2015年11月17日火曜日

マツダ・アクセラXD 「究極に合理的!でも究極に矛盾・・・」

  「クリーンディーゼル」はもはや「ロータリー」に変わるマツダの新しい代名詞になった感がありますが、ちょっと端から見ていて気になるのが、「マツダの意図」と「カーメディアの解説」と「ユーザーの理解」がしばしばズレが生じたまま展開されているのではないか?ということです。果たして1〜2年使ってみての顧客満足度はどれほどのものか?老婆心ながらやや心配になります。マツダ車に対する期待がそもそも間違っているのでは?と感じられる言動に触れる機会が結構あります。

  とりあえずここ数年のマツダが新製品を紹介するスタンスなんですが、メディア戦略が他の日本メーカーよりも群を抜いて巧みです。デザインや乗り味に対する評価の高さに加えて、「国内生産にこだわる姿勢」や「欧州車への露骨な対抗心」などなど、このメーカーへの興味を惹かせるさまざまな要素が散りばめられています。もちろんそれはここ数年に限った取り組みではなく、バブル崩壊後の苦しい時代から広島を中心として「地域」との連携など、一貫してブレない姿勢があってその上に見事に咲いたの「マツダ人気」ということもできます。

  ただしマツダ車を冷静に分析すると、カーメディアで一般に解説されるような、日本メーカーと欧州メーカーの「いいとこ取り」といったスーパーな存在ではないことは確かです。マツダが掲げる「運転が楽しい(Be a driver)」は、裏を返すとトヨタやホンダよりも「乗りにくい」という意味にもなります。時速60kmを越えての速度域での操縦安定性に関しては、他の日本メーカーよりも定評がありますが、街中の混雑をマツダ車で長時間走ると、低速域でのアクセルやブレーキの操作感ではトヨタ車に完敗しますし、ディーゼル・ガソリン問わずに低速ギアからハンドルを伝わる振動の不快さは、日本で売られているクルマ(国産・輸入を問わず)を見渡して、もしかしたら最低レベルかもしれません。

  そんな特性を考えると、マツダ車は、アルファロメオやプジョー、欧州フォード、VWといった日本車要素が比較的薄い欧州メーカー車に近いポジションです。よっぽどメルセデス、BMW、ボルボの最近のモデルの方がトヨタっぽい大人な立ち振る舞いのクルマが作れていて、いわゆる「いいとこ取り」ができていると感じます。けれどもこの3ブランドは、日本車風の乗り味になってから、クルマ好きの間では人気がガタ落ちしています。まあ日本のクルマ好きなんて「ただのバカ」ですからマトモに相手にする必要なんてないですけどね(高齢者が安心で快適に乗れるクルマ作ってくれればそれでいいです!)。

  誤解を恐れずに言いますと、トヨタとマツダを両方所有していると、両者の対照的なクルマ作りにあれこれと気がつきます。走る・止まる・曲るに関してはマツダの過激なセッティングが浮き彫りになるくらいに方向性が違っていて、マツダの方が安心してスピードが出せるのは間違いないです。基本性能に関してはマツダが優位という結論をしてしまいそうですが、マツダ車はスムーズに走れなくなる(渋滞にはまる)ととたんにつまらなくなるので、これまで何度か「面倒くさいな・・・」という思いをしました(理由は上に書いたとおりです)。

  ちょっと動いて止まるという動作においては、マツダ車の挙動には変速ショックがアクセルONとブレーキ時につきまとってあまり気分がよくないです(VWなんかも同様です)。その点トヨタ車は角が取れた加速感とブレーキフィールなので、渋滞でもそれほど不快ではないです。こういったマツダの欠点は現行モデルにおいてもそのまま受け継がれています。まあキャラクターなので変えようがないのでしょうけども、そんな街中が苦手なクルマをデザインだけで納得して買っていった人は、後からどういう印象を受けているのでしょうか?「案外ダメだな・・・」という感想は正直だと思います。

