2014年12月26日金曜日

「マツダ革命」はまだ続くのか? 「マツダとは何か」を考えてみました!

  自動車評論家によるマツダの強烈な支持が続いています。「カッコ良くて」「質感が高くて」「走りがまとも」と見事に三拍子揃った「総合力」で高価格な輸入車にも十分に対抗できるといった評価が主流のようです。今までは「輸入車>日本車」という大前提をもって誌面を構成して来た自動車メディアですが、この「マツダショック」は少なからず波紋を呼んでいるようで、他ブランドとの兼ね合いに苦慮した誌面作りがチラホラと見られます。アテンザを同クラスの輸入車セダンと単純に比較して良いのか?とか、もはや比較相手は完全に輸入車になってしまったアクセラとデミオをどのポジションで扱うか?などあれこれと迷いが見られます。これまでアルファロメオが!プジョーが!BMWが!スゴい!と散々に煽ってきたところで、気がついたらマツダのクルマ作りがスゴかった!ではとても笑えないですから、まあこの対応も仕方のないことかもしれません。

  最も一般的な評論家の「マツダ対応」で見られるのが、帳尻合わせのように「スカイアクティブ」車に対する徹底した「粗探し」をすることです。特に日本COTYを受賞したデミオに対する下世話すぎるほどの「引っ掻きまわし」が少々気になります。別の意見の人もいるかもしれないですが、デミオの売れ線グレードとなった「XD」は、ディーゼルにもかかわらずポロTSIとルーテシアGTの2台を上回る見事な静粛性を確保しているとんでもない傑物です。ちなみにガソリンモデルならばさらに静かです。XDの実質燃費はルーテシアやポロを軽く上回っていて、某雑誌のデータによるとデミオXD(24.6km/L)ポロTSI(18.4km/L) ルーテシアGT(13.3km/L)という数値が出ています。もちろん加速性能もタイム面では断然にデミオXDが優れています。VWとルノー(日産)は決して実力が無いメーカーではなく、むしろ技術力で世界のトップに君臨する「2大ジャイアント」といっていい存在です。そこに圧勝するマツダの実力は「革命」的といっていいほどです。

  それでもそんなデミオXDにもやはり突っ込みどころが散見されます。まず乗ってすぐに気になるのが、座面調節のレバーの剛性が明らかに足りない点です。現在同じようなマツダの手動レバーのクルマに乗っていますが、そんな不満は感じたことはなく、デミオのものはどうやら材質が違うようです。もう一つ決定的に気になる点がブレーキ性能の低さです。マツダ車(OEMを除く)はデミオとベリーサといった小型車以外では「後輪マルチリンク」「後輪ディスクブレーキ」を装備していることもあり、一般的に制動力は高い水準にあります。しかしこのデミオXDは「後輪ドラムブレーキ」に加え、マツダの「XD」全車に言えることですが、ディーゼルの加速特性に合わせたような緩やかな効きのブレーキになっているので、予想以上に伸びる制動距離には不安が付きまといます。ポロ、ルーテシアとの比較でも大きく負けています。

  多くのベテラン評論家はこの2点「シートレバーの剛性」と「ブレーキング」についてチクリと指摘することが多いです。確かにいざオーナーの立場ならばどちらも看過出来ない過誤であり、その指摘は非常に的を得ているわけですが、同じような事象はメルセデス、BMW、レクサスでもかなり多く見られることなので、本体価格100万円台のデミオにばかり目くじらを立てるのはちょっと腑に落ちません。メルセデス、BMW、レクサスについて重大な指摘をすることは確かに評論家として表舞台で活躍するにあたっては難しいことなのかもしれません。売れっ子と言われる人ほど、「やぶ蛇」な指摘はしないようです。

  蛇足ですが、「メルセデスAクラス」はアクセルペダルが柔らか過ぎて動き出した瞬間にNGでした。車内は狭さこそ感じにくいですが、音響はかなり酷い水準でスバルやマツダの方が圧倒的にいいです(ドイツ車のオーディオは基本はDIYしないとクソです・・・)。「BMW3シリーズ(F30)」はドアを開けた瞬間にNGでした。ドアが軽過ぎます!BMWに抱いていた憧れが、このクルマのせいで一瞬で崩れ去りました。まだまだBMWに夢見ている人はとろあえず6シリーズ以外は無視した方がいいかも・・・。「レクサスIS」はトヨタグループがあらゆる面で高い水準を追求したクルマですが、悪く言うと3シリーズの安っぽいドアの質感と、マークX的な(あまり感動的でない)操縦性が詰め込まれた「デジャブ感」がハンドルやペダルから伝わってきてシラケます。もっともこの3台にもデミオXDが持っているような「美点」もいくらでもありますが・・・。

