スズキ・ソリオがフルモデルチェンジされ、「バンディット」なる新グレードとマイルドHV車を追加してスズキの新型車が発売されました。今回のソリオはスズキが社運をかけた!といっていいくらいに手をかけているフラッグシップ・トールワゴン(プチバンではない!)ですが、同時期に発売されて話題沸騰の新型シエンタとの比較記事がカーメディアで展開されることもないようで、スズキの気合いも虚しくいまいち認知されていないようです。
大胆なデザインで注目を集めたシエンタに比べて、インパクトに欠ける・・・いやいやバンディットのフロントデザインもなかなか整っていて、マツダなどに負けない精悍な顔つきです! シエンタはCMにハメス=ロドリゲスを起用して、国内専売車に有りがちな安っぽいイメージを排除し、まるでグローバル車のような演出をしています。対するソリオはTOKIOを5人まとめて起用し、先代までと同じく20~40歳代の若者が楽しく使うイメージを展開しています。
トヨタは週末に大人しくサッカー観てるような善良な小市民タイプのファミリー層にハメス=ロドリゲスで訴えかけます。メッシでもネイマールでもなく、真のスポーツマンシップを持つジェントルマンとして知られる選手を選んでいるところはさすがです。サッカー選手と自動車メーカーのコラボはバブル期から脈々と続いていて、ちょっと古い話で恐縮ですが、1990年代の初頭にACミランの知名度とともに日本市場に参入したオペル(現在は撤退)も、アルベルティーニやドナドーニといったクリーンなイメージの選手を好んで起用していました。
一方でスズキは、こちらも自動車メーカーにとってはもっとも強烈な販促キャストとして知られるジャニーズを起用してきました。特にジャニ=タレは小型車の販売に強く、キムタクを起用したカローラランクスやカローラフィールダーであったり、嵐・二宮を起用した日産ノートが印象的です。ソリオはデビュー当初からジャニーズを起用していましたが、ここにきて活動歴が長いTOKIOを使ってきました。単純にアラサーの鉄腕ダッシュを見ていた世代への訴求力に狙いを定めたようです。鉄腕ダッシュを熱心に見ていた層って案外スズキ車を相性が良さそうな気もします。田舎暮らしの相棒といえばワゴンR、アルトターボRS、ジムニー、ハスラー、ソリオ、スイフトなどバリエーション豊富なスズキ車がピッタリです。
トヨタもスズキもあくまでファミリーカー・メーカーに過ぎないと言われればそれまでなんですが、最近のモデルを見ているとクルマ作りのアプローチが明らかに真逆なので面白いなと思います。まずトヨタの大衆モデルは若者〜中年の様々な層をターゲットにしてデザインコンセプトに非常に力を入れています。多様というか千差万別になった若者のライフスタイルをしっかりと研究し、彼らの好みにあったクルマを四方八方に向けて作っている印象です。押し出しの強いヤンキー好みな「bB」だったり、アニメ大好きなガンダムとコラボした「オーリス」だったり、そしてごくごく真っ当でさわやかなライフスタイルを好む人々へは「アクア」や「シエンタ」だったり、高級感を求める人には「ハリアー」や「エクスワイア」ですね。
まずライフスタイルを分析して、それにマッチしたデザインコンセプトを決め、大まかな価格を含めた規格を煮詰めると、デザインに使った手間のしわ寄せがパワーユニットのコストに及ぶので、スペックの割にちょっと価格が高めだなと感じるグレードが多くなっています。まあスペック料ではなくデザイン料なんでしょうけど。それでも居住性の良いインテリア作りは世界最高水準ですから、総合的に高い満足感が得られるクルマに仕上がっているとは思います。スペックからクルマの価値を決めてしまうようなクルマ好きからは、しばしば不評だったりするようですが、「走り」のクルマではないですから、経済性が高ければ十分なんですね・・・。
一方でスズキはというと、まず最初に「パワーユニットと車重」の具体的な目標を決めてから他の部分の細かい設計をしている様子が伺えます。まるでBMWかマツダのような設計方法を採ってますが、スズキも欧州で非常に高い評価を受けるブランドですから同じアプローチなのは当然のことかもしれません。ソリオも全てのグレードのパワーウエイトレシオがほぼ10km/psに収まっていて、この数値はプレミアムカーのメルセデスAクラスやBMW1シリーズの売れ線グレードに匹敵する値です。とりあえずメルセデスA180ならばソリオの全グレードで十分にカモれるスペックになっています。
スズキは他のモデルでも積極的に軽量化を推し進めていて、アルトターボRSも約10kg/psですし、スイフトスポーツは100万円台の本体価格にもかかわらず8kg/ps(スカイライン200tに匹敵)を誇ります。誤解を恐れずに言うと、トヨタ、メルセデス、BMWが投入している最近のモデルは、車重はなかなか減らせずにエンジンだけをダウンサイジングする傾向にあるので、「走り」はどんどん遅くなっていますが、スズキ車に関しては逆に速くなっています。
トヨタ、メルセデス、BMWは最新の装備がたっぷり積まれているからなかなか軽くできないのも仕方ないところかもしれませんが、全グレードが車重1トンを切るという珍しい登録車となったソリオも、これらのブランドと同等にサイドエアバッグは全車標準装備です。さらに前席のシートヒーターまで標準で付いてきます!すげ〜レクサスみたいじゃん!さすがはスズキの実質的なフラッグシップモデルですね!さらにスバルのアイサイトと同じカメラ(同じサプライヤーのもの)を使った自動ブレーキシステムまで用意されています(オプション価格がなんと5万円と超格安!)。100万円台の本体価格の大衆車でここまでやってくれているクルマはなかなか無いですね・・・。
ソリオは5人乗りなので7人乗りのシエンタと同列に扱うのはちょっと違うのかもしれないですが、シエンタ以上に衝撃的なクルマがこの8月にひっそりと発売されたわけです。カーメディアの小型車枠はすっかりシエンタが占拠し、発売2週間で3万8千台を受注した!なんて景気の良過ぎるニュースも上がっていました。年内に引き渡せば間違いなく車種別の年間1位を獲りますね・・・。アクアやヴィッツのユニットで7人乗りボディを引っ張るのですから、シエンタの走りはある程度は想像が付きますけど、こんなノロノロのクルマが大挙して観光道路に押し寄せるのか・・・できれば元気に走れるソリオにしてほしいな。
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