見えてしまっています(ドイツの高級ブランドも同じようなものですが・・・)。

  日本メーカーでたった1つの世界的な高級車ブランドに成長したのですから、他の一般ブランドが絶対に作れないような悶絶させてくれるモデルがどんどん出て来ても良さそうですが、なんだかズッコケてしまうような"地味スペック"のクルマが多いのはやや残念ではあります。超高齢社会・日本ゆえの"特別すぎる"プレミアムブランド「ご隠居スペシャル」みたいなコンセプトに本気で取り組むとしたらそれはそれで面白いと思いますけども、レクサスのお膝元である日本の若者はどんどんクルマへの興味を失っているというのは悲しいことです。

  もちろんレクサスブランドの個々のクルマは非常に洗練されたものですが、もっとエゴ丸出しであれこれと議論を呼ぶような"問題"設計のクルマを作っても良い気がします。国沢さんや徳大寺さんに言いたい放題言わせてあげればいいと思います。彼らに安易に煽動されるほど若いユーザーはアホじゃないと思いますし・・・。CTにしてもISにしてもクラス最高レベルの上質さは間違いないですが、プリウスやクラウンと共通のパワーユニットを使って「仕立て直した」クルマといわれれば、まあ否定できない部分もあります。アウディのように直列5気筒といった風変わりなエンジンを積むモデルでもあれば、もっともっとレクサスのメカニズムや存在感に惚れ込むクルマ好きが出てくると思いますが、現状ではメカにあまり詳しくないユーザーをメインターゲットにしているかのように、こだわりの薄いブランドイメージが少なからずあります。

  レクサスCTの価格帯ならば、もっとマルチにグレード設定しても良いと思いますし、3.5LのV6を押し込んだブレイド・スピードマスターみたいなモデルでもあれば、もっとクルマ好きな若い世代の感心を呼ぶ事ができたと思います(いまからでも遅くはないですよ!)。ほかにもセリカのようなFFクーペだったり、MR-Sのようなミッドシップもさらりと作ってレクサス調の内装をあしらえば、アウディTTやメルセデスSLKを軽く蹴散らせる人気モデルが出来そうな気もします(これからでもお待ちしてます!)。MR-SにレクサスのV8積んでしまえば、もう立派なスーパースポーツの誕生ですし、とりあえずV6を載せてしまえばポルシェのユーザーを吸収できそうです。ポルシェのスポーツカーユーザーは、もはや虫の息なので、いよいよトドメを刺してしまうかもしれませんが・・・。

  そんなレクサスから、久しぶりにスペシャルティ感満載の2ドアクーペが登場しました。かつて「カリーナED」や「ソアラ」といった2ドア・スペシャルティカーの名車と幾つも作ってきたトヨタですから、本気でやり始めればデザインなどはお手の物で、迫力満点で大興奮してしまうほど"猥褻的"でもあるリアを備えた、とても華のあるデザインに仕上がったと思います。どうやらトヨタも売る気満々のようでラグジュアリークーペ路線にも関わらず、クラウンやカムリに使われるおなじみの2.5Lの直4HVのユニットを設定するなど色気を見せています。そして5LのV8NAで477ps(北米版は467ps)を搾り出す新開発ユニットを積んだRC-Fまでも同時に発売してきました。セレブ奥様の買い物車から、ドイツのハイパフォーマンス御三家「M/アルピナ」「AMG」「RS」に真っ向から勝負するサーキット向けまでを網羅するワイドレンジなグレード設定は吉と出るのか?

  それにしても日本価格が950万円、アメリカ価格が630万円という「RC-F」の価格差にはちょっとゲンナリさせられます。BMW・M3/M4のコンセプトをそのまんまパクりましたと自らゲロったようなマヌケな価格設定です。ちなみにGT-Rは日本価格が930万円で、アメリカ価格が1000万円なんですが・・・。ポルシェ並みに維持費がかかるGT-Rは車両価格を抑える戦略を採っているという指摘も確かにありますけど。

  「V8NAを放り込んだ3BOX車」というアメリカンスタイルなレクサスRC-Fですから、その北米価格はBMWだけでなく現地のライバル車の価格をも意識せざるを得ないのかもしれません。ポルシェ911ターボを撃ち落としたGT-Rならば10万ドル突破の強気な価格設定も可能ですが、北米では珍しくもないV8NAを載せたD/Eセグの2ドア車では、「フォード・マスタング」「ダッジ・チャージャー」「シボレー・カマロ」といった定番モデルが、びっくりするくらいに安くてV8モデルがたったの3万ドルしかしません。よっていくら高級ブランド・レクサスだといってもせいぜい6万ドル程度に抑えないと話にならないという判断があったと思われます。ちなみに北米を代表する高級車ブランド・キャデラックから発売されている、RC-Fより一回り大型のボディを持つ「CTS-V」(日本未発売)が6万4千ドルなので、北米市場で売る以上はこれを上限に考えた判断は至極妥当だと思います。

  北米で300万円の現行モデルのV8マスタングが、日本では500万円で売られています。新型はまだ価格が発表されていませんが、日本でも随分使い勝手が良くなるであろう右ハンドルが設定されて、後輪サスもマルチリンクに変わり、いよいよドイツ車や日本車にかなり接近したモデルになるようです。日本価格が現行モデルとあまり変わらないのであれば、俄に注目のモデルになりそうです。もし急転直下で日本とアメリカのTPP加盟が実現して、現在も紛糾していると言われる「自動車非関税障壁」でアメリカの言い分が大筋で通った場合には、マスタングもRC-Fもアメリカ市場に近い価格で日本でも販売されるようになるかもしれません。次いでに160万円なのに日本仕様よりも圧倒的に高性能な北米版VWゴルフ(1.8Lターボ)も歓迎されるでしょうし、RC-Fとほぼ同じ価格の630万円に設定されているBMW・M3が日本でも買えるならば、若者のクルマ離れは大幅に改善されそうです。


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2014年10月17日金曜日

デミオ・フィーバーだけど、最近のBセグはいろいろ面白い。

  トヨタ・アクアが発売してまだ3年も経っていないことに正直驚きですが、今や完全に日本の道路を象徴する存在になりました。これだけの大ヒットはさすがに当初の予想すら上まわるものだったようで、アフターパーツ・メーカーも慌てて開発に着手し、この1年くらいであれこれと出揃ってきました。最近では楽しげに走るカスタマイズ"アクア"を、休日の度に街中でちょくちょく見かけます。トヨタのHPで扱われているエアロパーツを見ると、どのシリーズもフロント・サイド・リアにフル装備しても10万円足らずです。同クラスのVWポロでエアロ4点セットを組むと、工賃と塗装代が別途に計上されて50万円程度かかることを考えるとかなりお値打ちです。ちなみに国産ではスバルWRX S4が3点で27万円程度だそうです。

  コンパクトカーにおいて10万円が高いか安いかは意見が分かれるでしょうが、これだけ街中にありふれるようになった量販モデルだからこそ"個性化"の意義はより大きいと思います。しかも10万円の3点セットで印象はガラリと変わりますので、費用対効果が非常に高いです。やや垢抜けないノーマル・アクアからのギャップが大きいので、その振り幅は大きくかなり良い仕上がりに感じます。そもそも車高が低く抑えられているアクアの素材の良さが、絶妙なプロポーションを演出するのに大きく貢献しているようです。

  いくつかのパーツメーカーがトヨタのHPでアナウンスされてますが、いずれもホワイトベースのものがテーマカラーになっているようで、出来上がりはまるでシトロエンDSシリーズみたいに見えます。シトロエンDSといえば、DS3でルーフ塗り分けをするなど、新しいコンパクトカーの潮流を作る、デザイナーズブランドとしての地位を着々と築いていいて、ホンダCR-ZやレクサスCTなど比較的高価格な国産小型モデルが相次いでルーフの塗り分けを採用するなど、特に国産車への影響の強さが象徴的です。アクアのパーツメーカーもDS3、DS4のホワイトを念頭においているようで、"レイヤード調"ともいうべき、外板を重ねたようなフロントグリル回りの重厚感のある意匠を上手く"パクって"いると思います。

  デザイン重視でBセグを選ぶならば、最近なにかと話題のデミオのデザインは確かに冴えてますが、ホワイトで勝負できる"カスタマイズ"アクアの高級感演出はなかなかで、デミオ絶賛の世論に水を差すようで恐縮ですが、カーメディアが騒いでるほどには必ずしも「デミオ絶対優位」というわけではないと思います。さらに言うと国産Bセグは従来の「お手軽さ」というセールスポイントを軽自動車に奪われて久しく、新たな価値観が強く要求される時期に差し掛かってきたようです。

  今回のデミオのFMCで完全に刷新されたカラーバリエーションを見ても、全10色がどれも本気モード全開で、先代にあったような"カナブン色"のパステルグリーンを廃止し、小型車にありがちなイエローもありません。トヨタ・パッソでブレイクしたピンクを新たに取り入れましたが、新色「スモーキーローズマイカ」は、パッソのような若い女性向けではなく、男性ユーザーや年配の女性ユーザーも使える深みのある色彩をしていて、今回もっとも注目しています。さらにマツダの意図を感じるのが、3色用意されているブルーでしょうか。先代アクセラで密かに人気だったブルーを小型スポーツHBのイメージカラーに据えようという考えのようです。

  2年前までは国産Bセグの"エース"は間違いなくスイフトスポーツが担っていました。どの評論家も挙ってスイスポを絶賛し、まるで今のデミオのようなスター的な扱いでした。「走り」に主眼を置いた正統派のスイスポに対して、圧倒的な環境性能+デザイン新提案で見事にシェアをごっそりと奪ったアクアによるトヨタのしたたかさと確かなヴィジョンは、評論家によって特に持ち上げられることもなかったのですが、次世代コンパクトカーを渇望する市場のニーズを完璧なまでに取り込む見事な企画だったと思います。これはもはやトヨタの営業網が無くても、十分に結果が出せるだけの競争力があったように思います。発売から3年近くが経ってなお、新型デミオに大きく立ちはだかるだけのポテンシャルを秘めた設計の奥深さには、ただただトヨタの企画力への畏敬の念が湧いてきます。

  アクア・デミオとは逆のコンセプトでしたたかにシェアを獲得しているフィットのユーティリティの高さも、カーメディアの後押しなどないままに市場に受け入れられました。軽自動車を次々と投入し、ヴェゼルを大ヒットさせるなどホンダの小型ラインナップ急拡大路線は、旧来のホンダファンにとっては複雑な想いがありそうですが、この"ホンダショック"こそが、従来の国産Bセグに大きなインパクトを与え、ノート・マーチ・スイフト・ヴィッツ・パッソは淘汰の淵に追い込まれつつあります。現状ではアクアだけが生き延びて、デミオがここに挑むためにマツダの"総力"が動員されました。VWポロやBMWミニが国産Bセグを圧迫している!みたいなややおかしな論調がカーメディアには見られますが、間違いなく競争を激化させているのはホンダの体質変化(社長人事!?)によるものだと言えます。さて・・・果たしてカーメディアが"ゴリ押し"するデミオは、良識ある日本市場に手厚く支持されたアクアとフィットの2強をどこまで切り崩すことができるのでしょうか?