  500〜600万円するプレミアムカーには目をつぶっているのに、200万円程度のデミオにはあれこれと痛い所を突いてきます。勝手な判断と言われるかもしれないですが、評論家がそれだけマツダに対して過敏になってきているのだと思います。マツダのクルマ作りへのスタンスは、それこそ「スカイアクティブ」の遥か前から変わっていないですし、2012年のCX5そして2014年のデミオと短いスパンで日本COTYを獲り、同時期にワールドCOTYでもノミネートの常連になりましたが、実は2004年頃からマツダはすでに欧州COTYの有力メーカーとして頭角を現しており、欧州ではその実力を十分に知られた「スポーツメーカー」でした。1990年代から熱心にアルファロメオやBMWを研究・熟成してきた成果が、現在のマツダ車のベースにはあります。

  マツダファンの私が言うと手前勝手に聞こえるかもしれませんが、マツダ車の素晴らしさにおいてもっとも感銘的なのは、クルマ作りにおいて「マツダの主体性」を強く感じるところです。最近では自動車メーカーがイニシアチブを取れない新車開発なるものが、世界中の巨大化したメーカーグループで起きていると言われています。トヨタだろうがVWだろうがヒュンダイだろうが、供給される部品の製造元は同じというケースも多々あります、部品メーカーが自社製品のシェアを上げる為に、メーカーの自動車開発に先立ちいろいろな提案を行い、メーカー側はそれを採用するかどうかの机上計算を行う「商社的」な仕事になってきている部分もあるようです。業界紙からの情報を鵜呑みにするのも考えものですが、大手メーカーの新型車に乗ってみるとそれを裏付けるような乗り味がすることが多いのも事実です(先入観でしょうか・・・)。

  スバルWRX・S4や日産スカイライン350GTといった各メーカーの「顔」的存在のモデルにおいても、どこか帳尻を合わせたような仕上がりに感じてしまいます。スペック面で欧州車に負けないものを揃えてこそいますが、その中身は万人ウケを目指した「上質さへの固執」とも受け取れるマイルドさが支配しています。そして同じように万人ウケの為のハイスペックだと言えます。この2台が悪いクルマとは決して思いませんが、「ハイスペックは諸刃の剣」なのだという現実を見せつけられるのは確かです。設計の最初から300psそして350psありきの設計をしてしまっては、ミッションに軽やかさを求めることは難しいですし、ハンドリングやサス&ダンパーの設定にも大きな制約が出てくるのではないかと思います。

  マツダ車はスペックに制約されていないから素晴らしい!という判断は安易かもしれませんが、アテンザに乗ってもデミオに乗ってもごくごく自然に「これいいな!」と感じる要素の多くは、適正なバランスに則った設計にあるように思います。これはマツダ車に限った話ではなく、スズキのスイフトスポーツに乗っても全く同じ美点を感じます。過不足なく立ち上がりどの速度域からもしなやかなハンドリングが炸裂し、多少無理な操作をしても電制装置が作動するのではなく(もちろんマツダもスズキもいろいろ使ってますが)、クルマそのもののバランスの良さを下敷きにしたシャシーの実力で補ってくれる走りを随所に感じます。

  一部の評論家によるとそういうクルマの作りは「古臭い」と表現されるようですが、レクサスIS350Fスポを操っている時にふと感じるハンドル・アクセル・ブレーキから発する「雑味」を「新しい」「良い」ものとして評価する気にはどうしてもなれません。これこそが肥大化した部品メーカーによる弊害だと思います。新機能を次々と開発し続けることが彼らの使命ですから、彼らにも言い分はあるのでしょうが、そんな「弊害」の影響が最小限に留まっていると思われる、マツダやスズキの「変わらないクルマ作り」が俄に評論家からも高い評価を受け出した・・・これこそが現在の「マツダ革命」の骨子なのだと思います。(スバルや日産への考察について少々適当なところがありますが、後日再び検証したいと思いますので、ご容赦ください。)


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