2016年10月24日月曜日

新型マーチと日産デザイン

  コンパクトカーのデザインと言えば「日産」。クルマにあまり詳しくない人に試しに言ってみると、「へ?日産?ぜんぜんそんなイメージないよ〜」なんて返事が返ってきました。どうやら世間ではそんなイメージは定着していないみたいです。2016年のトヨタ最高の自信作と言われるCH−Rの斬新なデザインも、明らかに7年前に出た日産ジュークが切り開いたコンパクトSUVデザインの延長にあるんですけどね。また軽自動車からプチバンまで「箱型デザイン」は大流行中ですが、その源流にあるのはトヨタbBと並んで日産キューブですね。そしてコンパクトハッチバックが特に秀逸で歴代マーチとノートの水準は高いです。

  どう考えてもコンパクトカーデザインの進化にとって、世界でもっとも貢献してきたメーカーは「日産」だと思うのですが、残念ながらその印象が世間にさっぱり伝わっていないのですから、昔から言い続けられて来たことですけども、やはり日産のイメージ戦略が下手なんですかねー。そしてもう一つ気になって仕方ないのは、せっかく殻を破ってポップに弾けた斬新なデザインなのに、なんとも真面目でシンプルな「NISSANマーク」がせっかくの世界観をぶちこわしているんじゃないの?ってことです。場違いな外部パーツが一つ付くだけで、繊細なカーデザインは脆くも崩壊するものです。現行のノートもそれでだいぶ損をしているのかなー・・・と。

  そんな中、日産の新型マーチ(欧州名マイクラ)がいよいよ発表されました。同じグループの兄弟車ですから当然ではありますが、ルノー・ルーテシアに非常によく似たフォルムになっていて、ルーテシア譲りのBセグ超のサイズ感を主張しています。サイドデザインは新傾向のフランス車なのに、フロントマスクは・・・これがとっても日産らしい「やや」強めの顔つきです。コンパクトカーにはやや「強過ぎる」んじゃないかという感じすらします。

  フランス車っぽい斬新なサイドラインはシトロエンの上級ブランド「DS」を彷彿とさせます。世間では新型プリウスの破天荒なデザインに賛否両論渦巻いていますが、例えばシトロエンなどは、個性的なスタイリングを追求し続け、今日のドイツとも日本とも違う独特の、日本人から見ると少々アクの強いスタイルを貫いてきました。新型プリウスのデザインをトヨタの社長も「ダサい」と断じているようですが、声高にそういうコトを言うヤツに限って、ろくにカッコいいとされるクルマの名前を知らなかったりするので始末が悪いです。見る側の人間の見識って大事だと思いますよ。「ダサい」って表現は見る側が受け止められない=スペックを越えたところにそのデザインがあるので、単に「嫌悪感」をダサいと表現しているだけだと思うのです。

  新型マーチはサイドデザインで先進性を見せていますが、特にCピラーを黒くするのはエルグランドや新型セレナにも見られる最近の日産のこだわりみたいです。。これに中村史郎デザインらしい抜けの効いたフロントデザインを持ってくれば・・・単なるフランス車なんですけども、そこにドイツ車的な「顔面神経麻痺」したような硬直フロントが付きます。サイドは先進性に溢れていて、フロントは既視感に満ちている・・・。マツダと方法論が近似している!?

  ちょっと難癖をつけると、フロントデザインだけでブランドを主張する!!なんてセオリーがいつ頃からかブランド戦略の「いろは」として語られる風潮があるようですが、フェラーリの各モデルに共通のフロントのモチーフなんてあるか?って言えば無いです。ブランド内の各モデルが個々に「存在感」を放つように緻密に設計されていればそれで十分にブランドへの注目は集まると思うのです。トヨタのシエンタ、プリウス、C-HR、プリウスPHVの流れはそういう意味でとても健全だと感心しています。

  年間にブランド全体で1万台売れば十分なフェラーリに対し、一般的なメーカーは同一車種で年間40万台売らないと利益が出ないのが実情だそうです。ゆえに繊細なクルマ作りなんて言っている場合ではないですし、これはメルセデスやBMWといったプレミアムブランドでも状況が同じで、共通設計&共通ユニットのオンパレードに成っています。一つ一つの車種に魂を込めることが出来なくなった機能不全のブランドが、特別な記号的価値を与えるために、全ラインナップを「同じ顔」を与えたがる。これはもはや病気といっていい現象です(クルマに冷める瞬間だなー)。

  簡単に言ってしまうと、ブランド内でフロントデザインがどれも同じに似てきたら、このブランドは既につまんないクルマを作り始めているというフラグです。少々思い当たるのが、メルセデス、BMW、アウディ、スバル、マツダ・・・辺りじゃないでしょうか。果たしてこれらのブランドの現在の姿は、その歴史の中で今がもっとも良い時期と言えるのでしょうか?

  素人が生意気を言わせてもらうと、どのメーカーももっともっと自由にフロントデザインを作った方がいいんじゃねーの!東南アジアや中国で売るためには必要!という判断はなんだか安易過ぎじゃないですか?うるせー!!素人が口出しすることじゃねー!!!ってことなら俺は徹底的にアンチになるぞー(面倒くせー奴ですみません)。

  マーチなんて・・・とか言ってしまうと怒られてしまいますが、ほどほどじいさん・ばあさんが愛用するクルマであることは否めないわけですが、これも日本特有の変に世代や性別でクルマの趣味を分けたがるお国柄のフィルターが存在してます。女性向けにとりあえず「ピンク」を多用するなどして、ユーザーの嗜好にわざわざ迎合するメーカーの下世話な姿勢に問題があるのかもしれません。もちろん需要に応えてクルマを作ってなにが問題なのか?あくまで輸入ブランドと比較しての評価に過ぎませんが、メーカーの開発担当者にもまだまだ「男女同権」の意識が極めて低いのか!?

  VWにピンクピンクなモデルなんてあるか?って無いわけですよ。性別なんて意識してクルマ作ってないです。・・・というか性別を意識する製品を、無遠慮に市場に投入したら本場欧州の市民団体(プロ市民)が黙っちゃいないですね。メーカーのコンプライアンス意識にそれが刷り込まれているようです。今回のマーチは(厳密に言うと現行のマーチからですが)、東南アジアでの拡販を期待して男性的な強さを感じさせるデザインに意図的に切り替えたと中村史郎チーフがその著書でハッキリと断言しています。ユニバーサルデザインとでも言うべきVWと同じ土台でデザインされて、2代目となるマーチの国際的な評価が高いようですが、日産は日本では売れないと判じているようで日本導入は未定とのこと。インフィニティのQ30、Q60(スカイラインクーペ)に続いて日本未導入車種になってしまうのでしょうか?

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新型日産マイクラ(マーチ)動画
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