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2014年10月3日金曜日

スカイラインとティアナ ジャンル細分化の時代。

  日産ティアナの国内販売がどうも盛り上がりません。まあある程度は予想していたことですが、このクルマの良さをもっと敏感に捉える人々が多くいるかなと思いましたがさっぱりです。日本はまだまだ豊かな国で、中古車市場で程よい価格のクルマが供給されてしまうため、新車で売るとなるとそれなりに話題性を持つ必要がありますので、その点で3代目ティアナは苦戦を強いられているようです。日産としてもほぼ同時期に発売したスカイラインの販売が一巡するまではあまりティアナを前面に押し出すことができないという苦しい事情がさらに重なっています。しかもスカイラインは新たにやや廉価なターボモデルを追加販売しましたから、まだまだグイグイ売れ続けています。メルセデスのガヤガヤと騒々しい2L直噴ターボエンジンなんかよりも、ティアナの2.5L直4NAの方がよっぽど快適ではあるのですが、セールスマンはおそらく廉価なティアナを推す事が"禁じ手"になっているはずです。

  スカイラインはライバル車に比べればお買い得ですが、それでも軽く500万円に到達しますので決して安くないです。もっとお手軽に良いクルマを求める層にはティアナがちょうど良いと思うのですが、300万円台となると話題性を備えたアテンザが魅力的に見えますし、中古でメルセデスかBMWの程度の良いものを選ぼうと考える人も多いようです。スカイラインの影に隠れてしまって、ほとんど注目もされなくなったティアナですが、コンセプトや設計方針のブレがないことで定評のある日産のグローバル最量販モデルですから、もちろんその存在価値に疑いの余地はありません。アメリカ市場や中国市場で売られるモデルはしばしば「日本軽視!」という汚名を着せられることがありますが、すっかりアメリカナイズされた生活環境に今日まで憧れ続けてきたのに、クルマに関してはイチャモンをつけるのはオカシイですよね。

  そもそもクルマの専門家であるカーメディアが、スカイラインもティアナも一括りに「セダン」と捉えてそれで終わりにしてしまっていることに不満を感じます。海外のカーメディアを見ていると、最高に静かな「サルーン」と最高に軽快な「スポーツカー」に関しては日本車が世界ナンバー1だから世界で日本車は売れている!というある程度固まったイメージの上に評論が行われています。果たしてこの日本車の世界で評価される特徴を正確に伝えようと努力している国内ライターがどれほどいるでしょうか? どいつもこいつもと言ったら失礼ですが、優雅でもスポーティでもなく、日本にはまったく関係ないアウトバーン専用車に過ぎないメルセデスやBMWこそが絶対正義と考えているライターばかりが威張っています(まあ欧州市場では正義でしょうけど・・・)。

  ティアナというモデルは北米の2万ドル車というカテゴリーにおいては、トヨタカムリとホンダアコードとともに高い評価をされていて、エンジンパワーでいくらか上回るヒュンダイソナタやVWパサートがこの3台の日本車サルーンの足元にも及ばないほどに優れた静粛性と乗り心地を実現しています。最近ではマツダの基本設計を使っているフォード・フュージョンがシェアを伸ばしてきてはいますが、「サルーンは日本車」という盤石なイメージがすでに出来上がっています。アメリカ人はこれらの日本車サルーンの実力を高く評価しているのに、日本のカーメディアは「パンチ力がない」という訳の解らない"物差し"を振りかざし、これらのモデルに最大級の賛辞を送ることはまずないです。その心理の裏側には長年に及ぶアメリカ自動車文化への軽蔑の念と欧州自動車文化への憧れからくる歪んだ視点があるように思います。

  その一方で、敢えてメルセデスやBMWのような世界観に挑戦していく日本車版GTカーの代表格が「スカイライン」や「スバルWRX S4」や「レクサスRC-F」です。カーメディアは意地が悪いのか頭が悪いのかわかりませんが、この手のクルマのレビューに際してはしばし「良く出来てるが、少々騒々しい上に乗り心地がイマイチ・・・」みたいな"愚論"を展開します。最近でも「スカイラインより新型デミオの方が乗り心地がいい」と動画レビューで清◯◯夫氏が仰ってましたが、そりゃあタイヤの太さがこれだけ違えば十分にあり得ることじゃないですか?正論かもしれないですが、クルマのプロを自認するなら嫌みたらしくスカイラインを蔑むように言うべきではないと思いました。余談ですがこの人のルボランの連載は本当に"クソ"です。

  何が言いたいかと言うと、日本メーカーの開発者にとって「世界一良いクルマをつくれ!」という"詔"を受けたときに、もっともポジティブになれる要素が「ジャンル」なんだと思います。日本メーカーは現状では最高のマテリアルを使うことができますから、とりあえず国内のライバルに決定的に負けさえしなければいいわけです。しかしそこではもはや「セダン」という大雑把すぎるジャンルは死語となっていて、「サルーン」「GTカー」「ショーファー」「スモール」と細分化された上で、そのニーズに「最適解」を持ち込むわけです。日産の場合だと、ティアナ(サルーン)、スカイライン(GTカー)、シーマ(ショーファー)、シルフィ(スモール)といった具合で上手く役割分担がされています。さて何だかちょっと浮いた存在になっているのがフーガ・・・でしょうか。トヨタ陣営にも同じことが言えますがレクサスGSが浮いちゃっています。

  スバルがGTカーを目指すなら、マツダはサルーンを志向する!といったような棲み分けも見られます。加速が楽しみたいならスバル、長距離を経済的に走りたいならマツダなのですが、スバルはCVTにこだわりマツダはトルコンATを使っているのが面白いところです。まあ別に律儀に分けて考えて、目的に合ったクルマを買いなさい!なんて説教がましいことを言うつもりは毛頭ないですし、日本車のように「最適解」だけがベストというのも視野が狭いですし、ドイツ車のロジックも十分尊重するに値する点が多いです。ただし日産のような潔癖のジャンル設定と各ジャンルで世界最高を義務づけられて、そこで頑張っているエンジニアの想いを踏みにじるようなプロのジャーナリストの評論に出会ったり、素人のバカみたいな誹謗中傷が目に余ったりすると、「ふざけんな!」と代弁してあげたくなってしまいますが・・・。


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↓スカイラインのGTカーへの適正はどうなんですか?

  

  

2014年9月17日水曜日

スイフトとデミオ 欧州で残す爪痕

  街中を最新のCセグハッチバックがノソノソと走っているのを見かけると、思っていた以上に立派だなといつも感心します。ゴルフ、アクセラ、Aクラスはもう重々承知していますが、ひと昔前(2011年)に登場したインプレッサも改めて見ると、塗装やキャビンの膨らみはレガシィと同等ですし、とても新車で170万円ほどで買えるクルマには見えません。そしてどのクルマもCセグのイメージを変える重厚な走りをしてます。トヨタの国内専用モデル(カローラ、プレミオ、アリオン)や、日産ブルーバードシルフィといった5ナンバーCセグの生き残りと並ぶと、これはもう同じクラスと言うのは無理がある気がします。

  車幅もクラウンと同等の1800mmなんてサイズが当たり前になってますし、ここまで来るとかつての軽快なプレイベートカーという印象はだいぶ薄れ、年配の人でも堂々と乗れるように乗り心地重視・・・というのが各メーカーの総意といったところかもしれません。それほど広くない後ろ席がどれほどの頻度で使われるのかわかりませんが、車格に見合った安定感の実現のためにもマルチリンクの配備は妥当なところでしょうか。VW、PSAとトヨタ・オーリスの1.5Lモデルにはトーションビームが使われていますが、路面によってはこちらの方が後輪の変な粘りが無く、その分だけ軽快に次のモーションに入れるというアドバンテージもあります。

  かつては1100kg程度に収まっていた車重も軒並み1300kgを超えるまでになっていて、しかしエンジンはターボでトルクが厚くなっているとはいえ、ベースモデルでは軒並み110ps程度のエンジンなので、乗る前からストレスが溜まりそうな「鉛が詰まった乗り味」を想像してしまいます。10kg/psを境目に軽快さは大きく失われてくるので、110psほどの出力で軽快で楽しい乗り味を求めるクルマ好きの視線は、完全にCセグではなくBセグへと集まっています。この流れを良く表しているブランドがフランスのプジョーで、Cセグ相当の308はカブリオレが密かに人気ですが、スポーティなプジョーを求める層は208GTIにプジョーの理想郷を見出すようです。

  そんなBセグ市場で最もスポーティなハンドリングを持つ「2大スター」がスズキ・スイフトとマツダ・デミオ。日本車の独壇場!と言ってしまうとなんだかつまらないことになっちゃいそうですが、実はちょっと事情があってトヨタ・日産・ホンダの日本3強がこのセグメントには全力投球してません。よって他のセグメントよりも比較的に国際的なバランスが取れていて、EUとのFTAを武器に韓国ヒュンダイグループは、このセグメントで大きく欧州シェアを獲得しています。ちなみにトヨタとホンダは伝統的な日本とアメリカの2つの市場を最優先しているため、欧州でジャンルが確立されている「パフォーマンス系Bセグ」にはほとんど興味を示していません。また日産はグループ内のルノーがこの分野での参入を制限しているため、かつてのパルサーのような得意のハイパフォーマンスモデルの開発を凍結しています。

  一方でヒュンダイはご丁寧にもスポーティに振った「i20」と、ユーティリティを重視した「ix20」とを作り分けて欧州市場に参入しています。簡単に言うと「i20」がマツダデミオのようなスタイルで、「ix20」はホンダフィットの設計をなぞっています。この2台はどうやら欧州市場を切り崩すことを念頭においた設計で実に素晴らしい出来映えのようで、欧州各国メディアの評価も非常に高く、VW、欧州フォード、欧州GM(オペル/ボクスホール)の欧州3強が誇る渾身のモデルにひけをとらず、抜群のコスパによってEU各国で見事な快進撃を続けています。

  またヒュンダイはかつて三菱やスバルが世界的な名声を得るきっかけとなったWRC選手権にも参戦して日本メーカーが築いた名声を追いかけるかのようなプロモーションを仕掛けています。WRCもいまではベース車がいずれもBセグに移っていて、フィエスタ(フォード)、ポロ(VW)、i20(ヒュンダイ)、DS3(シトロエン)、ミニJCW(BMWミニ)の5台が主に参戦しています。スーパースターのセバスチャン=ローブ(シトロエン)がWRCから去り、今シーズンはレース毎にヒーローが登場する戦国時代になっているようで、ヒュンダイチームの認知度も次第に高くなってきました。そして当初の戦略どおり「i20」の欧州市場の注目度も、日本車のBセグモデルよりもはるかに高くなっていて、いよいよ同じくWRCに参戦しているVWや欧州フォードに肩を並べる存在になりつつあるようです。

  今年始めにフィエスタが日本で再発されましたが、i20も世界のWRCベース車として日本でも買えるようになればいいと思います。トヨタのWRC参戦の噂が絶えないですが、レクサスでワゴンを作らないなど、欧州市場を重視する気は全くない様子なので、噂のまま終わりそうで・・・ヴィッツは一体どうなっていくのでしょうか。トヨタが自社のマーケティングよりも、社長が公言するように「クルマ産業全体の将来像を前向きに模索する」姿勢ならば、100万円台で若者にも手軽に買えるモデルが注目を集めるWRCをぜひ盛り上げてほしいとは思いますが・・・。

  さて現在ではWRCから遠ざかっているのに、欧州市場でも根強い人気で多くのクルマ好きから大絶賛されるマツダデミオとスズキスイフトの2台です。ヴィッツやフィットが欧州路線を全く考えていないのに、やたらとスポーティなハンドリングマシンが日本の中堅メーカーから生まれたのは、この2台が今も欧州3強として君臨し続ける「欧州フォード」と「欧州GM」の小型車開発の部門の主軸を担っていた過去があるからと言われています。マツダもスズキも冷戦後に巻き起こった自動車業界再編においてM&Aの犠牲者として語られることが多いのですが、マツダの幹部も言っているようにフォードと組んだからこそマツダの技術力が大きく生かされる機会がもたらされたので、M&Aを経たことはマツダにとってとても幸運だったようです。

  同じことがスズキにも当てはまると思いますが、こちらはGMやVWと派手な訴訟沙汰を起こして紛糾したために、幹部が表立ってGMの傘下に入って良かった!とは絶対に言わないみたいです。しかしもし欧州に基盤を持つ巨大メーカーとの資本提携が無ければ、スイフトスポーツのようなスズキを強く表現するモデルは生まれてなかったかもしれません。もちろんWRCに参戦するメーカーは小型車技術だけでなく、レギュレーション上どうしても必要になる高性能な小排気量ターボエンジンを開発が必須になるわけで、マツダやスズキがWRCに参戦してすぐに頂点を取れるとも思わないですが、日本のお家芸と言えるBセグにスポットライトが当たっているWRCがもっと日本でも親しまれるモータースポーツになればいいと思います。フォーミュラEの全GPを地上波生中継するみたいですが、WRCをぜひ中継してほしいものです。


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2014年8月27日水曜日

SAIとカムリのリアデザインはなかなか!

  最近のトヨタ車はデザインで訴えてくるものが多い印象です。それもレクサスブランドのモデルとして相応しいデザインを要求されるというわけでない、トヨタブランドの「SAI」や「カムリ」にハッとさせられる瞬間があります。どちらも日本ではHV専用車ながら販売台数は低迷気味なのは残念なことです。どちらも新車乗り出しで400万円に達する価格帯がややネックになっているようで、まずこの価格帯のセダンを所有するユーザーの多くはプレミアムブランドに目が向いてしまいます。そして購買層のほぼ100%の人が持っているのは高級車に乗っていたいという「意識」であり、自然と高級車の象徴である「後輪駆動」のクラウンを考えてしまいます。

  中には前輪駆動をモノともせずにヒットした「アテンザ」のような変わり種もありますが、販売の多くがトヨタHVを経済性で上回るといわれるディーゼルモデルだったりといった付帯条件あっての話にすぎません。トヨタを完全にターゲットにして「クラス最高燃費」を高らかに謳っている「アコードHV」でさえも、「Vテック」大好きなホンダファンの期待を踏みにじった代償は大きかったようで、V6エンジンに変わったスカイラインが登場したときのような「冷めた」見方が今のところ続いています。ホンダとしてはやがてその先進性が理解される日が来ると信じるしかないですが、北米で大成功した実績を持つスカイラインですらV型3代目になっても散々な状況ですから、果たしてHV専用アコードが日本の風景になる日はやってくるのでしょうか?

