2015年6月8日月曜日

スバルXV 「オシャレは認めるけど、もっとジムニー的な期待も・・・」

  「カイエン」「X5」「レンジローバー」「メルセデスGL」「ナビゲーター」「グランド・チェロキー」「エスカレード」「レクサスLX」・・・これらの高級SUVを日本で見かけると、あくまで人様の趣味とはいえ、さすがに不必要で大げさではないかと感じます。高級SUV人気のルーツとして知られるのが、欧米セレブのライフスタイルだそうで、普段は都市部でビジーな日々を過ごす金持ち達が、休日には非日常を味わうための別荘を大自然の中に構えることが多く、その別荘まで向かうのに未舗装路を超えていくため、普段使いの高級セダンでは不都合なので、これらの高級SUVが日本でも富裕層に憧れる人々の間で人気なんだそうです。

  欧米ではカンパニーカーとして支給されるアウディやメルセデスをフォーマルカー(ファーストカー)として使うので、私用に「公用車」を使うのは気が引けるという意識もあってか、2台目として全くテイストが違うSUVを持つものらしいですが、全くそんな制度が無い日本ではSUVがそのままファミリーカーの主役の座になっています。日本ではバブル崩壊後は、一般のサラリーマンにとって別荘はあまり現実的な選択ではなく、日常的に都市部しか走らないのに、わざわざ価格が高めのSUVを選ぶ理由なんてないのですけど、ブームというのは恐ろしいもので、渦中にいる人々にはその実態がなにも理解できていなかったりするみたいです。

  しかし日本では、軽井沢や清里など主な別荘地はどこもハイウェイや幹線道路に直結していて、軽自動車でも本格スポーツカーでも難なく到達できるところばかりです。もちろん中には有名な別荘地を避けて、秘境のような場所に別荘を構える人もいるとは思いますが、そういった場所へのアクセスルートとなる日本の一般的な林道は、2m近い車幅を誇る高級SUVには狭過ぎます。軽井沢などではBMWのX3辺りのモデルをよく見かけますが、これくらいのサイズのSUVが日本の別荘ライフには結果的に使いやすいのだと思います。多くの自治体で林道の保全パトロール用に導入されているのがホンダCR-Vで、同サイズとしてトヨタRAV4、日産エクストレイル、スバルフォレスター、マツダCX5、三菱アウトランダーと各社ずらりと用意されていますが、どれもこれも「素晴らしい別荘ライフを演出するんだ!」くらいの気迫があるかというと・・・。

  日本で売れているSUVには大まかに2段階のサイズがあって、ホンダCR-Vと同じサイズの「ファミリーカータイプ」のものと、ホンダヴェゼルや日産ジューク、マツダCX3が属する「引退世代・独身向けタイプ」のものが売れています。前者はミニバンとは違うテイストを求める層に支持され、後者はコンパクトカーよりも一回り大きいゆとりが欲しい層からウケているようです。ただし実際に日本の原野を貫く林道を走りたいという、よりエクストリームな欲求を満たしてくれるクルマとなると、スズキのジムニー/ジムニーシエラがその走破性とスペシャルなサイズ感から、独占的な立場にあるようで、さらに他のメーカーの参入がないことから現行の3代目ジムニーはかれこれ20年近いモデルサイクルを誇っています。

  まったくもって素人目線ではわかりにくいことなんですが、どうやら各メーカーから発売されているSUVのオフロード性能にはかなりの格差が生じているような印象を受けます。日本が世界に誇るオフロードSUVのブランドといえば、トヨタ「ランドクルーザー」と三菱「パジェロ」ですが、この2台のサイズでは日本の林道を走破するには物理的に無理なのが実情です。もちろん運転技術の有無によって状況は大きく変わるとは思いますが・・・。私も林道が大好きなのでノーマルのDセグセダンでしばしば分け入ってみたりするのですが、小さな落石の鋭い断面をみせつけられると、踏んだらパンクしそうだな・・・なんてヒヤヒヤすることも多いです。たとえこれがSUVになったからといってもパンクのリスクがなくなるわけでもなく、全幅1795mmのDセグセダンではさすがに躊躇ってしまうほどの「獣道」だと、それ以上の車幅を持つランクルやパジェロでも無理なことは同じです。入れるのはジムニーだけだな・・・なんて諦めるケースは結構多いです。

