肯定派にとっても否定派にとってもなんとも「微妙なライン」。このクルマに乗っている人を見かけると「なかなかいいクルマ選びだね」なんて言ってあげたくなる。SUVがとても嫌いな人でも、スタイリッシュでちょっと高級感もある「ピープルムーバー」だと割り切るならば、ほとんどののチェック項目で「優秀」な評価を持つこのクルマをあまり意固地になって否定はしないでしょう。トヨタ嫌いとかCVT嫌いとか・・・まあ文句言いたくなる面倒くさい人はたくさんいますけども、多少は大人の判断力があれば、レクサスに匹敵する質感(先代までは北米レクサス車)と他のメーカーを寄せ付けない乗り心地と静粛性は素直に評価できるはず。価格はそれなりに強気ですけども、それでもトヨタの素晴らしさが凝縮されたモデルです。
そんな「良いクルマ」なら買えばいいじゃん!!なんですけども・・・。なんかちょっとずつ気になるところがあります。まずは「とぼけたデザイン」。メルセデス、マツダ、スバルそれから最近のスズキなど、比較的に輪郭のはっきりした表情を持つデザインが多い中で、・・・「?」なんだかバブルの頃のトヨタが戻ってきたようなレトロでぼやけたデザイン。プリウスのアヴァンギャルドなスタイルに嫌悪感がある人には好評かもしれません。確かにバブル期から2000年頃までのトヨタデザインは、なかなか光るものがあったなー。特に「スープラ(80)」「ソアラ(30)」「セリカ(180、230)」などスポーティなモデルが中心でしたけど・・・今のマツダなんかよりも全然良かった(当時のマツダはもっと良かった!?)。
デザインは「OK」だとしましょう。・・・次に気になってくるのは「素性」です。ハリアーはトヨタの戦略では「ラグジュアリーSUV」なのですけども、使っているシャシーはトヨタのCセグ車をベースに広範に使われる汎用シャシーです。初代/2代目のハリアーはカムリに使われている上級FF車シャシーをベースにしていたのですが、現行モデル(3代目)になってから格下げされました。欧州向けオーリスやアベンシスに使われているリアサスの安定感を向上させたモデルを、現行のアルファード/ヴェルファイアなど日本向けの量販モデルに解禁していますが、その先鞭とつけたのがこのハリアーです。
シャシーは「格下」になったのかもしれないですが、4輪ストラットのカムリに対して、リアがDWBに「格上げ」になっているので、ハリアーに関しては決して「コストダウン」とは言い切れないかも。ちなみにトーションビームを装備していた先代までのアルファード/ヴェルファイアは、2段階の「格上げ」を果たしています。トヨタが欧州向けに意欲的に作ったサスに変わって、誰が運転しても十分にわかるくらいに、高速走行時の挙動の安定とハンドリングのスムーズさは向上しています。リアのDWBやマルチリンクは「まっすぐ走らない!!」と批判する問題の本が最近発売されましたが、トーションビームのプリウスと、DWBのプリウスで高速道路を乗り比べれば差は歴然なんですけどね・・・。
デザインもシャシーも「特に問題なし!!」としましょう。それでも気になってくるのは、先代のハリアーがあまりにも「華やか」だったのに対して、やや地味な立ち位置になったことでしょうか? 2代目ハリアーの発売は2003年。まだ日本にレクサスが導入される前のことです。当時のトヨタはFF車に3.5Lの横置きV6を載せるのが好きだったみたいで、アルファード/ヴェルファイア、エスティマといった重量のかさむ大型ミニバンだけでなく、1600kg台のハリアーや、1400kg台のブレイド(オーリスの上級モデル)にも搭載していました。北米向けのハイラックスだって2.7Lの直4だっていうのに・・・。
3.5Lハリアー(2代目)は2000年に登場して北米でヒットしていたBMW・X5を意識した大排気量化(北米レクサス車ですし)で、3.5LブレイドはR32ゴルフをライバルと考えていたのでしょう。軽く半世紀以上にわたるトヨタ自動車の歴史の中でも、もっともクレイジーなモデルが発売されていたのが2006〜2008年頃ですね。リーマンショックでクラッシュする前夜くらい。その頃のハリアーの「ぶっ飛んだ」設計に比べれば、現行ハリアーはちょっとオシャレなお年寄りに乗って欲しいクルマなのかな?なんて思えちゃうんですよね。デザインも先代の方がアグレッシブだったかなー。
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