  数年後にアコードHVがこのクラスの中核を担う存在になっていたら、当然にホンダのマーケティングは素晴らしいと思います。しかしアコードHVのスペックから伝わってくるのは、トヨタへの対抗心に燃えるホンダの焦りくらいなもので、そのあまりに近視眼的に見える設計思想からは、大きな変革を巻き起こすポテンシャルはあまり感じられません。セダンユーザーが欲する「見栄っ張り」な要素を全く無視したような設計には一体どんな意図があるのでしょうか?

  ホンダがトヨタを超える性能のクルマを出せばすぐさまに、トヨタが反撃して対抗モデルを出してくるという過去の歴史を知っていれば、アコードHVの燃費を超えるためにSAIとカムリはさらに仕様変更されるだろうと見る向きもあるでしょう。それを理由に「買い控え」が起こるとは思わないのですが、やはりこのクラス(400万円前後)のクルマになると「これなら間違いない!」と思わせるほど抜群の魅力で後押しできるようなブレイクスルーな存在でなければ、大きく売り上げを伸ばすのは難しいはずです。カムリやSAIの販売に歯止めを掛け、トヨタの一人勝ちを阻止するためだけにアコードHVを出したというならば、ホンダの執念深さには脱帽といったところです。

  さてこれまで多くのセダンユーザーの支持を受けてきた南アフリカ製のドイツブランド車も、いよいよ曲がり角を迎えてきてはいるようです。メルセデス、BMWが優雅に走っていたバブル期の幻影も、さすがに15年が経過した2000年代末頃にはかなり霞んだものになり、今ではBMWの内装は軽自動車にも見劣りがするなどと揶揄されるまでになりました。しかしそんな危うい商品性しかもたないドイツセダンに対して、なかなか優位を奪えない日本ブランドの新型セダンの展開力も「?」な点が目立ちます。まあお互いに足を引っぱり合うトヨタとホンダに比べて、お互いの長所を認め合うメルセデスとBMWの関係はとても健全ではありますが・・・。

  「製品」のレベルでは既に日本ブランドがドイツブランドを凌駕しつつあるのですが、「ブランドイメージ」という言葉に集約されるユーザーが持つ「憧れ」においては今もなおドイツブランドが優位にあるようです。あくまで「デザイン」は主観的な要素も多分にあることを理解した上で言うと、トヨタブランドのカムリHVとSAIのデザインは、それこそ王道のクーペボディを纏ったBMW4シリーズなどと比べても十分に高い「デザイン性」を有しています。4シリーズはカムリやSAIの2倍近い価格にもかかわらず、高級感の演出が完全に力不足で、そのせいかクルマ全体の収まりがとても悪く感じます。もちろん感じ方には個人差があり、私とはまったく違うレベルの金銭感覚の方ならばまた受け止め方も違うとは思います。

  BMWはフォーマルサルーン・ブランドとしての立ち位置を、自らのコンセプト変更によって放棄している節があり、今では4ドアよりも2ドアの方がいくらか受け入れやすいデザインになりました。そういう意味では4シリーズに期待していた人は私を含めかなり多かったのですが、内装が3シリーズと全く同じというブランドの見解には「幻滅」以外の反応はできませんでした。BMWの現状はいかにもドイツ的だと皮肉まじりにも肯定しておけばいいのでしょうが、カムリやSAIの内装が周囲の期待を軽く超えていく素晴らしいものだったことを考えると、よっぽどのゲルマン・マインドな人でない限りは現行のBMWにトヨタ以上の価値を置くのは極めて難しいものがあるのも確かです。

  この状況・・・トヨタがBMWほかを内外装で圧倒・・・が、あと10~15年続くならばトヨタのセダンはこれまでとは違ったユーザー層によって脚光を浴びるようになるでしょう。もちろんその長い期間にわたって、セダン好きが期待する通りのFMCやフェイスリフトを無難に進めていく必要がありますし、常に街中で人々から羨望の眼差しを受ける存在である必要があります。それでもトヨタブランドのセダン・・・カムリ、SAI、マークX(G's)、クラウン・・・は、そのスタートラインに立つことに成功したと思います。日産やマツダも同じく「ブランドイメージ」を構築する10年の歩みを始めましたが、アテンザやインフィニティQ50とはまた違う「渋さ」が「カムリ」や「SAI」によって日本車デザインに深みを与えるエッセンスになってくれることを期待して止みません。


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2014年8月15日金曜日

カローラはもう「お役御免」ですか?

  数年前からカーメディアがうっとおしいくらいに「日本メーカーはいよいよ正念場を迎える!」という厳しくも無責任な言葉を吐き続けたおかげかもしれませんが、最近の日本メーカーは凶暴なまでに商品力が高過ぎます・・・。今や相対手にに商品力がかなり堕ちてしまった輸入車をわざわざ買う人は「本物のセレブ」か「変態」もしくは「おバカさん」しかいない!と言っても過言ではないです。1000万円以下の価格帯で買える「輸入車」というだけでなんだか胡散くささが充満するほどで、この価格帯で日本車に対して何らかのアドバンテージを持っているブランドを如いて挙げれば「シトロエン」くらいじゃないでしょうか?このブランドを選ぶ理由はなんとなく解ります・・・。なのでシトロエンだけは「まとも」ですね。

  あとはフェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェといった「セレブ」向けスポーツカーはやはり本場のものがいいという意見もなんとなく解ります。しかし実際に日本で売れてるブランドとなると結局はVW、メルセデス、BMW、アウディ、ボルボ、ミニの6強が抜けてます。どれも「変態」が買うような個性があるクルマでもないですし、AMGやアルピナを除けば「セレブ」のクルマでもないです。つまり大変恐縮ですが・・・なクルマです。総合的な実力ではCセグ、Dセグ、Eセグ、Fセグも全て日本勢に完全に「マウント」されていますし、私の知る限りではSUVも断然に日本車の方が素晴らしい!とにかくいちいち車名を挙げるまでもなく、明らかに日本メーカーの方が高い志でクルマ作っているのを感じます。

  自動車雑誌はそれでも日本メーカーが「遅れている」という結論に持ち込みたいようですが、ドイツメーカーなんて揃いも揃って日本メーカーのHVなどの特許が切れるのを待っているだけです。ドイツ車が装備する技術をあれこれ調べればほとんどがバブル期にアメリカや日本のメーカーによって開発されたものを使っています。そもそもクルマの設計にしても、VWは三菱とスズキの技術をかすめ取り、メルセデスは絶縁関係にある三菱の技術を何の躊躇いもなく移植してFF車を開発しました。BMWはトヨタの包括的な援助によって何とか性能面で大きくひけを取らないクルマを作ってはいますが、残念ながらどのブランドも乗り味がどんどん日本車化(トヨタ化)しています。ゴルフ乗っても3シリーズ乗ってもCクラス乗っても「何だかクラウンやマークXぽいな・・・」って気がするようになってませんか?

  そもそも日本車とドイツ車では作られる環境が全く違います。様々なサーキットだったり、公道テストができるという意味ではドイツ車にアドバンテージがありますが、今やトヨタ・日産・ホンダ・マツダ・スバル・スズキ・ダイハツまでも欧州に開発拠点を持ってますから、その気になればいくらだって良いクルマは作れます。その一方で鉄鋼業が衰退した欧州と違って、鉄鋼大手がひしめく東アジア地域はマテリアル面で圧倒的に優位な状況にあります。もともと自動車専用鋼を使って世界を支配した日本車ですが、経済オンチのクルマバカの皆さんからは、しばしば「ペラペラの外板」などと言いがかりを付けられたりもしていました。ジャガーやメルセデスがアルミに活路を見出し始めた今となってはどんなにアホなメディアでも外板で日本車を叩くなんて愚かなことはしなくなりましたが・・・。

  ここ数年話題になった「ゴルフ」も「アウディA3」もメディアが大騒ぎするほどのクルマとは到底思えません。確かにトヨタが大衆車として売っているプリウス、カローラアクシオ、プレミオ辺りと比べれば、ハンドル・アクセル・ブレーキのダイレクト感で「良い!」と結論したい気持ちはわかります。でもそれでは素人の感想とまったく一緒です。トヨタにだってオーリスRSなど「価格」と「イメージ」がハマらずにマイナーな存在になっているクルマがありますし、これと比べてしまうと、ゴルフもA3も「大騒ぎ」というほどじゃないじゃないです。たまたま日本においては「VW」やら「アウディ」やらのブランド力でそこそこブレイクスルーしているだけのことです。

  トヨタだってこれに対抗して、「ヤング・レクサス」とか銘打って新しいブランドを立ち上げて、戦略価格(現在の価格)で「オーリスRS」「ヴィッツRS」「86」「マークX」「アベンシス」を売れば、ゴルフなんかを軽く上回る反響が得られるはずです。トヨタが世界で売っているVWを抑え込む走行性能のモデルを、このチャンネルに揃えて日本で大々的に売り出したら、若いユーザーをごっそりと取込むこともできるでしょう。まあそんあことしたらいよいよ日産・スバル・マツダは国外逃亡しか手が無くなってしまうわけですけど・・・。

  徳大寺さんを始め日本の多くの評論家は説明不要の前提として「ゴルフ>カローラ」という力関係を主張されていますが、もちろんこれが成り立つのはごく限られた条件においてのみです。良識のある評論家は、ゴルフ的価値観でカローラを判断することがそもそも間違っているということがよく解っておられます。トヨタが国内専用モデルとしてポイントを絞って作り上げているカローラを、「アウトバーンでは全く通用しない」みたいな貶し方をするライターがゴロゴロいます。

  もちろん欧州で販売されているカローラ(日本名オーリス)は、かの地ではゴルフよりも高級なハッチバックとして人気を博しています。オーリスのシャシーを使ったセダンボディのものも用意されていて、ドイツでトヨタブランドで発売されている3BOXはこのカローラだけです。あとはアイゴ、バーソといった小型車とプリウス、アベンシス(ワゴン)、そしてラブ4とランクルで全トヨタラインナップですから、ブランドの大黒柱は完全にカローラです。この貧弱なラインナップにもかかわらず、トヨタは好調の日産やマツダと同じくらいの販売規模を誇っています。ドイツにおいては「アクセラ」も「オーリス」も「シビック」も「ゴルフ」も同じくらいの評価を得ています。ちなみにセダンの「カローラ」は全長4620mmで3シリーズに迫るサイズです。

  もういっそのことトヨタがドイツや北米向けに販売している3BOXのカローラを日本でも売ったらどうですかね。みんな涙を流して喜びますよ・・・そしてクラウンやレクサスが売れなくなっていくでしょうけど。グローバルで闘うトヨタの本当の姿を、本国の日本人だけが解っていないのは寂しいかぎりですね。ただこれはVWに関しても全く同じことが言えるようで、ドイツ人にとってゴルフとは日本人にとってカローラ、プリウス、アクアみたいな「ありふれた」存在であり、とくに自動車好きの興味を強く引くような存在ではないようです。トヨタもその辺の事情が痛いほどよくわかっているので、「国内専用カローラ」という極端な政策を取るのでしょうね・・・。まあどうでもいいことですが。


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2014年7月31日木曜日

日本車を取り巻く環境は大きく変わった。

  2012年に購入した新車との生活がなかなか刺激的で、あまりに感動したためブログを始めました。当時は輸入ブランドに対して全般的に日本ブランドの存在感が地味だったようで、日本車セダンなんて「化石」のようにバカにされていた感すらありました。しかし実際に所有してみると「楽しく」て「快適」そのもので、あまりのハイクオリティにメーカーが円高で赤字になるのも頷ける出来映えでした。なんでこんなにいいクルマがこれまで売れなかったんだろう?と今でも不思議に思います。まあ私も人のことは言えないですが、クルマを買う大多数の人は日本車のクオリティが輸入車を大きく上回っているなんて当時は思ってもいなかったわけです。

  マ◯ダがこのクルマの良さを宣伝できないなら、代わりにやってやろう!と思ってブログを始めたわけですが、ブログ開始当時の内容は「BMW3よりも日本車の方が断然に良いよ〜」みたいなものでした。私なりには全ての自動車メーカーに対して誠実に書こうと思っていたので、決して話を盛ることなく無理がない範囲で日本車の良さをアピールしていました。素直にメルセデスやBMWが良いと感じれば「良い」と書きましたし、とにかく「フェア」をモットウにしていたつもりですが、そもそも自動車メディアが著しくアンフェア(輸入車寄り)なので、それに影響されたと思われる人々から反発もあり、「異端視」されることもしょっちゅうありました。

