2015年6月29日月曜日

インプレッサHV 「いよいよアイサイト以外も始動!今後のスバルに注目!」

  日本でもアメリカでもクルマが売れ過ぎて、生産増強をするべきかの判断に困っている?という目下絶好調のスバル。このメーカーが他の日本メーカーと大きく違う点は、常識破りの「中型車」主義を採用していることです。もともとは軽自動車や小型車から船出したスバルでしたが、2000年代に業績不振に陥ってからの再建策で、完全なる逆張り戦術に出ました。昔ながらのRR機構のまま進化していた軽自動車の開発をやめて、現在手掛けているクルマは全てC/Dセグ相当のモデルだけにするというなかなか思い切った戦略です。今どきBセグを作らない(ダイハツのOEM車トレジアはありますけど)なんてプレミアムブランド以外にはスバルくらいだと思います。

  新たにBセグ車を作ってWRCに再び参戦しろ!というスバルファン(スバリスト)も多かったようですが、経営の後ろ盾と目されているトヨタがラリー好きの社長に引っ張られて?WRC参戦を決めてしまったので、スバルの参戦は当面は実現することは無さそうです。コンパクトカー(Bセグ)以下を持たないラインナップの中で、目下のところ国内市場の稼ぎ頭は「ターボ&AWD&ワゴン」オンリーというマニアックな縛りを持つレヴォーグです。しかも全グレードCVTと全くユーザーへの妥協の姿勢を見せないクルマがここまで大ヒットしたのは、今後の中型車のあり方を大きく左右する「事件」だったと思います。

  「気に入らないなら他のモデルにすれば・・・」と言わんばかりの唯我独尊な設計に、多くのクルマ好きが400万円を用意して列を作ったわけです。燃費なんて決してよくはないですし、ややスムーズさに掛けるCVTを避ける人々もかなりいることを承知の上で、リッター10kmそこそこで、MT設定無し!「欲しい人だけ買って!」と言わんばかりの仕様です。確かに街中で見かけるとどことなく品格があって「プレミアムワゴン」の名にふさわしいクルマではあります。全モデルがターボですから、どうしても本体価格が抑えられないので、販売はかなり苦戦するのでは?と思っていましたが、これだけ売れたわけですから素直に「すいませんでした」と頭を下げるしかないですね・・・。今やスバルは値上げすればするほど売れる!という不思議なゾーンに入り込んでいるかのようです。

  どのクルマもとりあえず乗り出し価格はとりあえず300万円以上・・・、アイサイトが付けられないインプレッサの1.6Lモデルなら200万円台前半で収まりますが、「アイサイト無しはスバル車にあらず!」(STIは除く)みたいな雰囲気すらあって、廉価グレードはさっぱり売れてないのだとか。ダイハツOEMの軽自動車やトレジアを除いたスバル製造の普通車の販売だけならば、平均単価はVWを軽く上回るのではないでしょうか(全くの未確認ですけど)。まあ輸入車ではなくて、あえてスバルを選ぶ人の気持ちもなんとなくわかります。300~400万円くらいで魅力的なほどに高性能でデザインもチャラくないクルマが欲しいという人は実際多いはずです。

  スバルは独自にHVを開発しましたが、いわゆる「マイルドHV」と呼ばれるEVモードが使えないタイプだったために、トヨタやホンダのモード燃費で30km/Lを大きく超える「フルHV」&コンパクトカーに比べると全く注目されませんでした。最初に搭載されたモデル「XV」は現在では世界的に流行の都市型SUVで、比較的ライトなユーザー(オフロードとか走らない)をターゲットにしたために、「燃費」の壁で販売は伸びませんでした。しかしクルマ自体は肩の力がいい感じで抜けていて、スバルらしからぬポップなデザインに仕上がっていて現行ラインナップでも最も好感度が高いクルマではあると思います。