  一方でジムニーのスマートな車幅が仇になるケースもあります。その典型例といえるのが雪上での走行で、重心が高いSUVは上屋がフラフラするとすぐにタイヤの接地面が減少してしまいAWDとしての能力が十分に発揮できません。群馬県にある榛名山を雪山シーズンにDセグセダンで超えたことがありましたが、伊香保温泉を過ぎると周囲はジムニーだけになり、さすがにFFセダンでの通行は無謀かと思いましたが、重心が低くてワイドなセダンの方がむしろ安定感があって適正が高いのではないか?というのが実践してみての感想です(間違っているかもしれませんが)。そういえば麓の渋川市では、希少車種のマークXジオがやたらと元気に走っていました。このクルマはマークXという名前なのにFFで、車高を抑えて車幅をしっかり確保していてなかなかスタイリッシュなデザインです。車両価格は別として、実際にこういうクルマが雪の多い地方では使い勝手がいいのかもしれません。

  自動車メーカーが何の説明もなしにSUVブームをひたすらに煽っていて、ユーザーがあくまで自己責任でそれを使うという現状に文句を言う人もいますが、それはちょっと違うと思います。メーカーが何の説明もなくSUVを売りさばくことはどうあれ、このような全く過保護でない状況下で、ユーザーが必死で頭を使ってクルマ選びをすることは非常に「健康的」な世の中だと思います。そんな中でランクル、パジェロ、ジムニー以外に、エクストレイルとフォレスターの2台はそれぞれにメーカーがライバル意識を持って走破性を強調していますし、第三者機関のテストでもその性能が世界最高水準であることが認められています。それと同時に「そんなスペックは不要!」「雪降ったらクルマのらなきゃいいじゃん」なんていう冷めた現実的な意見もあるようです。

  私も以前はそんな「お気楽派」だったのですが、2013/14シーズンに甲信越地方を襲ったドカ雪が、将来的に埼玉県の奥地に別荘でも建てようと画策していた甘い考えを一蹴してくれました。普段からドライブルートとして使わせてもらっている国道299号及び140号周辺も大きな被害を受けていて、正丸トンネルに多くの人が閉じ込められたのは衝撃的でした。これほどの雪はあまり経験が無い埼玉県には十分な除雪能力が無く、群馬や長野に救援を依頼するも、埼玉以上に甚大な被害に見舞われた山梨の除雪が優先されたため、299や140の本道はともかく、周辺の峠ルートは数ヶ月に渡って不通のままでした。3月くらいに周辺の道路へ出掛けてみると、南側斜面は溶けて通行可能でも、峠を超えて北側斜面は全く除雪がされておらず、轍もないことから狭い峠付近でヒヤヒヤと方向転換したりしていました。

  圧雪がされていない上に、凍結部分もあって車体床下へのダメージを危惧して引き返しましたが、大径タイヤを装備しつつもワイド&ローで安定感が保てるクルマなら行けそうだなとも思いました。エクストレイル(1715mm)、フォレスター(1715mm)、ジムニー1680mm)では全高がやや高すぎで、左右の高低差からロール運動が活発化して頭から谷底に落ちそうな気が・・・。1600mm以下まで抑えた本格AWDモデルとして候補に上がるのが「スバルXV」というインプレッサベースのクロスオーバーモデルです。ただしスバルがオフロード性能としてプッシュしているのはフォレスターであり、XVの位置づけとしては、都市型のSUV風乗用車なんだそうです。これは悩ましいですね・・・。全高&全幅から絞り込むとこのクルマこそが、甲信越地方の別荘ライフを力強く支えてくれるような気がします。デザインも非常に優れていますし。スバルにはこのクルマをさらに改良して、オフロード走行の「お墨付き」を出してほしいですね。

リンク
最新投稿まとめブログ

  

0 件のコメント:

コメントを投稿