  それがどうでしょう?書き始めてからまだ2年も経っていない現在ですが、日本車と輸入車の立場が完全に入れ替わってしまいました。2012年の段階ではほぼ全てのジャーナリストが口を揃えて絶賛していた「F30BMW3シリーズ」というクルマがありましたが、いろいろ試した挙げ句、到底500万円の価値は無いどころか進んで買う理由は何もないと感じていたので、その主旨のことを当時書いてました。ただ注目されたくて書いてんだろ!みたいなコメントも頂きましたが、私はそんな器用な人間ではありませんし、誠実に購入対象として検討した結果「ダメ」だと思った点がたくさんあったので、それを馬鹿正直に書いていました。

  現在では「F30」はその知名度の高さのせいもあるでしょうが、福野礼一郎さんや沢村慎太朗さんまでが大いに不満を挙げ連ねる存在に成り下がりました。発売から2年経ったので批判してもOKみたいな業界の暗黙のルールがあるのかもしれませんが、最近になって書かれた「F30」評はどれも納得できます。「トヨタ化」してるというのは当初から感じていた点ですが、今では複数のライターによって書かれています。とりあえずマークXとあまり変わらない!ってことです。

  せっかく楽しくBMWの批判記事を書いていたのに、本業のライターの皆様が私の意見に追従して(笑)きてしまってからは、逆にブログで3シリーズを批判することがなんだかプロライターの記事を下敷きにしている風に見えて「かっこ悪い」ことに思えてきてから書きにくくなりました・・・なんてこった!。現在では私がアジるまでもなく、日本で発売されているDセグセダンで「ワースト5」を選ぶとしたら、その全ては輸入車になってしまうでしょうし、そこに3シリーズが堂々ランクインしてもおかしくないかもしれません。それでも下には下がいるようで、私が知る限りではキャデラックATSとVWパサートが3シリーズよりもさらに魅力に乏しいのは間違いないと思われます。

  それにしてもこの2年間に登場した日本車のクオリティがやはり高すぎますね。2年前のベストカー誌では「ドイツ車にくらべればあらゆる面で負けているけど、日本車セダンもなかなかだよ。」みたいなニュアンスで地味に紹介されてました。それが現在のベストカーでは・・・主役は完全にスカイライン、レヴォーグ、アクセラ。これら日本車の水準に耐えられるドイツ車としてBMW M235iやメルセデスA45AMGを無理矢理持ち出す始末。300万円前後の日本車に対して、700万円くらいするスペシャルグレード持ってこないと全く勝負にならない・・・そんな時代がすぐにやってくるなんて2年前にはさすがに考え付かなかったですね。

  世界最強の6気筒エンジンを作る上にレクサスを超えるHVの乗り味を作り出す「日産」。ボクサーターボによる出力と低重心で圧倒的な機動性を誇る「スバル」。世界最高水準に達したディーゼルの「マツダ」。こんな世界最高峰の技術がサラリーマンの所得でも十分に買えるお値段というのも素晴らしい! さらに最先端のステアリング技術やら、自動ブレーキシステムやらがガンガン付いてきて、しかも内外装のデザインも完全に輸入車を凌駕する水準ですから・・・。日本車と輸入車の比較がベストカーの主な「任務」のようですが、これでは全く勝負になってないです。とりあえずこれでは輸入車ユーザーが納得しないので、わざわざレクサスCT200hという動力性能が物足りない日本車をわざわざリストアップしてきて、ゴルフ・Aクラス・1シリーズの方が上ですよ!みたいな苦肉の「演出」をしてたりします。

  自動車雑誌を作るのはとても大変みたいですね。それぞれに読者の中に多くのファンがいるのはよくわかっていても、もうドイツ車もイタリア車もイギリス車もどんな引き出しを使ってもフォローしきれません。どんなに大絶賛をしたところで新型Cクラスの「C180」を買うライターなんておそらく皆無ですし・・・。なかなか強気な価格設定のレクサスNXはかなりの予約が殺到したようです。レクサスNXはBMW X6のような「粋」を感じる部分がそこそこウケているのかなという気がします。これよりもさらに安い「C180」がどれくらい売れるのかわかりませんが、「粋」という点ではあまりピンとこないです。メルセデスの安売り路線は確実にブランドステータスを下げているようですし、クルマ好きにとって一番心証が悪いブランドといってもいいかも。

  日本車の良さに人々が気がついて、日本の高性能セダンのラインナップが増えればいいな!くらいに思ってブログを書いていましたが、あっと言う間に日本車ブランドは自らの力で復権していきました。北米を見てもシェアが伸びているのはスバル・日産・マツダ。欧州各国も大手・中堅で大きく伸ばしているのはやはり日産とマツダ・・・。今度はドイツ車のオーナーになってドイツブランドでも応援してみよう!なんて思ってしまうこの頃です。

  

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2014年7月24日木曜日

ランエボ・フィナーレ!だけど国産GTカーが発売ラッシュ!

  ランエボと作り続けても、それに呼応するようなセダン・ハッチバックの市場を失っている三菱にとっては開発終了もやむなしなんですが、やはり「ランエボ」が無いというのは何とも言えない喪失感があります。現行のギャランフォルティスベースの「X」はGT-Rと発売が重なるなどやや地味な存在になってしまいましたが、ベース車のデザインがFMCで洗練されればさらに良くなるのでは?と期待していた矢先だったので残念ではあります。

  三菱はここ数年は業績が回復傾向です。アウトランダーPHEVが激戦の国内SUV市場でも、独自のパワーユニットの先進性が一般レベルで瞬く間に広まるなど、ネット時代を象徴するような売れ方をしています。元々日産と並んで世界最高水準の技術を誇るメーカーであり、その強みが今後はさらに発揮されるでしょう。VWもBMWも三菱のターボチャージャーが無ければ日本で売るようなクルマはとりあえず作れないわけですから、クルマ雑誌が盛んに日本メーカーがドイツメーカーから速やかに学ぶべき(学ぶ必要はないと思いますが)!とかいってますが、そもそもダウンサイジングターボを開発してるのは日本メーカーなんですが・・・。

  ちょっと話が飛躍しますが、ランエボが無くなって日本車がますます「つまらなく」なるとか今後言われると思います。ポルシェ911だとかジャガーFタイプだとか次々と魅力的コンテンツが出てくる輸入車に比べれば、実用的なクルマばかりが登場している印象は拭えません。アクセラ、スカイライン、レヴォーグ・・・イマイチ作り手に「遠慮」もしくは「自粛」のニュアンスを感じてしまいます。三菱が悪いというわけではないですが、「ランエボ断念」というニュースがこのムードを一層深刻にさせますし、一般ユーザーの間にも「もうスポーツカーは終わったな・・・」という空気がさらに広がっていくでしょう。

  何度か同じことを言っていますが、私が住んでる東京都1300万人の内の約99%がクルマを持っていなくても毎日を無理なく過ごせる環境で生活していますし、隣接する神奈川900万人、埼玉700万人もほぼ同様の環境にあるといっていいでしょう。そんな人々に「エコカーはいかがですか?」というクルマの売り方はそれほど意味がないのではないかと思います。いくら排気ガスを出さないといっても100kmしか走れないEVを買って月に1000km使うとしたら、100kmごとに30分の充電をしなければいけません。毎月5時間を充電ステーションの前で無為に過ごすくらいならば、バスや自転車を使った方がいいかも?と思いますよね。

  「無駄に手間がかかるクルマ」も「運転して楽しくないクルマ」どちらも果てしない人生の無駄遣いに感じてしまうわけです。余計なお世話だとは思いますが、まずは日本人のほとんどは「クルマは必要ないけど」買っているということをメーカーはよく理解すべきだと思います。トヨタやホンダが真剣にエコカーを売り込めば売り込むほど、輸入車のシェアがどんどん上がっていくという不思議な現象はこの解釈以外で説明できますか? 「クルマは必要ないけど」輸入車ブランドならば周囲に見栄を張れるからとりあえず買っておこうっていう判断が日本のあちこちで起こっているんじゃないですかということです。別にダウンサイジングターボのクルマなんて、乗ってても全然楽しくありませんから、観光道路に行っても輸入車なんてそれほど走ってないんですけどね・・・。

  もちろん多くの人が感じているように、小さな輸入車に乗ったところで見栄なんてはれませんしバカにされるだけです。メルセデスAクラスなんて今でこそ大人気ですけど、10年後には跡形もなく消えてなくなっているでしょう。それと同じようにいまいち存在価値が見出せない(乗ってもつまらない)プリウスやアクアといったエコカーも同様に消えてなくなるはずです。そんなクルマに乗るくらいならバスを使えばいいと思います。結局のところホンダの伊東社長が言うように、このままでは「軽自動車にしか未来がない」です。すでにクルマが必要な地域、例えば東京近辺では千葉県の南房総市などに行ってみれば解りますが走っているクルマのほとんどが軽自動車です。プリウスやアクアはよく売れていますが、それは膨大な人口を誇る都市部において、クルマに無関心な人々がなんとなく買っているからに過ぎません。

  日本人の大部分に相当する「クルマは必要ない」人々にどうやってクルマを買ってもらうか? これまでは「エコカー減税」などでHVを必死で盛り上げて売り込んでいましたが、いよいよ販売が落ちこんできました。インフラを必要とするFCVがすぐに普及する可能性は低いでしょう。例えば高速道路の制限速度を250km/hにすれば新幹線よりも早くて便利ということで、もの凄い勢いで売れる可能性があります。それ以外には「自動運転システム」が完成して、車内でくつろいでいる間に目的地に移動できれば需要は高まりそうです。しかしどちらも実現までにはまだまだ高いハードルがあります。それまで「普通車」が果たして生き残っていられるのでしょうか?

  現段階の技術で普通車が生き残る為には、やはりこれまでのクルマが築き上げてきた「魅力」をしっかりとユーザーに伝えることが重要だと思います。ラグジュアリーな車内でくつろぎながらの移動というと、一般レベルではベントレーやマセラティといった特別なブランドでしか体感できないものと思っているようですが、日本車の高級セダンだってそれと同等かそれ以上に快適です。そういった日本車の良さが、自動車メディアによってねじ曲げられ「日本車は全てコストダウンの産物」みたいな言われ方をしている部分もあります。どう考えたって輸入車ブランドの日本市場における利益率は異常な水準であり、「日本で半分以上の利益を稼ぎ出す」と豪語している名門ブランドはたくさんあります。

  さて2012年のアテンザ発売以降、アクセラ、レクサスIS、スカイライン、レヴォーグとクルマの魅力を感じやすい優れた日本車が立て続けに登場し、もはや「日本車はコストダウン」とか言っている人はちょっと頭がオカシイ人だけになりました。2014年の後半もこの流れをさらに加速させるように、アッパークラスの日本車が続々と登場します。もしこれが売れなかったら日本では普通車には「オワコン」の烙印が押されてしまうでしょう。発売が予定されているのは、「スバルWRX」「スバル・レガシィB4」「レクサスRC」「日産スカイラインクーペ」「ホンダ・レジェンド」です。いずれも世界最高のクオリティを誇るクルマですから、輸入車に負けるなんてことはまず考えられないです。

  しかし同じく世界で絶賛されて来た「ランエボ」ですら消えるわけですから、各メーカーがどれだけ情熱を持って一般ユーザーにその魅力を伝えるかで、結果は大きく変わってきそうです。それなりにファンが多いメーカーの期待の新型車ですから、「全滅」というのは考えにくいかもしれないですが、日産やホンダは日本にインフィニティやアキュラを持ち込むことに懐疑的なのもまた事実ですし、そこには日本人には「高級GTカー」なんていらない!という考えもあるわけです。いよいよ日本の自動車ファン大注目の「半年」が始まります。


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2014年7月2日水曜日

スカイライン200GT-t は320iと328iの隙間に・・・

  日産ディーラーの前を通る度に、「V37スカイライン」と「F30BMW3シリーズ」はやっぱり何度見ても「どうしようもないほど」に似ているなあ・・・と思います。500万円クラスのクルマ同士が縁もゆかりもないブランドのクルマと似てしまうというのは、かつても何度となく起こってきましたが、日本とドイツを代表するモデル同士が個々まで被ってしまうとは・・・。もう少しどうにかならなかったのでしょうか。

  事の起こりというか、スカイラインのデザインを見て最初に感じたのは、予想通りの進化でありつつも、かなり根本的なところで予想を裏切られた!というなんがか複雑想いでした。2014年に登場するプライベートサルーンにしてはあまりにも素っ惚けていて、名前に似合わず「なんて真面目なデザインなんだ!」と・・・。今考えるとV36スカイラインのデザインってのは不真面目そのもので、ひたすらに「モテたい」オッサンの欲望を叶えるようなギラギラでゴージャスなデザインに特徴がありました。別の表現をするとハゲでデブという日本のオッサンが抱えるコンプレックスさえも「セクシー」に変えてしまうような「猥雑さ」が備わっていました。

  V37でも当然に先代に引き続いての「セクシー路線」が踏襲されるものと思っていました。バブル期のトヨタソアラが最強の「ナンパ車」として名を馳せたそうですが、そのニーズをちゃっかりと取込んでいたのが、V36の特にクーペだったと思います。トヨタもソアラの栄光を奪還するために、大胆にグリルデザインを変更したクラウンアスリートで新たな「ナンパ車」を目指したようです。実際にトヨタの狙いはかなり上手くいっていて、LEDを配して豪華にヘッドライトを輝かせるクラウンは夜の街ではその存在感を数倍に増しているように感じます。

  日産としてはクラウンアスリートと「ナンパ車」の覇権を争うモデルにフーガを任命したようで、スカイラインには「硬派」というか「コンサバ」というべきか、それとも「童貞的」というべきか・・・まあそういう趣向を好む人々の為の「理性的なクルマ」としての成長を選んだようです。「ナンパ車」のようなデザインに特別な機能性を持たせることを嫌う「ピュアなクルマ好き」にウケるようなデザインは、大抵はスバル的なデザインに収束していったり、または世界一の真面目ブランドのBMWのデザインにどんどんと接近していきます。「世界3大マジメブランド」であるスバル・ホンダ・BMW (次点:ボルボ)を混ぜたようなデザインがV37スカイラインに見えませんか?

