2015年3月14日土曜日

アルファード を欧州で売れば メルセデス と BMW は終了するけど・・・

  いよいよ燃料電池車(FCV)の市販に踏み切った「世界のトヨタ」。トヨタ首脳陣が描く「環境とクルマ」の理想を追求するために、これから20年をかけてインフラ整備の働きかけに巨額の費用がかけるというのは、21世紀になってなかなか見られなくなった「壮大なロマン」を感じさせてくれます。しかし大前提として既存の自動車事業枠組みの中でトヨタが今後20年に渡って業界の最先端を走り続ける必要があります。世界規模の金融危機や2011年のような大災害が再び発生するリスクは日本に限らず非常に高いので、かなりの危機管理能力と幸運が備わっているかが大事です。

  そんなトヨタが戦略上持ち得ている最重要「カード」が、HVでもFCVでもなく、3代目がデビューしたアルファード(ヴェルファイア)だと思います。まだトヨタからは何の発表もありませんが、もしかしたらこの3代目を欧州市場へと投下し、世界の高級車の常識を一新するくらいの大規模な転換を狙っている兆候が見られます。日本を上回る勢いの破滅的なクルマ離れが進んでいるドイツなどの欧州主要市場では、自動車業界のイメージを大きく変えるような画期的なモデルが絶えず求められています。そして近年の欧州の自動車業界に明るいニュースをもたらし続けているのが日本メーカー群だったりします。

  自動車に対して淡白なフランスでは低価格でオシャレなクルマが喜ばれる傾向にあるようですが、停滞するシーンに風穴を開けたのが「都市型SUV」と称される小型クロスオーバーのモデルです。クラスレスで洗練された雰囲気は、これまでの重苦しく、古臭いクルマのイメージを吹き飛ばして、フランスの自動車販売を牽引しています。その嚆矢となったのが日産ジュークでした。その後ルノー日産とプジョーシトロエンの2大仏系グループから同様のモデルが次々に発売されました。そして一昨年に豊田章男社長の「肝煎」で販売が開始されたトヨタ86は、専用設計のライトウエイトスポーツということで、発売直後から欧州でも日本以上の大反響があり、一部の金持ちの道楽になっていたスポーツカー趣味を、再び広く大衆的なものへと引き戻す契機となったようです。

  また、これまでの欧州市場は「カンパニーカー制度」にある程度依存するところがあり、メルセデスやBMWの高級セダンが大企業のエクゼクティブに会社から支給されるという構造的な「利権」が存在してきました。この制度が2000年頃から崩壊を始め、メルセデスやBMWにはブランドイメージに固執しない廉価で比較的「粗悪」なモデルがどんどん増えました。そんな中で「利権」という甘い汁に頼らずに、質実剛健なクルマ作りで日本車と対峙してきたVWは、ドイツ国内でも大きな販売減に見舞われることもなく、それと同時に中国市場を牛耳ることに成功しました。「粗悪」と「中国向け」の面白くもなんともない二派の愚作はドイツ車をどんどんツマラナイものにしてしまいました。

  ちょっと話が広がり過ぎてしまいましたが、GT-R、ジューク、86、そして瞬く間にスーパーカー市場の主役となったマクラーレン車を全面的にバックアップする日産系列の開発会社など、欧州のクルマ離れを食い止めるために刺激を与え続ける能力を持ち得ているのが日本の自動車産業です。そしてその存在価値は皮肉なことに、日本よりもむしろ世界の自動車マニアから大いに称賛されています。アルファードも日本国内ではその素晴らしさが十分に伝わっておらず、絶えず激しい賛否両論どころかバッシングされることも多い微妙な存在でした。そんなクルマが新たに自動車の魅力を欧州の人々に伝えるのではないかと思うのです。

  トヨタの膨大なラインナップの中には、後輪サスに「ダブルウィッシュボーン(DWB)」が使われているものが幾つかありますが、これらの多くは欧州市場向けのクルマです。これを装備したオーリス、ウィッシュ、アベンシスといったモデルが欧州でのトヨタの販売の中核を担っています。小型のヤリス(ヴィッツ)やヴァーソS(ラクティス)などにはトーションビームが使われていますが、プリウス、プリウスαを除く中型以上のモデルはDWBです。さて新型アルファードですが、いよいよDWBを使ったシャシーを新造してきました。これはいよいよ欧州に投入への布石?と思いきや現在開催中のジュネーブMSにはまだ登場することはなかったようです・・・。

  いよいよ欧州でも十分に勝負できる足回りと補強されたシャシーを得て、その上に造られる車内のパッケージの良さは、世界の頂点を完全に極めた超絶スペックですから、おそらく投入されれば、欧州の陋習を打ち破り確固たる地位を確立するのは間違いないでしょう。いつでも欧州で仕掛ける準備はしているけど、やはり「武士の情け」という想いがあって踏みとどまっているのかなという気がします。トヨタに健気に技術援助を要請してきたBMWや、1989年に発売されたセルシオを作る際に参考にしたメルセデスを一気に窮地に追い込むような「リーサルウエポン」を投下するのは忍びない・・・。業界の盟主を自認するトヨタがやるべきことではない!という判断かもしれません。

  これまでのアルファードはトヨタの廉価車のシャシーを使ったコストダウン満載の要素が目に付いて、クルマ好きからはかなり酷評されてきましたが、いよいよトヨタが品質向上の方向へ舵を切ったことは率直に嬉しい限りです。業界の盟主の英断が他のメーカーにも確実に好影響を与えてくれるものと期待したいと思います。スカイ=ナンチャラというオブラートに包み込んで部品の簡素化(コストダウン)に励み、広告費をバラまいて業界をアジっている某国内メーカーにもぜひ猛反省して頂きたいと思います。

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