  スバルらしい走破性を望むコアなユーザーからは都市型&HVで敬遠され、ライトなユーザーからはモード燃費のインパクトの無さでウケないという重大な「コンセプトミス」はあったのですが、当時レクサスLS以外には存在しなかった「HV&AWD」という機構を中型車で使ったのは画期的でした。しかしいくらレアな機構だとしても、十分なプロモーション無しにこれは面白そうだ!と反応するには少々時間が必要ですし、認知されるためにはそれなりのプロモーションが必要です。しかし同時期にBMWとマツダが「クリーンディーゼル」で旋風を巻き起こしていましたから、スバル単体で「マイルドHV」をプッシュするだけの基礎体力が無かったとも言えます(タイミングが悪かった・・・)。

  トヨタのようにラインナップに次々とHVモデルを投入することもせず、XVだけで細々と展開する様子から、てっきりスバルの自社開発HVはこのままフェードアウトして、いつの間にかトヨタから供給された燃費の出せる「フルHV」がスバル車でも使われるようになると思っていました。しかしついに沈黙を打ち破り、主力モデルのインプレッサに、この「マイルドHV」を搭載したグレードが突如として出現しました!・・・おおお。

  某カーライターがスバルのHVを評して、燃費を伸ばすHVというより「電気式スーパーチャージャー」だ!といった慧眼を披露されていましたが、レヴォーグによって嵩上げされたスバルのステータスと、このリッチな乗り味を演出する「マイルドHV」の価値がシンクロ(一致)してきた頃合いかもしれません。VWゴルフやマツダCX5がヒットしたことでダウンサイジングターボやクリーンディーゼルがそれなりに普及しましたが、これらが大排気量の高級車エンジンに匹敵するか?というと、むしろ現実は逆で、慣れてしまえば「セコい」は語弊があるかも知れないですが「スカスカ」な乗り味とも言えます。そしてワンランク上の「リッチな乗り味」のユニットが欲しくなるわけです。

  現行モデルでマイルドHVを使うモデルにBMWの「アクティブハイブリッド」シリーズがあります。直6ターボで40kg・mの最大トルクを誇りますが、それにモータートルクをスーパーチャージャーのように全速域でのトルク増幅に使っていて、ただのガソリンターボやディーゼルターボとは完全に一線を画すユニットになっています。フェラーリもこのマイルドHVをスーパーチャージャー的に組み込んで、フェラーリらしいレスポンスを残したままにターボ化する計画が進行しているのだとか。すでにポルシェ918でモータートルクの偉大さが証明されてしまっているので、バッテリーの軽量&低価格化さえ進めば、いずれスーパースポーツカーは全て「マイルドHV&ターボ」もしくは「フルEV」に収束する可能性は高そうです。

  「マイルドHV」をいち早くスポーツカーに転用しようとしたのが、実はホンダでして、CR-Zによって実現した「マイルドHV&スポーツ」はとても先見の明があったのは確かです。しかしブランドイメージがそれを全面的に肯定できるほど力強くなく、MC時に搭載された「出力アップボタン」も特に大きなインパクトが残せませんでした。少々失礼ですが、このクルマに殺到したユーザーにとっては「モード燃費」が示す数値にクルマの価値を左右される部分がかなりあったと思います。グローバル用に3タイプのターボエンジンを完成させたホンダには是非とも「1.5L3気筒ターボ」にマイルドHVを組み合わせて、「レスポンスの鬼」仕様となった新型CR-Zをぜひぜひ期待したいと思います。

  さて話が他ブランドに広がってしまいましたが、スバルの舵取りをしている人々の頭にも、「我々に必要なのは燃費を伸ばすHVではなく、乗り味を良くするためのHVだ!」という考えはあるようです。最新号の自動車雑誌には相も変わらず「燃費と楽しさの両立」といった少々意味不明なタイトルが出ていましたが、このインプレッサHVの始動によって、「アイサイト」に変わるスバルの新しい「価値」として、「マイルドHV」がドラスティックにスバルの乗り味を変える切り札になると思います。WRX/レヴォーグの2LターボにマイルドHVを組み合わせて、「BMWアクティブハイブリッド3」(730万円!)に匹敵する「レスポンス&ターボの衝撃」を期待したいです。


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