  「マジメブランド群」のデザインはピュアな愛好家達の間で高い評価を受けているかもしれませんが、その一方で3BOX車のトレンドは変化していて、アテンザやメルセデスCLAといった比較的廉価なモデルがサイドをうねらせて「魅せる」時代に突入しています。街中で見かけるBMW(E90、F30)の「ぺったんこ」な側面はなんとも古めかしくて、BMWの先進的なブランドイメージとの乖離を感じます。E90の成功に気を良くしてプラットフォームを変えた以外に、特にデザイン面での革新性を打ち出せなかったF30BMW3シリーズが時代に呑まれたといえばそれまでなのかもしれません。

  しかしV37スカイラインはそんな孤立無縁のF30を思い起こさせる、古めかしいサイドデザインを「あえて」かどうか分りませんが、それなりの「意図」で持ち込んできました。スカイラインと3シリーズのデザイン・・・「ダサい」と切り捨てればそれまでなのですが、そう断定できるほどにセダンデザインに力強い決定的なトレンドが作られているわけでもなく、各ブランドが散発的にFMCやフェイスリフトを行っているに過ぎない「過疎」化したセダンの現実では「流行廃り」とかドヤ顔で言ってもいくらか虚しいのも確かです。アテンザやレクサスISが必死に「ネクストデザイン」を模索していますが、伝統でコンサバこそがセダンデザインという解釈だってあるでしょう。

  V37スカイラインはなぜ?BMWの「クラシカル」なセダンデザインに接近したのか?これは開発者にしか分らないことですが、高級感あるシルバーのボディカラーを前面に打ち出して、V6エンジンを積んだスカイラインやフーガが発売されるようになって10年ほどが経ちました。総括すると、やはり売れなきゃいけないというプレッシャーもあったでしょうが、「V35、V36スカイライン」そして「初代、2代目フーガ」の合計4台はいずれも「ユーザーを掴まえにいった」デザインになりました。

  デザイン素人の私が言うのも恐縮ですが、日産のこの4台のセダンに比べて、メルセデスやBMWのライバルセダンは、やや「ぶっきらぼう」に見えます。日本車と輸入車のテイストの違いもあるでしょうが、それ以上に日産のデザインは日本のサラリーマンの野心に火をつけることを意図していて、上手くいったとは言い難いですが「セレブ」や「権力の象徴」のようなイメージをレクサスよりも上手く掴んでいる節があります。日産によって掻き立てられた視点を持ってメルセデスSやBMW7を振り返ってみると、「あれ、こんなに大人しかったっけ?」と拍子抜けするくらいです。

  しかし日産のような「バブリー」なイメージに寄り添ったデザインは残念ながら普遍性に乏しく、「風化」が早いように思います。かつて「丸目のEクラス」は多くの人から高級車の代名詞として認識されましたが、今見ると当時の面影はなく、このメルセデスのデザインを「傑作」と賞する人もほとんどいないでしょう。日産のデザイナーもこういった先例に多くを学び、日産単独の設計/製造としては最後になるかもしれないスカイラインが「有終の美」を飾るのに相応しいデザインを模索したのだろうと思います。「過剰な演出」や「機能性を失った華美」を徹底的に排除するという手法を突き詰めて辿り着いた結論が・・・予想外に「BMW」のデザインに近似するものだったのだと思います(いままでBMWデザインの美点に気がつかなくて恐縮です)。

   いよいよターボも設定されて、184psの「320i」、211psの「200GT-t」、245psの「328i」と見事に3グレードが並んで、「だからなんだ?」という気もしないでもないですが、いざ2Lターボが出てみると、スカイラインと3シリーズの関係がなんだか、かつての「スカイラインvsマークⅡ」のような一般人からしてみたら何のことだか分らない、「接近戦」が再び始まったようですね。


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2014年6月26日木曜日

レヴォーグ を誤解してました・・・

  なんだかんだでやっと納車が始まったらしいスバル・レヴォーグですが、予定日のズレ込みが深刻で、車検切れでクルマが無くなってしまう人とか結構いるみたいですね。ハスラーもヴェゼルも新型車種として発売してみたら、ドカーンとオーダーが殺到してしまったようで、いくらなんでも計画生産が基本の量販車ですから、とても捌ききれないのはよく分ります。しかしレヴォーグは正月開けから予約を獲っているわけです。試乗もせずにオーダーした人々のスバルへの絶対的な信頼にあぐらをかいて、半年も準備期間があっても平気で遅れるなんて許されんのか?という気がしますが。納車待ち期間が長期化することが「人気のバロメーター」とか考えてるといずれ足元すくわれますよ。

  「スバルの新型車」というだけで自動車メディアというのは、とても寛容で例えそのデザインが言語道断レベルであっても表立って批判することは業界のタブーらしい。「スバル」「BMW」「メルセデス」この3大ブランドだけには、自動車ライターは絶対に逆らってはいけない。なぜならこれらのブランドを愛する人の割合が自動車雑誌を支える愛読者に多いから。特にヤバいのがスバルで、もしスバル車をボロクソに批判しようものなら、「スバリスト」のネットワーク内で瞬く間に広まって、編集部には抗議が殺到し、担当ライターは最悪の場合「引退」を余儀なくされます。

  なので、昨年末から大々的に取り上げられてきたレヴォーグの批評はどれも「?」なものばかりで、サーキットで試乗したジャーナリストの皆様のコメントも全く参考になりません。「基本がしっかりしていて、全速度域でまんべんなくパワーが出せる」とか言われても、スバルの300万円もするクルマなんだからそれくらい当たり前だろ!とツッコミたくなる。知りたいのは燃費が伸びないことが分り切っている、レギュラー仕様の1.6Lターボの仕上がりはどうなのか?という1点です。2Lターボはもうスポーツカーそのものだから、細かいことは気にしないけど、1.6LターボがBMWやメルセデスのような「しょっぱくて貧乏くさい」エンジンとは一線を画した存在になっているのか?が最大の焦点です。

  そもそもスバルが国内専用車に1.6Lターボを載せてくるという、やや「いかがわしい」行為に不信感がありました。一体何がしたいのか?実用性を高めるならば自社開発のHVを使えばいいのではないか? 統計などは特にないですが、かなりの数のレビューを見た限りでは、「ユーザー満足度」がやや低いのではないかと思われるのが、ブランドを問わずこの「1.6Lターボ」というタイプのエンジンのようです。もちろん文句を言っているユーザーの多くはエンジンの絶対的性能を過信して購入しているタイプの人が多いのだと思います。2.4L直4NAよりも燃費が良いわけでもなく、気持ちがよいわけでもなく、軽いわけでもない・・・ただうるさいだけ。

  なんでこんなエンジンをメーカーは使うんでしょうか?それはターボの有無で中型車と小型車の両方に使い回しができるからです。あとはちょっとスポーティな印象をユーザーが勝手に持つために、売りやすいというのもあるのでしょうか。スバルもそんなトレンドでレヴォーグのベースグレードを作ってしまった?という穿った見方をしていました。これを皮切りにレガシィB4もインプレッサもこのエンジンで済ませてしまうんじゃないだろうか? 新型Cクラスが日本での最底辺グレードにいよいよAクラス用の1.6Lターボを使うみたいですが、こんなエンジンで400万円以上も払う人が本当にいるのでしょうか・・・。

  しかし先日、コンビニの前から出て行くトラックが車線に入って流れに乗る様子を見かけて、スバルがレヴォーグに込めた真の狙いが少し分りました。ワゴン専用車のレヴォーグにとって、重要なポイントは荷室の積載量だったりするわけですが、もしこのクルマをHVにしてしまったら、このスペースが大きく制限されてしまうわけです。よって荷室の容量を確保するためにも、ガソリンエンジンの選択は妥当です。そしてその広い荷室に重量のある積載物を載せたときに、トラクションが確保しやすいAWDを全グレードに採用しつつ、重くなったクルマでも初動時に低速トルクを確保できることで、動きがスムーズになるガソリンターボを全グレードに使うのもまた理に適っているわけです。

  さらにCVTがクロスミッションといって、加速重視のギア配分がされているので、重いクルマでもスムーズに流れに乗るための工夫が見られます。スバルが設定したコンセプトはとても整合性があり、全ての機能が同じ方向を向いていることに気がついて、これまで散々にディスって「すみません」という気分になりました。自動車雑誌のせいにするわけではないですが、なぜメディアは「スポーティ」だとか「ダウンサイジング」だとか本質からズレたことばかりを宣伝しているのでしょうか? これではメディアによって勘違いをして、レヴォーグを買う人が続出し、「気持ちよく走れない」とか「燃費が良くない」とか、まるでBMW116i/120iやメルセデスA180/CLA180のような不満が噴出するのは目に見えてますが・・・。1.6Lターボエンジンの本質は「トラック/ワゴン用」の商用車向けエンジン!とは口が裂けても言えないことではありますが。

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2014年6月1日日曜日

スカイライン・クロスオーバー 今の日産を体現しているかも・・・

  特に不祥事があったわけでもないのに日産への嵐のような批判が渦巻いています。折しも日産はスカイライン、ティアナ、エクストレイルの3車種を立て続けに日本市場に投入したタイミングで、しかも3車種ともに世界中のメディアで大絶賛されているというのに、本国であるはずの日本でなぜバッシングを受けるのか? プロのライターの評論から素人のつぶやきまで、さまざまな形での「ブーイング」が聞こえてきますが、とりあえず読んでみると、その中の90%以上は日本市場で売られているクルマの現在地点がよく解っていないという「誤解」が原因という印象です。

  日産の国内販売台数は、かつての「指定席」2位から現在では5位へと後退しています。これを根拠に「日産のクルマ作りは間違っている!」と断じる専門家もいますが、クルマへの需要が予想以上の早さで軽自動車へシフトしている「構造の変化」が大きいように思います。日産を追い越していったメーカーが普通車に専従するスバルやマツダならば日産のクルマ作りに問題があるでしょうけど、実際はホンダ、ダイハツ、スズキの「軽自動車3強」が市場動向の追い風を受けて伸びた結果、日産の上に出たに過ぎません。そして現在では日産は三菱と提携して軽自動車ラインナップを増やし始めて軌道にのりつつあるので、このまま順調に伸びれば、最終的には2位へと戻っていくのも時間の問題でしょう。

  日産がこのまま軽自動車などのラインナップを増やし、国内2位へ返り咲いたところで、他のメーカーの経営がその分苦しくなるだけじゃないかと思います。日産が軽に力を入れれば、スズキ、ダイハツ、ホンダが圧迫され、かつての「シルビア」のような小型スペシャルティカーを作れば、マツダやスバルの息の根を止めてしまうかもしれません。もちろん適度の競争原理が働いてこと、良いクルマ作りが維持されるわけですが、高齢化と都市部偏住によりクルマユーザーの減少に歯止めがかからない国内市場向けに、日産が本気を出してしまったら、他社にとっては目も当てられない地獄へと堕ちていくしかないでしょう。

