2014年8月27日水曜日

SAIとカムリのリアデザインはなかなか!

  最近のトヨタ車はデザインで訴えてくるものが多い印象です。それもレクサスブランドのモデルとして相応しいデザインを要求されるというわけでない、トヨタブランドの「SAI」や「カムリ」にハッとさせられる瞬間があります。どちらも日本ではHV専用車ながら販売台数は低迷気味なのは残念なことです。どちらも新車乗り出しで400万円に達する価格帯がややネックになっているようで、まずこの価格帯のセダンを所有するユーザーの多くはプレミアムブランドに目が向いてしまいます。そして購買層のほぼ100%の人が持っているのは高級車に乗っていたいという「意識」であり、自然と高級車の象徴である「後輪駆動」のクラウンを考えてしまいます。

  中には前輪駆動をモノともせずにヒットした「アテンザ」のような変わり種もありますが、販売の多くがトヨタHVを経済性で上回るといわれるディーゼルモデルだったりといった付帯条件あっての話にすぎません。トヨタを完全にターゲットにして「クラス最高燃費」を高らかに謳っている「アコードHV」でさえも、「Vテック」大好きなホンダファンの期待を踏みにじった代償は大きかったようで、V6エンジンに変わったスカイラインが登場したときのような「冷めた」見方が今のところ続いています。ホンダとしてはやがてその先進性が理解される日が来ると信じるしかないですが、北米で大成功した実績を持つスカイラインですらV型3代目になっても散々な状況ですから、果たしてHV専用アコードが日本の風景になる日はやってくるのでしょうか?

  数年後にアコードHVがこのクラスの中核を担う存在になっていたら、当然にホンダのマーケティングは素晴らしいと思います。しかしアコードHVのスペックから伝わってくるのは、トヨタへの対抗心に燃えるホンダの焦りくらいなもので、そのあまりに近視眼的に見える設計思想からは、大きな変革を巻き起こすポテンシャルはあまり感じられません。セダンユーザーが欲する「見栄っ張り」な要素を全く無視したような設計には一体どんな意図があるのでしょうか?

  ホンダがトヨタを超える性能のクルマを出せばすぐさまに、トヨタが反撃して対抗モデルを出してくるという過去の歴史を知っていれば、アコードHVの燃費を超えるためにSAIとカムリはさらに仕様変更されるだろうと見る向きもあるでしょう。それを理由に「買い控え」が起こるとは思わないのですが、やはりこのクラス(400万円前後)のクルマになると「これなら間違いない!」と思わせるほど抜群の魅力で後押しできるようなブレイクスルーな存在でなければ、大きく売り上げを伸ばすのは難しいはずです。カムリやSAIの販売に歯止めを掛け、トヨタの一人勝ちを阻止するためだけにアコードHVを出したというならば、ホンダの執念深さには脱帽といったところです。

  さてこれまで多くのセダンユーザーの支持を受けてきた南アフリカ製のドイツブランド車も、いよいよ曲がり角を迎えてきてはいるようです。メルセデス、BMWが優雅に走っていたバブル期の幻影も、さすがに15年が経過した2000年代末頃にはかなり霞んだものになり、今ではBMWの内装は軽自動車にも見劣りがするなどと揶揄されるまでになりました。しかしそんな危うい商品性しかもたないドイツセダンに対して、なかなか優位を奪えない日本ブランドの新型セダンの展開力も「?」な点が目立ちます。まあお互いに足を引っぱり合うトヨタとホンダに比べて、お互いの長所を認め合うメルセデスとBMWの関係はとても健全ではありますが・・・。

  「製品」のレベルでは既に日本ブランドがドイツブランドを凌駕しつつあるのですが、「ブランドイメージ」という言葉に集約されるユーザーが持つ「憧れ」においては今もなおドイツブランドが優位にあるようです。あくまで「デザイン」は主観的な要素も多分にあることを理解した上で言うと、トヨタブランドのカムリHVとSAIのデザインは、それこそ王道のクーペボディを纏ったBMW4シリーズなどと比べても十分に高い「デザイン性」を有しています。4シリーズはカムリやSAIの2倍近い価格にもかかわらず、高級感の演出が完全に力不足で、そのせいかクルマ全体の収まりがとても悪く感じます。もちろん感じ方には個人差があり、私とはまったく違うレベルの金銭感覚の方ならばまた受け止め方も違うとは思います。

  BMWはフォーマルサルーン・ブランドとしての立ち位置を、自らのコンセプト変更によって放棄している節があり、今では4ドアよりも2ドアの方がいくらか受け入れやすいデザインになりました。そういう意味では4シリーズに期待していた人は私を含めかなり多かったのですが、内装が3シリーズと全く同じというブランドの見解には「幻滅」以外の反応はできませんでした。BMWの現状はいかにもドイツ的だと皮肉まじりにも肯定しておけばいいのでしょうが、カムリやSAIの内装が周囲の期待を軽く超えていく素晴らしいものだったことを考えると、よっぽどのゲルマン・マインドな人でない限りは現行のBMWにトヨタ以上の価値を置くのは極めて難しいものがあるのも確かです。

  この状況・・・トヨタがBMWほかを内外装で圧倒・・・が、あと10~15年続くならばトヨタのセダンはこれまでとは違ったユーザー層によって脚光を浴びるようになるでしょう。もちろんその長い期間にわたって、セダン好きが期待する通りのFMCやフェイスリフトを無難に進めていく必要がありますし、常に街中で人々から羨望の眼差しを受ける存在である必要があります。それでもトヨタブランドのセダン・・・カムリ、SAI、マークX(G's)、クラウン・・・は、そのスタートラインに立つことに成功したと思います。日産やマツダも同じく「ブランドイメージ」を構築する10年の歩みを始めましたが、アテンザやインフィニティQ50とはまた違う「渋さ」が「カムリ」や「SAI」によって日本車デザインに深みを与えるエッセンスになってくれることを期待して止みません。


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