  マツダはマツダで2012年以降のクルマでも、ことごとく開き直りの姿勢が現れていています。デミオのCVTを廃止したり(トルコンATに戻る)、都市部では使い勝手に困るMTを新規車種の全てに投入したりするなど、主導権を持つトヨタやホンダに対し完全に「逆張り戦略」を採っています。「CVTは嫌い!」とか「ハイブリッドは元が取れない!」とか言ってる人はマツダのステマです(笑)! まあでもこの戦略はマツダの規模で生き残りを模索するならば妥当ではあります。それを象徴するかのように、アクセラにはトヨタから調達したハイブリッドがありますが、これが全く売れませんでした。今や都市部のお迎え車といえば、「渋滞燃費最強」のハイブリッドが当たり前ですが、どうやらマツダの読み通りで典型的な都市部の住民からはマツダは支持されていないようです。

  アテンザXDにMTが設定された!!という「非常識」な戦略もまたマツダの存在をアピールする上では効果があったと思います。何が「非常識」かというと、先代のアテンザから採っているコンセプトは「世界最良の高速ツアラー」というもので、高速での操縦安定性とCD値(空気抵抗係数)クラストップ、そして車内の静音性もレクサスを凌駕する水準(FFの方が静かですから)に作り込んでいて、単なるフラッグシップではなく、用途を厳密に考えた上での「専門車」として作り込まれています。衝突安全性の高さなども考慮すると高速道路での安全性に関しては相当な競争力があるクルマです。そんな長距離を走るためのクルマになんでわざわざMTを選ぶのだろう?というのが矛盾です・・・。まあディーゼルを搭載すること自体は、100km/h走行での低回転で騒音がそれほど酷くはならないので、決してデメリットではないですけども。

  べつに運転が楽しければMT(3ペダル)でいいじゃないか!・・・という勢いでアテンザをMTで買ってしまう人の気持ちもよくわかるんですけど、実際に東京〜京都を往復してみると「何とかなるな・・・」と思いつつも、次は東京〜広島を往復してみたい!とは絶対に思わないはずです。東京〜広島だったら飛行機か新幹線を使うだろ!という極めてマトモな思考の持ち主ならば、ホイールベースが2830mmまで肥大化したアテンザXDよりも、2700mmのアクセラXDの方が運転して楽しいのではないか?ということにも気づくはずです。

  アテンザXDよりも400mmも全長が短く、車重も100kg近く軽くなっているアクセラXDは、アテンザの高速走行の安定感と引き換えに、よりスポーティなハンドリングが得られます。最近では300psを越える超絶スペックにMTを組み合わせたために、神業的なシフト操作が要求される「バカ・スポーツカー」が増えているそうですが、日本メーカーが大挙して発売している「MT」搭載モデルは、軽量ボディに限界まで使える適度なスペック(120~200ps)のものが多いです。定番の「ロードスター」「フィットRS」「スイフトスポーツ」「CR-Z」といったモデルが車重1000~1100kgに130ps前後といったバランスです。「デミオ1.5」「カローラ1.5」「ヴィッツ1.5」が1000kgに110psでやや控えめなスペックです。これに対して「アクセラ1.5」は1240kgに111psですからちょっと鈍足で、「アクセラ2.0」は1280kgに155psなのでロードスター、フィットRS、スイスポに匹敵するレシオです。

  これよりもさらに過激なモデルとして「86/BRZ」や「フェアレディZ」があるわけですが、これら一級品の戦闘力を持つスポーツカーに伍する実力を秘めているのが「アクセラXD」です。ディーゼルでスポーティと言い切るマツダに一抹の不安は感じますけども、マツダが自棄糞気味に追い求めている「新しい世界観」に辿り着いたクルマであることは間違いないです。

  ポテンシャルは十分!あとはどう使うかだけですよ!なんともマツダらしいと思います。使い方は自分で考えてください!我々は「Be a driver」としか発信しません!・・・「これまでに無いクルマ=正義」だと考えるなら究極に合理的!だけどその設計は矛盾に満ちていて、長く乗り続けられるかどうかユーザーを試すクルマ?なのかもしれません・・・「渋滞の時にかったるいって? ウチはマツダですよ!そんなの当たり前じゃないですか!(ランボとかポルシェとかで渋滞になったら地獄ですよ!)」なんて開き直ったらマツダは本物だと思います。


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