  日本の自動車業界は、マツダやスバルといったグローバルでも10番手以下の中堅メーカーが、世界最先端の技術を持つという「競争力」の高さが特徴です。各メーカーが抱える系列のサプライヤーは国際的な活躍を見せ、ボルボが久々に作った自前のエンジンの開発を請け負ったりしています。ジャガーのオリジナルのパワーユニットに採用されている「スーパーチャージャー」も日本メーカーが手掛けています。そんな「日本ギルド」を束ねる日産の技術がひとたび動員されれば、それこそポルシェやBMWといった超一流のスポーツブランドだって楽々と撃破することができてしまいます。ホンダ、スバル、マツダの3社でも超一流の仕事はできますが、日産ならば「確実に仕留める」仕事ができます。

  一般に日産がドイツ2社(ポルシェ・BMW)に牙をむいたクルマと言えば、GT-Rやスカイラインセダン/クーペが有名ですが、スカイラインにはSUVモデルの「スカイライン・クロスオーバー」というモデルがあって、これもまた「打倒!ポルシェ!BMW!」をハッキリと意識して設計されています。残念ながら日本ではとてもマイナーな存在で、「カイエン」や「BMW X5/6」に対抗するモデルを日産が発売しているということをそもそも知らない人も多いです。そもそもカイエンの3.6Lを超える3.7LのV6を開発した上で作ったクルマで、日産がドイツ車を超えるボディ剛性を与えた、スカイラインのプラットフォームを使っているわけですから、仕上がりも素晴らしくアメリカでは非常に人気があります。

  ジュークやキャッシュカイ(デュアリス)で欧州のSUVシーンを先導した日産のクオリティは、日本以外では広く知れ渡っていて、ポルシェやBMWごときが小手先の見よう見まねで作ったSUVがいくら高価でも、日産を大きく突き放す品質に達するなんて誰も思っていません。日産が2000年代後半に完成させたSUVライン「ジューク」「キャッシュカイ・エクストレイル」「スカイラインクロスオーバー」が世界市場で残した実績を考えると、このメーカーは独自の「ブルー・オーシャン」を見つけ出し、他社が羨むような成功を手にしています。

  日本の日産ファンが「神格化」している第二世代のスカイラインGT-R(R32〜34)は、なんだかんだいっても国内専用車でいた期間が非常に長いクルマでした。1989年の段階で600psに耐えるという量販車としては異次元の性能にはもちろん敬意を払いますが、その伝説をもとに現在のV35以降からの新しい設計のスカイラインを批判するのには賛同しかねます。V35以降のスカイラインは常に「敵」を求めて世界を彷徨い、狙ったライバルを確実に撃破するための「戦略車」となりました。日産の「技術」「バランス感覚」「適応力」の全てが世界最高水準であることを示す「広告塔」の役割は十二分に発揮してきたと言えます。

  そんな現行世代のスカイラインの活躍を伝えることを一切放棄して、ライバルのドイツ車ばかりを必死で祭り上げてきた日本の自動車ジャーナリズムが、実は「空虚」で「形骸化」したものだったということが、ネットメディアによって明らかにされつつあります。日本のジャーナリズムの常識では、エクストレイルが「9」点(10点満点)でメルセデスの新型Cクラスが「6」点なんていう評価は絶対にあり得ないことですが、イギリス最大手のメディアが公表している結果です。欧州ではとっくに「ガソリンターボは時代遅れ」と報じているのに、日本では「日本メーカーは早くターボ化すべき」といった愚かなコメントをするジャーナリストが多数派だったりするのです・・・。もう「雑誌」や「本」の評価なんてまったく信用できないですから、日産ディーラーでスカイライン・ティアナ・エクストレイルを乗り比べて気に入ったものを買うのが一番賢い「クルマ選び」だと思うんですよね。


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2014年5月15日木曜日

日本車でデートがしたい! レクサスRC と スカイラインクーペ

  ダイハツを除く日本メーカー各社が死力を尽くした総力戦の様相となってきているのが「SUV大戦争」。「ハリアー」「エクストレイル」という10年前からSUVを牽引している有名車種が同時に発売されるなど、激しく火花が散っています。どちらも力が入り過ぎで、SUVがほしいならどっちを買ってもとりあえず損は無さそうな完成度です。さすがにトヨタも日産も勝負するジャンルをしっかり選定していて、明らかに「勝つため」のクルマを作ってきました。価格設定もとてもシビアでお互いに相当に意識したものになっています。

  トヨタ・日産の両雄に加えてホンダ、スズキといったグローバルでトップ10に入るクラスの「メガ・メーカー」にここまでやられては、去年は飛ぶ鳥を落とす勢いだったCX5もあえなく失速するしかないですね。新型4台に対抗するマツダCX5・スバルフォレスター・三菱アウトランダー・日産ジュークの4台もとても評価が高くて、今もしぶとく売れ続けています。これだけ競争が激しいと値引きも乱れ飛んでいるでしょうし、どれも文句ない出来ですし、予算や用途に合わせていくらでも選ぶことができますから、今さらBMW X1やアウディQ3など選ぶ必要が全く感じません(ダサいし)。BMWディーラーで虐げられるのが好きなドMの人にはぴったりかもしれませんが・・・。

  国産SUVのレベルがこの数年で飛躍的にレベルアップしましたが、事の起こりはマツダが2年前に出したCX5で、一昨年・昨年と2年連続でSUV国内販売ランキング1位を獲得しました。これまでミニバンばかり目が向いていたファミリー・ユーザーや、プリウスやアクアへ向かう高齢者をも獲得して、SUV市場をメジャーにしました。最近じゃマツダ車が発売されるところではどこでも「"鼓動"革命」が起こっていてますね。まさかスバルも日産も、新規車種であるCX5の前に、熟成を重ねた自慢のフォレスターやエクストレイルが苦杯をなめるとは思わなかったでしょうね・・・。

  蛇足かもしれませんが、「"鼓動"革命」はさらにDセグセダン/ワゴンとCセグハッチバックへと及び、まさかの輸入車ユーザーが大挙してマツダディーラーに押し寄せるという事態にまで発展しました。欧州カーオブザイヤーでも上位に名を連ねた初代アテンザ、初代アクセラの遺伝子がいよいよ本国・日本でも評価されるようになりました。評論家の"掌返し"で世論が「マツダ称賛」へと誘導されている部分も大きいようですが、マツダが単体でメルセデス・BMW・アウディ・VWを相手に「安さ」ではなく「クルマの良さ」で果敢に闘ったことは紛れもない事実です。

  さてマツダの「"鼓動"革命」はさらに今年のデミオ/CX3と来年に予定されているロードスターと続きます。もはやサプライズではなく、新型デミオが日本のコンパクトカー市場を相当なインパクトを与え、VWやフランスメーカー車を強烈な閃光で薙ぎ払う構図が、マツダファンでなくても頭に浮かぶでしょう。ロードスターはトヨタ/スバル連合のあのFRスポーツに格の違いを見せつけるだけでなく、メルセデスやBMWのカブリオレを徹底的に追い込む「正当派スポーツ」でしかもデザイン面でも圧倒する存在になるでしょう。実際現行のNCのエクステリアの奇抜さ(要するにダサい)に腰が引けて、新型を待っている人も多いでしょう。

  さて破竹の勢いのマツダ車を相手にするのは、どのメーカーも骨が折れるところですが、マツダの規模では車種に限界があるので、マツダがやらないジャンルでは他のメーカーにとってはそれなりに気楽に取り組めます。ただしそういうジャンルではどうも新陳代謝が遅くなりがちで、SUVなどで見られた激しい進化が見られない傾向にあります。たとえば「フルサイズ高級車」にはレクサスLSという世界の頂点を極めるモデルが存在しますが、2006年に投入されたままFMCも経ず今に至っていますし、ライバルのメルセデスSクラスも日本の街角で良く見かけるようになりましたが、進化しているのか退化しているのかよく分らないくらいです。

  さらにDセグの「2ドアクーペ」には今後アテンザが参入するかもしれませんが、なかなか続報もないので、まだまだ先になりそうですし、近年のマツダはスペシャリティカーが嫌いなようなので、そもそも無いかもしれません。そんな中で今年はレクサスに久しぶりに2ドアのカタログモデルが復活します(レクサスRC)。そしてそれにシンクロするようにスカイラインクーペのFMCも予定されています。SUVもいいですが、やはりプライベートカーの王道として、ラグジュアリーな2ドアクーペも「隙」が無いほどのクオリティ同士で競い合いを期待したいです。

  この2台は予想ではそれぞれ違ったタイプのエンジンユニットを搭載するので、3.5L&2.5LのHVと5L&3.5L&2.5LのNA、そして2Lターボと少なくとも6種類もある多彩な選択ができるのが興味深いです。エンジンのバリエーションが少ないと言われている日本の高級車の弱点を見事に補っています。一方でグレードが多いと言っても、ターボの強弱でグレードを分けるBMWやアウディのようなやり方はちょっとセコい気がします。高性能なサスを装備して、静かで豊かなパワーを出すパワーユニットを持った「本物」のラグジュアリークーペっていいですね。4シリーズは全く気持ちが向かないですけど、レクサスRCは待ち遠しいです。

  
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2014年5月1日木曜日

「トヨタ」を批判する人にひとこと・・・

  国産メーカーで唯一、国内でもプレミアムブランドを展開しているトヨタ。日本での「レクサス」立ち上げ時には、この前まで「アリスト」として売っていたクルマが「GS」となり、同様に「アルテッツァ」が「IS」、「ソアラ」が「SC」といわゆるバッジエンジニアリング(ブランドマークの交換)だけで、価格が100万円以上跳ね上がるという「画期的」な商習慣が日本に導入されました。

  世界の頂点を颯爽とひた走る「ハイパー・メーカー・コンツェルン」トヨタグループですから、もちろん批判されることは覚悟の上での「余裕の"強行"導入」です! そしてまるで世界的な経済危機が到来することを予期していたかのようで、追従して日本上陸を目論んだアキュラはタイミングを逸して断念せざるを得ませんでした。フラッグシップの「LS」以外の車種には一切投資なし。国内の販売網には相当にお金がかかりましたし、当然に赤字転落の憂き目にも遭いましたけど、10年20年のスパンで見たら確実に日本市場に「プレミアムブランド」は定着するので、長い目で見たら「日本上陸」は絶対に正解です。

  どんなクルマを持っていったって、異なる商習慣ですから、周知されるまであらゆる抵抗をうけます。世界を完全に黙らせた奇跡のスーパーサルーン「LS」を投入しても批判されます。BMWと互角に闘える現行の「GS」「 IS」を前倒しして発売しても、まあ無意味だったんじゃないでしょうか。とりあえず「レクサス」の営業力で旧型シャシーを使ったクルマを売る事ができるのか?という遠大なる実験の場だったのだと思います。カローラもどきのISが500万円で売れてしまう恐るべき「レクサス・マジック」が展開されました。

  多くのクルマ好きには「茶番」だということが解っていましたから、この時期はまだまだクラウンやマークXが売れました。一方でマジェスタのお客は順当に「LS」へと移っていきました。この時期のレクサスで価格通りの価値があるのは「LS」だけだったわけです。やがてレクサスは世界の経済危機が収束したころを見計らって、GSの「本格的」なFMCを行いました。この頃からクラウンの販売が下火になります。クルマの価値がよくわかっているユーザーが次々にGSへと乗り換えます。そして同様にISも刷新され、いよいよDセグの頂点に立つクルマになりました。

  さてトヨタブランドの「上客」が次々にレクサスへと乗り換えていくわけですが、今後の「トヨタブランド」はどうなっていくのか? 一般的には高品質なクルマ作りをレクサスへと移管したのだから、「低価格」のモデルを中心に拡充が行われると考えられています。しかしここ数年に発売されたモデルを吟味すると、おそらくブランド全体の平均販売価格は上昇していると思われます。トヨタの売れ筋は「安いクルマ」ではなく圧倒的に「ちょっと高いクルマ」へとシフトしています。

  まずハッキリとしたトレンドとして、「ヴィッツよりもアクア」「プレミオ/アリオンよりもプリウス」が圧倒的に売れています。さらにプリウスもより高価格な「PHV」や「G's」が人気を集めます。もちろん高ければ高い方がいいというものではなく、300万円に近づくまでは「高級化」が好まれます。これが400万円を大きく越えて「レクサス」の領域(500万円~)に近づくとさすがに売りにくくなるようです。

  簡単に言うと「マークX」「カムリ」「プリウス」「ハリアー」「エスティマ」「ノア/ボクシィ」「86」といった主要モデルはことごとく300万円に収束した価格設定になっています。これより高いと「クラウン」「アルファード/ヴェルファイア」といったネームバリューのあるクルマしか成立しないようで、「SAI」は完全に価格設定を見誤っている例です(トヨタは確信犯でしょうけど)。もちろん300万円を下回る「アクア」「カローラ」「ヴィッツ」も売れていますが、それ以外は「オーリス」「ウィッシュ/アイシス」「ラクティス」「ポルテ/スペイド」「パッソ」「ラッシュ」「IQ」と地味な低価格車が並んでいますが、そろって人気はいまいちです。

  さらにトヨタは「ピクシス」という軽自動車も販売していますが、これもまったく売る気はないようで、存在感はまったくありません。トヨタが74万円の軽自動車を売っているなんてほとんどの人は知らないんじゃないでしょうか。トヨタブランドは結局のところ、300万円ラインのクルマが非常に高い競争力を持っていて、それがよく解っているユーザーに手厚く支持されています。よく「トヨタは安物!」などと発言している人がいますが、どこを見て言っているんだろう?トヨタブランドの本質が見えているのか?という気がします。

  下のグレードだけを見て「トヨタ」とか言われても困りますし、大抵そういうことを言っている人は300万円しないくらいの輸入車に乗っていたりするわけです。正直言って、「ゴルフ」「A3」「Aクラス」「1シリーズ」「V40」の争いなんて、トヨタの主要ラインの足元にも及んでいない低次元な争いなんです。そもそも200万円のマツダ車に負けてしまうレベルなんですよ・・・。カーメディアが未だに盛り上げようとしている「輸入車Cセグ」・・・まあ「ゴルフ」が悪いクルマとは思わないですけど、そのレベルから「トヨタ」を批判するのは、まったく理解できないですね。

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2014年4月24日木曜日

日産フーガ・クーペは幻か?

  「フーガ・クーペ」「アテンザ・クーペ」「レクサスGS・クーペ(ソアラ?)」が一斉に発売されたらどれが一番売れるのか? やっぱりFRの日産VSレクサスの一騎打ちになるでしょうけど・・・コストパフォーマンスのマツダも捨て難いですね。3ブランドともにデザインには自信を持ちつつあるようなので、その気になればBMW6シリーズに迫るくらいの出来が期待できそうです。

  そんなクルマを作っても日本じゃまったく売れない!というのがこれまでの通説でしたが、東京の中心部の商業施設が次々に建て替えられていく中で、駐車スペースは確実に拡大していて、走行不能な道さえ避ければ、北米のフルサイズセダンを走らせることも難しくないです。休日の六本木や赤坂の地下駐車場に停めれば、周りは「ガヤルド」と「クワトロポルテ」が大ブーム!?といえるくらいの割合で湧いている。今の東京を象徴するクルマがこの2台と言ってもいいくらい。「ガヤルド」のカーシェアリングやレンタカーも増えてきました・・・。

  残念ながらレクサスは「LS」以外は全く人気がない。どうも丸目のメルセデスと同じくらいに貧乏くささが出てしまうので嫌われているようです。「プレミアムブランド」はあくまで普通のクルマに「ちょい足し」のレベルだから、まったく「スーパー」な存在ではない。そんなことは中古車価格見れば一目瞭然で、「スーパー」なら値崩れなんてしない。しかし「金持ちアピール」だけはしっかり伝わってしまうのが、なにかと面倒くさいですね・・・同情します。それはともかく「ガヤルド」「クワトロポルテ」そして「レクサスLS」。この3車種が走り易いように東京の道はどんどん改良されています。

  この「うすら安っぽい」都心の雰囲気がどうも好きになれないんですよね。なんでもかんでも「スーパー」を求めてしまっているアホ〜な空気が・・・。平日の夜の都内を走れば、なんの珍しさもなくハマー・リムジンを見かけます。一体ここはアメリカか?中国か?韓国か?と見まがう光景・・・いい年した大人が一人5000円払って、ぎゅうぎゅうに乗り込んで「セレブごっこ」やってて虚しくないですか? 結局のところ東京なんて田舎者が集まっただけの「洗練」とは真逆の街でしかないんですよね・・・。

  そんな愚かな風潮(レンタルしてまで仰々しいクルマに乗る)を変えられる力があるのが、日産・レクサス・マツダじゃないかと思うのです。こんな「バカ全開」のクレイジーな都心に乗り込んで行けるクルマを求めるならば、これらのブランドのフラッグシップ車が最適なんですが、もうちょっとオシャレでもいいかなと思ったりもします。スカイラインクーペやレクサスIS-Cといったラグジュアリーに振ったクルマもありますが、もうワンクラス上のクーペが日本車にあってもいいですよね。そんなデカい2ドアクーペなんて一般に需要がないと言われていますが、それは10年前の常識であって、クレイジーな現在の東京ならば予想以上に人気になるんじゃないでしょうか。

  とりあえず「日本車」に乗っていてとても気分が良いという人々がかなりの割合で存在しますし、それはレクサスの「現在地」を見ても明らかです。そしてもう少し大胆な日本車があってもいいだろうという潜在的欲求は、既存ユーザーではなくクルマを買う事にやや後ろ向きな人々からひしひしと感じたりします。彼らの言い分は、都心の駐車場で隣りにクアトロポルテがやってきても全然負けないくらいの「堂々」とした佇まいがあれば全然買う!!!ってことです。ただし500万円台に抑えて!というのもありますけど・・・。

  セダンが「ジリ貧」だと感じているならば、何らかの手段があってもいいですよね?もうすでにセダンとしての内外装や価格設定においては日本メーカーが様々な試行錯誤の末にベストなバランスになっているわけです。そしてその上でさらにブレイクスルーを狙って、350psなのに15km/L走ってしまうスゴいクルマをいとも簡単に作ってしまうのだから、マセラティを越えるデザインの「フーガ・クーペ」なんて朝飯前じゃないですか?って思ってしまうのですけど。インフィニティQ100の発売の前にぜひQ70(フーガ・クーペ)をお願いしたいです。


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2014年4月16日水曜日

スバル 新型レガシィ このクルマが今後のブランドを決定付けるわけで・・・

  レガシィがいよいよフルモデルチェンジを迎えようとしていますが、モデルサイクルの終了が近くなったBMレガシィB4の警察用車両(パトカー)が警視庁に採用され、至る所で見かけるようになりました。東京も雪の日が割と多くなって、FRのクラウンでは稼働できないい日が増え、本来の業務に支障をきたし、用を成さないからってことでしょうか? しかしあんまり感心しなかったBMレガシィB4のデザインは、白黒の塗り分け塗装とは相性が良いようで、やたらと高級感が引き立っていて不思議といい感じになってましたね。

  フラッグシップの「レガシィ」がFMCということは、また新たに「スバル」のコンセプトが展開され、他のモデルへと受け継がれていく「サイクル」が始まることを意味します。現行のレガシィのデビューから始まった前回の「サイクル」は、少々厳しいことを言うと「レガシィ」のデザインが客観的に見て「好評を得るもの」でなかったために、そのコンセプトは貧弱な表現しかできず、後に続いたインプレッサやフォレスターも大きなインパクトを残せませんでした。もしアイサイトによる売上好転がなければ、確実にレガシィB4は日本市場から姿を消していたかもしれません。

  満を持して投入された「インプレッサG4」は本来ならば、次々に大型化するDセグに見切りをつけた層の受け皿になり得るサイズなのですが、現実には冴えないデザインが災いしてその役割はまったくと言っていいほど果たせず、まもなく登場するアウディA3セダンを待望する声が聞こえてくるほど。インプG4のデザインではどう考えても太刀打ちできず・・・。一方でフォレスターも2年連続でマツダCX5の後塵を拝し、完全にデザインで負けてしまった印象が・・・。ハリアーやエクストレイルの登場で存在感は小さくなるばかり。

  それはさておき「アイサイト」のおかげでもなんでもいいですが、とりあえず次期レガシィB4も無事日本で発売することが決まっているようなのでひと安心といったところです。めでたしめでたし・・・じゃなくて、日本市場撤退か?という窮地に追い込んだBM型レガシィを一体どこまで改められているのかが大事で、また「惜しい」というか「微妙〜」なレガシィだったら意味がないです。レクサスISやスカイラインと比較しても「欲しい〜!」と思わせるような魅力が「解り易く」盛り込まれていてほしい! とりあえず日本でDセグセダン買う99%の人が後ろ髪を引かれるような気合いの入ったサルーンであってほしい!

  既に発表されている北米モデルのデザインは・・・・、ちょっと恣意的な見方かもしれませんが、いよいよ「スバルはアメリカが大好きです!」とばかりに懐に入り込んでいくようなデザインになってきたのでは!?と思う次第です。「旧中島飛行機のクルマがアメリカを侵略しに行くことにカタルシスを感じる!」なんて完全なる戦後世代の私が言ったところでただの茶番なわけですが、それでも祖父は大正生まれ、シベリア抑留から苦難の末、逃れてきたという話を子供の頃に聞きました。戦争とスバルをいまさら重ね合わせるのは不謹慎だし失礼千万なことではありますが・・・できればレクサスISのように日本の様式美を叩き付けるような痛快なデザインにして欲しかった。

  何より悔しかったのがシカゴMSで初公開された時の、米国記者のやや期待はずれだった感を思わせる失笑じみたリアクション。「マツダ」「レクサス」「インフィニティ」とアメリカ人の度肝を抜くコンセプトカーばりに洗練された次世代デザインが次々と市販化され、「日本車のデザインが大きく変わった!」と印象づけてきた中で注目され過ぎていた部分もあったようですが・・・。

  それでもこれはあくまで北米モデルでありどう考えても日本で売るには大味すぎる。日産のティアナは北米・中国での戦略車としての表情を残したまま日本でも発売されてしまいましたが、トヨタと緊密な提携関係にあるスバルは、カムリHVの成功例に追従するような日本専用フェイスを用意してくれると信じていますがどうなることか?


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2014年4月8日火曜日

マツダの覚醒 ラインナップは全て「スペシャリティカー」

  マツダ車の「顔」が次々と同じになっていく・・・。デザインテーマ:「鼓動」は想像以上に潰しが利くようで、とても柔軟性が豊かなデザインコンセプトなのだと気がつきます。見事なことに出てくるモデルは常に既発のモデルを追い越すほどの出来映えで、CX5→アテンザ→アクセラという順番で展開されましたが、いずれも期待を裏切っていませんし「鼓動」デザインに飽きるという感じもないです。

  さらに今年はデミオが登場し、来年にはロードスターにも同じデザインが使われるようですが、さらにまだまだ「追い越して」行きそうなポテンシャルをメーカーにもデザインにも十分に感じられます。ちょっとマツダびいきで恐縮なのですが・・・。

  デザインの優劣なんて個人の主観に過ぎないことを百も承知で話を進めますが、例えばマツダとBMW。「CX5とX1」「アテンザと3シリーズ」「アクセラと1シリーズ」という同クラスで比べたときに、素晴らしいことにマツダが「全く負けていない」という事実に気がつきます。もちろん同クラスとはいえ「マツダ渾身の主力モデル」と「BMW風味の廉価モデル」の争いですから、メーカーの傾倒度がそのまま出てしまっているだけで、直ちに「マツダ>BMW」というブランド価値を示すものでは全くありません。

  それでもマツダの「クラスで最高のデザインのクルマを作る!」という姿勢は、もはや一過性のものではなく、従来では考えられなかった「日本メーカー車が欧州メーカー車をデザインで越えて行く時代」がやってきたという実感すらあります。しかしまだまだ欧州では傍流に過ぎないC/Dセグで勝利したに過ぎず、やはり欧州メーカーの最激戦区である、A/Bセグで勝ってこそ本物。

  しかし残念ながらこのクラスにおける日本のエース・スズキが韓国車やVWグループとの価格競争に敗れて欧州ではフェード気味。トヨタと日産はそれなりに切り込んではいますが、利幅の小さい小型車ということでどうもやる気が出ない様子。小型車出身のくせに小型を作らなくなったスバルは欧州では手も足も出ません(誰かこのメーカーに注意する人いないのか?)。

  つまりマツダだけが日本メーカーとして、かつて日本車が繁栄を誇ったはずの「欧州小型車市場」の奪還を真剣に考えている状況です(もちろんトヨタが後押しをしてますが・・・)。現在の欧州市場で一番重要視されるのは「デザイン」。20000ユーロ(アテンザの廉価モデルよりかなり安い)で買えるVWグループのセアト車が、先代アウディA4のノックダウン生産車だったりするわけで、価格の高低にかかわらず「デザイン」がまとも。日本で売られているラインナップをみれば解りますが、Bセグでも当たり前にオープンカーの設定がある・・・。

  そんな「ハイカラ」な市場で、次々と注目を集めるマツダデザイン。日本では「マツダは一体どうしちゃったの?」みたいな受け取られ方をしていますが、とことんやらないと欧州市場では勝てないし、負ければすぐに「倒産」という凄まじい現実。チーフデザイナーをあっさりルノーに引き抜かれ・・・それでも進化を続けなければ明日はない? いよいよ今年は新型デミオとSUV版の「CX3」を欧州に投入し、非欧州圏メーカーでナンバー1の座に手が届くのか。




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2014年3月19日水曜日

アクセラとレヴォーグの「ゴルフ退治」は上手くいくのかな・・・

  日本のモータージャーナリストは偉い。発売の1年前くらいから「ゴルフ、ゴルフ、ゴルフ」と大合唱を続け、それは大きなうねりとなって日本市場を駆け抜けた。ゴルフをめぐる一連の騒ぎを、何かに例えるなら「ボジョレーヌーボー」みたいなものかもしれない。まだ熟成が足りずにワインとしての価値なんて二足三文の「ボジョレーヌーボー」が日本ではフルボトルで2000円とか平気でする・・・。せいぜい500~600円が相場だろうに。昔になにも知らずに期待して飲んだら、何の感動もなかった。メルシャンの300円のワインと何も変わらない。

  ゴルフもまた、VWが今ある技術をシンプルに使って、比較的あっさりとした実用車だ。良く回るエンジンが楽しめるわけでもなく、ハンドリングが冴え渡るでもなく、特筆すべき点は特にはない。それがこのクルマの魅力だ!と自信を持って言える人ならいいのだけど、このクルマを買っている多くの人はひょっとして「ボジョレー」に陥っているのではという気がする。やたらと勧めてくる評論家達は「そんなワイン」は絶対に飲まないのだけど・・・。

  ただこれらの評論家の存在が、マツダやスバルを熱くさせているのも事実のようだ。この2社は中型車中心のラインナップということもあり、この「ボジョレー」ことゴルフにおめおめ負けるクルマは作れないという宿命にある。よってゴルフを目一杯分析して、確実にその上を行くクルマを仕上げるようになっている。輸入車のCセグメントの中でなんだかんだで最も高い水準にあるのはゴルフだ。それ以外のCセグ輸入車はまだまだ「めちゃマズのワイン」に過ぎない。

  そもそもCセグメントに「プレミアムカー」(高級車)なんて概念が付加されたのはここ数年のこと。それまではひたすらに生産効率のみを追求した「大衆車」しか存在しなかった。このセグメントで最も品質に優れていてグローバルで歴代にもっとも売れたクルマは、ゴルフではなくカローラ。他のクルマは全てカローラよりも低品質というのが常識だった。

  しかしスズキを始めとした日本メーカーが欧州でさらに小型のBセグメントのツーリングカーを売るようになると、欧州各社もこれに追従し、M&Aでスズキの技術がGM(オペル)やVWに流出することで、Cセグの「大衆車」としての立ち位置がやや変わり始める。欧州各地でA/Bセグ車が多く売れるようになると、一回り大きいCセグにやや「高級」なイメージが付くようになります。日本でも同じように「インプレッサ」や「アクセラ」がかつての「カローラ」や「シビック」よりもいくらか堂々としているように見えますよね。

  そして俄に巻き起こっているのが、ボジョレーならぬ「ゴルフ」騒動だ。まだまだCセグメントは大衆車時代の設計から大きく切り替わっていないので、本格的な高級化はまだまだ先が見えてこない。メルセデスやBMWのCセグなどは、全くと言っていいほどにメーカーのやる気が伝わってこない残念すぎるクルマとして売られている。日本の主力Cセグを一堂に会してマツダやスバルは試乗研修をやっているが、それを受けた人に聞くとゴルフ、インプレッサ、アクセラ以外はハッキリと解るレベルでクルマが悪いらしい。

  アクセラHVは内装・外装・クルマの乗り味どれを取ってもレクサスCTを上回ってしまっているようだが、レクサスは最底辺グレードのクルマのことなどいちいち気にしていない。ゴルフ、インプレッサ、アクセラの3台だけがまともであとはメチャクチャヒドい。これがひとクラス上のDセグになるとまったく事情が変わる。もちろんDセグにしたってメルセデス190やBMW3が出来た頃はヒドいものだったそうだが・・・。あと10年もしたらCセグも現在のDセグくらい各社から納得のモデルが出揃うのかもしれない。とりあえず現段階ではVW、スバル、マツダの3つどもえの争いがこのクラスを発展させてくれるだろうけど。







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2014年3月12日水曜日

レヴォーグは何が秀でているのか?

  どの雑誌を見ても「レヴォーグ!レヴォーグ!レヴォーグ!」なんですけど、評論家の皆様の歯切れが悪い・・・。あくまでも憶測ですけど、スバルのあの店長のゴキゲンも良くない。結構売りにくいクルマみたいですね。まだスバルのオンライン見積もりにすら登場していないので、実際にどれくらいの価格になるか検討も付かないですが、もし買うとするならば「2.0GT-Sアイサイト」の一択なんでしょうけど本体で356万4000円。単純にWRX STI「A-line」で本体315万円ですから、ワゴンボディにこだわらない人にはちょっと手が出しづらい。

  レヴォーグはFA20DITという「スクエア」ターボに対してA-lineはひと昔前のEJ25DITで「ショートストローク」ターボ。これは好みの問題なのかもしれないけど40万円の価格差とは無関係の要素に思う。どちらもスバル得意のビルシュタインダンパー。アイサイトの関係でブレンボ製ブレーキが付けられないレヴォーグに対し、A-lineはオプションで装着も可能。まあこれだけ見ると、私のような一般人がスバル車で想像する限りでは、レヴォーグという選択は否定的になってしまいます。

  最大のポイントは「アイサイト」などの安全装備と「全車速追従クルコン」といった快適装備なんでしょうが、確かに高速道路移動でのクルコンはもはや欠かすことの出来ない必須機能ですが、A-lineに付いてる旧型のクルコンでも十分に快適なので「全車速追従」まで絶対に必要かと言われれば微妙です。ボディ形状とアイサイトの違いだけで40万円をどう見るか?明らかにクルマの進化の方向性が高齢者へと向かっている気もします。

  おそらく売る側の人も買う側の人もどこか釈然としない気持ちを抱えながら商談しているんじゃないですかね。従来のスバルのラインナップはそのほとんどが、価格面でも性能面でも市場での競争力が非常に高く、現行のインプレッサもレガシィも改めて考えるとお買い得なクルマです。モデル末期に近づいていよいよ本領発揮してきたレガシィとFMCからもうだいぶ経ってもベスト10入りを果たすインプレッサも、他社と比べて確実に優位に立つクルマです。スバルは車種を絞って生産するメーカーですが、どのモデルも捨てグレードすら造らないという戦略が徹底されています。

  そんなブランドに突如気まぐれのように登場した中間的モデルのレヴォーグは、スバル車らしさがやや希薄なのかなと思います。開発の意図は、現行WRXの不振を受けて設定したATモデルのA-lineをさらに実用性の高いボディへとコンセプトを拡大する狙いからなんでしょうが、そこでスバルがWRX STIの尊厳を守るために敢えて新しい車名を付けて、ブランドの求心力を保とうとした取り繕う姿勢にやや問題がある気がします。

  A-lineをさらに拡大するという戦略をアウディRS4アヴァントのような堂々とした姿勢でやれば良いのに、自らの戦略に懐疑的なスバルの偏屈な判断だけが、このレヴォーグというクルマには浮かんでしまいます。そしてA-lineの延長線上にあるならば315万円という価格を前提にすべきなのに、使途不明金のように水増しされた代金には、ドイツ車よりもずっと安い価格なのは十分承知の上でも不信感が残ります。

  今年さらにWRX STIの発売が控えていますが、新しいA-lineは一体いくらに設定されるのか?そして1.6LのFB16DITによるWRXも登場するのか?といろいろ興味深い点が多いです。そして何よりホンダやマツダが欧州市場を意識した内装のブラッシュアップに励む中で、スバルはこの流れに反発するかのように、質実剛健をコンセプトとした一見地味な内装にこだわっています。この姿勢も今後の動向の中でどう貫かれるのでしょうか?スバルの戦略の行方を見守りたいと思います。







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2014年3月5日水曜日

新型プリウスはVWの陰謀を打ち砕くことができるのか?

  自動車雑誌の記事なんてデタラメだらけ。そんなことはよくわかっているのだけど、2/26発売の某雑誌の記事を見て「あらまー」とぶったまげてしまった。井元康一郎というライターが「日本市場にもダウンサイジング過給の時代が!」という記事を書いていた。そんなわけないだろとか思いつつもとりあえず読んだ。なんだかいろいろ嘘くさい部分がありつつもそこまでメチャクチャではなかった。けど根本的に記事のスタート地点が間違っているように思った。

  そもそも日本車の主流であるHVが自然吸気(NA)より効率的であることは、中学生でも理解できる話だけども、欧州に多いターボが同様に確実に効率的であるなんて専門家でも実証できない。日本車に多いCVTはエンジンの熱効率が一番良いところに自動的に回転数を合わせる機能が内蔵されている。よって同じエンジンをいくら過給したところで、これを超える効率を生み出すことは簡単ではないはずだ。「常識」という言葉は好きではないが、ある程度の「前提」と思われていたことがまるで逆のものとして語るのが、日本の腐ったモータージャーナリスト達だ。

  地球上の大気が2気圧だったらエンジンの効率が上がるのは事実だが、1気圧の世界の中にエネルギーを使って無理矢理2気圧の空間を作って、それで従来よりも効率の良いものが造れるという説明を意図的にするジャーナリストやディーラーがいるようだ。しかし現状のターボエンジンはそういう理想的な環境で駆動してはおらず、最大トルクを低回転で発生するようにしているに過ぎない。そしてここが肝だけども、低回転で最大トルクを発生する状況は、実は一般的なエンジンの熱効率における理想的な場所とはかなりのズレがあるのだ。よってこれらの機構が燃費にとって好影響はもたらさない。

  VWゴルフの1.4Lターボの実測燃費は相当に良好だ。しかし良好すぎて1.2Lターボを超えてしまっていることが、ターボエンジンへの懐疑を逆に増幅させてくれる。なぜ逆転現象が起きてしまったのか?それは1.4Lターボに新たに追加された気筒休止システムの恩恵が大きいからだ。つまり1.4Lターボのゴルフはトヨタ・プリウスに対抗する為の非常手段として、日本の軽自動車並みの0.7Lターボで航続することで燃費を無理矢理伸ばしている。

  ちなみにVWの1.2Lターボについてはその構造に疑問がある。このエンジンは欧州車らしく4気筒を保持したままダウンサイジングされている。1気筒あたりの理想的な排気量は400~600ccと言われているので、4気筒に固執するならば1.6Lターボこそが正しい判断だと言える。4気筒で1.2Lターボというのは、シリンダーを極限まで小さくすることで、ターボラグを減らす効果が見込めるのは確かだが、過給による効果も限定的になってしまう。

  日本車に比べ車重のかさむ欧州車は、1.6LのNAを積む日本車と同等の性能を発揮するために1.6Lターボという選択はあり得ると思う。しかしそれでも現実問題として、欧州の1.6Lターボが日本の2.0LのNA+CVTを組み合わせたユニットに燃費面で優勢になるという認識はとうていできない。そして2.0LのNA+トルコンATを積んだ日本車よりもエンジンそのもののおかげで運転が楽しくなるということはない。

  この井元というライターは何を血迷ったか、今後は「ターボ後進国」日本でもどんどん普及していくだろうという意味不明な所見を述べている。果たして本気でこんなポンコツターボが日本のHVを押しのけて普及するとでも思っているのか? そもそも日本は「ターボ後進国」ではない。ターボチャージャーの世界シェアは80%が三菱とIHIのものだし、スーパーチャージャーに関しても日系部品メーカーの独壇場だ。ジャガーだって日本製を使っている。

  もし彼の主張が正しいとしたら、日本のユーザーのほとんどがひと昔前まで悪評があったトヨタTHSⅡのプリウスの乗り味を完全にボイコットするならという条件付きだ。しかし日本市場で販売上位を占める車種は軽自動車ではなくHV車ばかりなのだ。輸入車ユーザーはこの状況を揶揄するようだが、VWゴルフも中期的なビジョンとしてPHVでの展開を第一に考えていると発表している。プリウスの乗り味と高速燃費に閉口したと言われる欧州市場もHVの研究が進み、乗り味や高速燃費の改善は容易だと判断したわけだ。

  さてこの井元さんのようなジャーナリストを黙らせるのが、今年の末に発売が噂される新型プリウスの役目だ。燃費を追求するクルマとしてアクアとカローラを下のグレードに持つようになって、プリウスへの要求は大きく変わりつつある。より高級感ある内外装と乗り味の両面をトヨタは発表のギリギリまで追求するのだろう。レクサスCTやアクセラHVの実績ですでにTHSⅡの乗り味は相当まで改良が可能だということは証明されている。あとは革新的と言わせるだけの新デザインか?



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